プロローグ
はい六作品目!
なあ、お前ら。
ちゃんとした学校生活を送ることが出来ているか?
思い通り自由に高校生活を送っていられているか。
なら、それを満喫するといいさ。
オレみたいにイレギュラーな高校生活を送れていないだけいいと思った方がいい。
オレもお前らみたいな高校生活がしたい。
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ。
朝から耳障りで小うるさい目覚まし時計をオレはたたき割るようにガンッ!と止めた。時刻は午前五時。
ベットから静かに体を起き上がらせのびをする。
自分の部屋のカーテンを開けると嫌なほどに太陽が眩しい。
オレは朝ご飯を食べるべく、建物の下へと向かった。
少し暇なのでここで自己紹介しておこう。オレは暦月麗人。今日から倉嶋高校の一年生だ。
しかし、皆が思っているように普通に生活をできるかどうかはまた別の話だろう。
その理由はこの大きな施設にある。
この施設はオレの家であり『LEON』の居場所でもある。
『LEON』それは「ボディーガード」を育成、及び提供しており現在日本でも有名な機関だ。
オレはここで物心ついたときからボディーガードになるための訓練をさせられていた。
それだけでもかなり特殊なのだが、もう一つ特殊なこと、それはこのLEONの社長である暦月門太郎の息子なのだ。じゃないとオレもボディーガードの訓練なんてさせられないわ。だからいつもオレは共に住んでいるボディーガードの皆に待遇されている。
下に降りるといつも通りの光景が。
「「「「「「「「おはようございます!坊っちゃん!」」」」」」」」
「おう」
下にいたボディーガードの皆はいつもこのようにオレに挨拶をしてくる。
小学生にかけては少し鬱陶しかったが今となっては当たり前でもあり面白い朝でもある。
下の大きな食堂には既に多くの社員が揃っている。男性もいるが女性も実は多い。それもかなりの美人や若い方達が。
男性もイケメンが多い。
ちなみにだがオレは普通だ。
食事の並べられたテーブルの一番端っこがオレの定位置だ。それはすなわちお父さんとの席に近いことも意味している。
「おはよう麗人」
「おはよう親父」
テーブルの先頭であり真ん中に座っている親父にいつも通り挨拶をした。
親父は昔ボディーガードの仕事をしておりこの機関を作ったのもそれが理由の一つだ。
しかし、最もの理由は別にある。親父は四十代、すなわちオレが中学一年までボディーガードをしていた。その担当していた人こそ、オレの母親、暦月君花だ。母さんは鈴嶋遙という名前で芸能界で大活躍かつ超有名な女優だった。
お父さん曰く、ボディーガードをしている内によく話すようになりいつの間にかお互い思い合うようになったらしい。
結婚式は上げなかったモノの結婚はテレビでも大きく報道され、あっという間に世に知れ渡った。
しかし、オレが生まれてすぐの頃事件が起こる。
仕事終わりに、親父と共に帰り後ろから刺されてしまったらしい。
幸いにも犯人は親父が捕まえたものの母さんは39歳という年でこの世を去った。犯人は自分の遙が奪われたのならもうそれは遙じゃないと殺したらしい。
顔は全く覚えていないものの母さんは母さん。今でも犯人には殺意が湧く。
この事件が原因で親父はボディーガードを引退することになった。
しかし、これ以上自分のようなボディーガードを出したくない。そんな思いで作ったのがこの機関、『LEON』なのだ。
「おはよう麗人」
「ん、おはよう仁さん」
オレの隣に座ったのはオレの一番付き合いの長い人で、ワイルドイケメンの仁清隆だ。
皆、仁さんという愛称で呼んでいる。
この『LEON』でもかなり強いお方で社員の中でも頼りにされる存在だ。また、オレのことは麗人とちゃんと呼んでくれるのでかなり好きなのである。
どうやら仁さんが最後だったらしく席に座ると、親父が口を開いた。
「それでは今日も朝から頑張ろう。手を合わせ」
オレ達は両手を合わせて合掌する。
「頂きます」
『頂きます!』
オレはこの朝ご飯の合掌も担当している。社長の息子って大変だわ。
朝ご飯を食べてからは早速訓練が始まる。
オレは学校もあるので六時から七時までの一時間だ。他の皆は九時までしっかりと訓練する。
しかし、オレのメニューは短くともかなりハードだ。それは親父がオレをより強いボディーガードにしたいからだ。
親父は昔からオレを直々にしばき倒し、またオレはじいちゃんとばあちゃんにまでしごかれることになった。
じいちゃんは合気道の、ばあちゃんは空手の、父さんは少林寺拳法の師範であった。
その全てを物心ついたときから今までたたき込まれている。
親父がここまで厳しくするなどオレを強くしたい以外理由がない。
男性陣がいつもめちゃくちゃ重いバーベルを使っているがオレはそれと同じものを中学に入ってから毎日持ち上げている。
最初は全然持ち上げる事すら出来なかったが今となっては余裕だ。
今も300キロ程を百回上げ下げしている。
すると、隣の仁さんが言った。
「お前は相変わらず怖いな。見た目はかなり細身なのに」
「オレが一番怖いよ」
百回終わっても様々なメニューを終わらせてオレは地面に倒れていた。今日も良くやったオレ………
すると、目の前にタオルがパサッと置かれた。
タオルを退けるとそこには桐ヶ瀬美咲さんがいた。
「いつもお疲れ、麗人」
「サンキュー美咲さん」
「い、いいわよ。気にしなくても」
美咲さんは若くもボディーガードを目指して日頃から鍛えている。
顔もかなり美人だ。
また、仁さんと同じようにオレのことをちゃんと呼んでくれる。
オレが汗を貰ったタオルで拭いていると聞いてきた。
「麗人、今日から高校生だっけ?てことはもしかして前々から私とか仁さんに話してたあれなの?」
「ああ、今から行くから親父からオレに話しがあると思う。じゃあ行くわ」
「うん、またね」
そう言ってオレは部屋を出た。
風呂に入った後、制服に着替えてオレは親父の部屋に向かった。
さて、長い前置きが終わった分けだが、ここからが本題なのだ。
ノックをしてオレは親父の部屋に入る。
「麗人か。制服似合ってるぞ」
「ありがとう、親父」
親父の言葉に返しをすると、親父は本題を切り出した。
「さて、前から麗人には言ってあったとおりお前は今日からボディーガードを始めて貰う」
まあ、今更言われてもどうとも思わないな。
そう、オレは昔から親父に言われていたことがある。それは高校からボディーガードを始めるということ。オレを子供の頃から鍛えていたのはそれが理由でもある。
「お前は今までよく頑張ってくれた。今やお前は最強だ」
「いや、そうでもないと思うけどなぁ」
「いや、お前は強いぞ」
そこまで言われるとな照れてしまう。
「これからはボディーガードとして頑張ってくれ。お前の担当する相手は同じお前の同級生らしいぞ」
「……ああ」
そう言ってオレは部屋を出た。確かに今更言われたって何か変わることはない。しかし、それでもオレは悲しかった。
高校に入ってからは好きに生活出来る分けでもない。その人に付きっ切りで着いているわけだから当たり前だ。
だからオレは中学校まで青春を出来るように生活をしていた。しかし、最高の瞬間のようなモノはなかった。
だからこそ高校に入ってからは青春をする機会がない。それが悲しかったのだ。
しかし、今更何を言ってもしょうがない。
オレはこれから始まる高校生活に期待などしていなかった。
この時まだオレはこれから始まる自分の高校生活の事など知る由もなかった。
次回もお楽しみに!