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それでも無視してチャーシューを取ろうとしたとき、何かがチャーシューをつかんだ。
――えっ?
女だった。
女が箸で私のチャーシューをはさんでいたのだ。
女はそのままチャーシューを自分の口に入れ、ぺろりとたいらげた。
そして私の顔を見て鼻で笑うと、定員にむかって天津版を注文した。
――なんだ、こいつ?
最初、あっけにとられたが、すぐに気を取り直した。
今目の前であったことは、見知らぬ女が何も言わずに私のチャーシューを取って食べたのだ。
私はあらん限りの大きな声で文句を言ってやろうかと思ったが、結局やめた。
そのまま楽しみにしていたチャーシューがなくなったラーメンを食べた。
私は誰もが知る大手企業で出世をし、もうすぐ取締役になれるかもしれないというところまで上り詰めていた。
仕事一筋で働きづめで、ここまでの地位を手にいれたのだ。
それなのにここでこのたちの悪い女と揉め事を起こして、最悪警察ざたにでもなったとしたら、それはものすごく都合の悪いことになる。
おまけに去年、私の息子が同じ会社に入社しているのだ。
何かあれば私だけではなく、息子にまでなんだかの影響がおよぶことだろう。




