雪日の目覚め
柏葉藍那によって救われた雪日を明石の家の寝室でイリューナの隣に寝かせた。
二人には軽い治療を施してあるから安静にしていればいずれは目を覚ますことだろう。
俺を他所に柏葉と明石は抱き合ってキスを交わしている。
マジでお付き合いしているとは未だに驚きだった。
「まさか、彼女がいたとは驚いた」
「いえば、絶対恨みがましく弄られるとおもったしょ。だから言わなかったしょ」
「あはは、間違いなく弄ったな」
「ほら。それに藍那が秘密にしておきたい言うたからそうしたまでっしょ」
二人はもう2年間も付き合いをしているという。
2年もの間俺は気づかなかったというのだから洞察力のなさにほとほとがっかりしてしまう。
対して、雪日は2年前に気付いていたらしい。
「まさか、2年前に雪日からも依頼を請け負ってたとは思わなかった」
「まぁ、俺も正直あの時はビビったっしょ。秘密裏にお前さんを護衛と監視をしていた俺に笹美さんは言ったっしょ。藍那との件をバラされたくなかったら彼を常に裏切らない何かあったときも常に彼を助ける存在にいなさいって」
寝室のベットで寝ている彼女の顔を見て俺は一瞬でもあの雪日の家で彼女を敵と思ってしまった自分が憎たらしく思った。
彼女が起きた時に一発殴られてもいいとさえ思える。
起きた時はなんでも一つ言うことを聴くことに使用。
「それより、二年前ねぇ。どんなつながりで付き合いに発展するんだ? 柏葉さんも明石のどこを好きに?」
「彼とは任務中がきっかけで。こうみえていざって時は頼りになるから」
「へぇー、たよりねぇ」
あまり想像できないことだったが二人の愛を確かに感じられる。
彼女のその照れて頬を赤くしたときの言い方はまるで恋をした乙女。
「おいおい、お前さんなんか含みがある言い方っしょ」
「だって、お前は俺らとクラスメイトの彼女がいる前で変態談義していたくらいだろう。そんな奴が頼りになるやつとは思えなくって」
「それを言うならお前さんだって笹美さんがいた前で堂々とした態度してたっしょ」
「いや、俺は付き合ってねぇし」
「似たようなもんっしょ!」
そんな口論を続けていたら、「うるさいなぁ」と声が聞こえてきた。
「雪日!」
「ここ……ああ、明石と藍那の基地ね……」
彼女は自分の状況を即座に認識したようにゆっくりと身体を起こして俺のことを見て微笑みを向けた。
「よかった。しっかりと無事で」
「お前のおかげだよ」
「事情は把握できた様子で安心したわ」
数秒間彼女と見つめ合い、咳払いの音が現実に引き戻された。
「お二人さん、お取込み中申し訳ないけどこれからどうするっしょ?」
「何も取り込んじゃいねぇぞ!」
「へいへい、そういう強気な態度はいいっしょ」
軽く余裕ぶってあしらわれた。
普段の明石からは想像できない毅然とした振る舞いにまるで歴戦の差を感じさせられた。
ぐうの音も出ない。
「明石、藍那二人ともありがとう。私の指示通りで動いて助かったわ。さて、ここからはもう逃げも隠れもできないわ。私たちも行動をしないといけないわ。だから、雄馬あなたも今からあなたにも協力をしてもらうから覚悟しなさいよ」
普段の彼女とは似ても似つかぬ雰囲気で彼女は俺に向けて指示を仰ぎ始めた。