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メイドシリーズ。

良い風呂の日。

作者: 神無桂花

 僕と陽菜の共通点は風呂が短い事だ。

 それに気づいたのは乃安がきっかけ。


「先輩方、お風呂短いですよね」


 何て言うものだから、聞いてみた。


「京介って風呂何分くらい?」

「一人暮らしだからな、シャワーで終わり。だから十分くらいじゃないか? まぁ、これから多分銭湯にでも通うからもう少し延びるだろ」

「ふぅん。夏樹は?」

「一時間くらいかな」


 一時間も風呂で何をするというのだ……。

 体洗うのに十分、湯船三分。そんなものじゃないのか……。わからない。乃安は大体三十分入っているが、聞いても怒られないものなのか判断がつかないから疑問のまま頭を渦巻いている。

 僕に理解できない文化がある。風呂とは奥深い。

 そもそも。良い湯だなもわからないのだ。お湯はお湯じゃないか。温泉と家庭用風呂の違いならわかる。この間も陽菜と乃安を連れて銭湯に行って、肩こり……いや待て、あの二人も僕も肩こりしないじゃないか。ごめん、嘘、やっぱりわからない。

 効能とか、どういう原理で働いているんだ、あれ。飲むわけじゃないのに。

 思考の袋小路に入り込んだ僕を陽菜はじっと見つめている。


「答えをお教えしましょうか? 相馬君」

「うん」

「これです」


 僕の机に容器が置かれる。白い容器だ。開けて見ると粉が入っている。流石に舐める勇気は無いけど。


「なにこれ?」

「あっ、それ……」


 夏樹が慌てて自分の鞄を探る。


「陽菜ちゃん!!」

「はい。それはバスソルトです」


 バスソルト……? お風呂に塩を入れて浸かる奴か。


「これを入れて芯まで温まるのが良いそうですよ」

「へぇ」

「そして、温泉の効能も温まる事、浸かる事に意味があると言えます。血行促進による疲労回復、浮力によって筋肉の緊張がほぐれる、そして日常から離れる事によるリラックス効果。皮膚から吸収される薬理効果。その他様々な要素が組み合わさり温泉の効能と言えます。シナジーですよ」


 なるほど。ふむ。


「じゃあ、陽菜の風呂が短いのは?」

「秘密です。女性には秘密の一つや二つ、つきものですよ」





 その日の夜中、私はたまたま知る事になった。陽菜先輩の陰の努力を。

 何の努力も無しに美が保たれるのはありえない。メイド長がそう言っていた。それは陽菜先輩も決して例外ではない。

 肌は排泄機関であるという考え方の基なら二度風呂と言うのは結構有効らしい。


「陽菜先輩の本格的なお風呂は私や先輩が寝しずまってからという事でしたか」

「乃安さん、起きていらしたのですか」

「はい」

「乃安さんも入りますか?」

「私は結構です。昔から努力は見せない人でしたね、先輩は」

「意識したことはありませんよ」

 今湯船にいるであろう先輩の視線を扉越しに感じた。

「常に己のコンディションをベストに保っておく。仕事において一番重要な事です。周りがたとえ頑張っていようと、コーヒーブレイクを入れて調子を整えられる人間こそ、恐らく成績が一番良い人では無いでしょうか?」

「それは私も先輩も知る由は無いのではないでしょうか?}

「そうですね。私も知りません。統計データもあるかわかりませんし」

「相馬先輩の健康状態をチェックして、お風呂入って寝る。それが陽菜先輩のサイクルなのですね」

「そんなところです」

「じゃあ、私は寝ますね」

「はい。おやすみなさい」


 これは、胸にしまっておこう。そう思った。


 






温泉は苦手だけど、効くんだよなと最近思いました。

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