穏健派のボス
カラオケ施設は名ばかりの秘密基地を隠すための隠れ蓑。
表立ってはきちんと営業をしているが実際はこうした穏健派の秘密基地を隠すための施設だった。
この秘密基地もできたのは数年前から神前町を取り仕切っている人たちの中で内部的抗争が密かにあったが理由だという。
神前町は元々は外の破滅した世界から隔離された空間の町。
いずれ、新しき未来に対抗しうるための施設。
その中で俺や他の人たちは未来の戦士として育った有望な存在だ。
それを管理して保護しているべき大人たち。
そうした環境でこの神前町は今後数十年平和な未来を気付くべきだったんだが、神前町の取り仕切っている大人たちの中で 未だに『倉本恭介』の思想を引き継いだ人たちがいたということなのだろう。
だから、内部抗争が起こった。
「ここは穏健派の秘密基地っていうことは例の革新派の動向を探っているのか?」
大きな画面を前にして雪日に尋ねた。
彼女は頷きながら続けた。
「私たちはずっとここで町の治安維持を見守ってきていたの。だけど、内部に倉本の意思を継いだ存在の活動も見受けられていた。だから、秘密裏に穏健派として秘密の場所を作り、チームを集めあなたのことを守っていた。とはいえ、なかなかにその保護も難しい状況ではあったし誰が敵で味方なのかも未だにわからなかったんだけどね」
「でも、こうしてこんなに集まってるじゃないか」
「彼らは私が選別した最も信頼をして、あなたの両親が遺言で残した唯一の仲間であると思う人たちだからよ」
「え」
ここに居るメンバーはみんながそれぞれ過去の過ちを繰り返さないためにもというしっかりとした思想を持った人たちであるという証明なのは両親の遺言書の人たちだったから。
雪日がたった一人で集めたわけではないのだ。
「それとあなたには会わせたい人がいるのよ」
雪日は台座の操作パネルでどこかへの通信をつなげた。
「ボス、彼をお連れしましたので来てください」
しばらくして、部屋の扉にノックする音が聞こえた。
雪日がゆっくりとその扉を開けると扉の先に立っていた男は先ほど受付係にいた男性だった。
「え、さっきの受付係の人?! この人が……」
さらなる衝撃は続いた。
おもむろに彼は自らの首後ろに手を回すとまるでマスクを剥ぎ取るかのように皮膚がはがれていく。
そう、その素顔はマスクだった。
はぎ落されたマスクから覗いた顔におもわず俺は殴り掛かった。
だが、その後ろから明石に止められた。
「おい! どうして止めんだよ! コイツは俺の両親を殺した――」
その素顔はなんと倉本恭介だったのだ――