すべての真実
どこかの広大な土地なのだろうか。
広い草原と雑木林囲まれた中に大きな白い巨大な研究施設のような建築物が写り込む。
撮影者の声が聞こえ始めた。
「よし、写ってるか」
「ええ、完璧」
男性と女性の声。
どこか聞き覚えのある声に思わず立ち上がる。
その声は間違えようもない両親の声。
「これは遠い未来で神前町という存在がどうしてあるのかを伝えるための映像。すべての真実を伝える映像だ。そこで見ているこの研究所の子供たちがいるだろうことを願い撮影をする」
撮影風景が変わると草原地帯の中に数人の子供が映り込む。
みんなが各々に武器をもっているように見えるが実際は違う。
彼らが持っているのは武器などではなくイリューナが使っているように魔法で構造化させた武器だ。
光る剣や弓、槍といった様々な多種多様な道具を使いチャンバラごっこでもしてるかのように戦っていた。
「今ここでは先の未来で異世界人の侵略に対抗するための戦士を育成している。魔法を使用し肉体を鍛える。特に優秀なのは私と笹美の子供であったのはやはり地球人と異世界人の混血種だからだろうか。異世界人の血を輸血した子供とは大きく違い魔法の習得する速度は尋常じゃない」
小さい頃の俺と雪日がその手に魔法の武器を構えて試合をしている。
まるで普通の子供ではないような反射神経と脚力で跳躍と回避を行う。
本当にこれは自分なのだろうか。
目を疑いたくなる映像だった。
「本当はこのようなことはさせたくはなかった。だが、これも未来のためによる現状だと思ってほしい」
そのような前振りを置き、研究所内に入っていくとあらゆる部屋の中で研究員たちが色々なものを製造したり、調べていたりする光景が映った。中には異世界の存在と思われるドラゴンの解剖実験も行われてもいたのだ。
「そもそもの発端は数年前にさかのぼる。突如として日本の各県の主要都市の空に出現した奇妙な扉から現れた異世界人の侵略攻撃。日本は侵略により大打撃を受けて跡形もなく土地が消滅し、人口も半数以上が激減した。さらに異世界人の侵略を食い止めるべく米国やロシアからの核攻撃によって放射能の影響で地上では暮らせる環境がなくなってしまった。生き残った日本人は地下のシェルターへと避難し、地下に広大な土地を作る計画を数年かけていった。だが、戦争はまだまだ続いた」
その後の大規模な攻撃が5年以上も続いたことを撮影者の父が語る。
戦争と土地の確保という厳しい対応を人類は強いられてきた。
さらには食料問題などなど。
「他国にも異世界人の侵略が及び始めたころのこと、温厚な異世界人があらわれて彼らと同盟を結んだことで協力し侵略を続ける異世界人を追い払い勝利することができたのだ」
戦争は終結したが地球という場所に土地はわずかにしか残っていなかった。化学汚染が蔓延する土地。食料もわずかしかない。残された人類に未来はなくなってしまっていたが――
「異世界人の協力で、一部の土地を確保し、唯一存在する国家という唯一の街、『神前町』を作り上げて拡大していく環境を整えていった。異世界人の中には帰還するものと残るものが分かれた。残る者たちと神前町を拡大していき、帰るものが侵略派の残党戦力を激減する役割を担うことが約束された」
それでも、地球人類には不安しかなかった。
「わかる通り、侵略派の攻撃を受けての不安があった。異世界人との共存文明は簡単にはいくこともなかったが、それでもやっていこうと努力し神前町に新たな文明を気付いていった。未来の対抗策も講じなければと考えたのだ。その最初に上がったのが研究だった。異世界人を知っていくこと。自分たちの文明を異世界の能力を駆使して復興し拡大していくこと」
作られた研究施設がココの映像に映る場所だという。
着々とうまくいっているらしいがけれども相反する声もあった。
「特に不満な声もある。私と妻の子供、笹美の子供は異世界人との混血種であり、我々は研究所の管理者だ。権利特権を使った人工的技術の導入を自分たちの子供にしたのではないかという勝手な偏見をしているものがいる。誤解を解かねばならない」
映像は切り替わると日付が違うのか何やら騒がしい喧騒の声だけが聞こえる。
「――ないか」
「やめるんだ!」
目の前では数人の子供たちが並ばされていた。
その中には明石雄二や朝山太一、寿修三、相川聡に倉本明菜の姿もある。
ほかにもちらほらと見覚えのあるクラスメイトや知人たちの姿。
彼らは戦闘試合をしているのか。
俺と倉本明菜の試合映像が映った。
画面が遠くからで見えづらいがまるで少年バトル漫画でも見てるかのような殺伐とした光景。
途端に騒々しさが増して映像が途切れた。
日付が切り替わった。
「倉本恭介がとんでもないことを起こそうとしている。だから、我々は彼の所業を止めに行く」
そのあと何が起こったのか。
急な爆発音が聞こえて映像が消えて見えなくなった。
日付は変わる。
「研究は中止になった。あの日に倉本恭介が自らの子供を使って強引な異世界の扉を開けたことでよくないものがこの街に来てしまった。それを止めるためにあらゆる軍事勢力の介入もあった。おかげで神前町の研究都市は壊滅した。同時に我々は息子に苦行を行わなくてはならない。息子のあまりにも強大すぎる力は危険だ。異世界の扉を封じ、あの存在を消し去った。危険がゆえに神前町の他の研究者は良しとしない。決断として息子の記憶を封じて普通の生活をさせることになった。我々研究者は神前町の監視者となる。神前町の治安を守る組織に属し、この町の未来を見守る。息子の傍にも監視者を配置することになった。それは彼の友人として控える同世代の子供たち。ともに訓練された魔法使いの子ならば優秀だろう。同時にこの記録は一切なかったことにして未来でもしもまた危険が生じた時のみ開封とする。以上だ。最後に、私と妻のアイシャナ・ミシェリィナはもう命が長くない。だから、この映像を息子のことを託せる監視者にあずかっていてほしい――」
終了した映像をみた俺はただ黙りながらどんな言葉を言えばいいのかわからなかった。
同時に映像を見たからかひどい頭痛と吐き気が押し寄せていた。
涙を流しながら蘇った記憶に嗚咽をまき散らす。
「くそぉ! くっそぉおおおおお!」
無慈悲に吠え続けて憂さ晴らしをするしかできなかった――




