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隠された秘密

「さあ、入ってちょうだい。少し埃っぽいのは勘弁してよ」

 隠れ蓑に選んだのは懐かしの幼馴染の部屋だった。

 数年前にはよく遊びに来ていたはずの幼馴染の部屋はどこも変わっていなかった。

「数年前から私が一人で暮らしている家だからゆっくりしてちょうだい。なんか食べ物とかあったかしら……」

 雪日はそのままリビングへと飲み物とか食べ物を探しに行く。

 当の自分とイリューナは彼女の寝室で待たされてソワソワする。

 何度も過去に訪問していたことのある部屋だというのに不思議な感じである。

 数年前と変わらず女の子らしい家財道具があってインテリアな雰囲気の部屋だ。

 昔からファンシーさとは程遠く大人っぽいセンスを持っていた彼女らしい部屋だったのは記憶にまだ残っている。

 彼女の部屋の机の上には昔に俺と二人であの公園で遊んでいた時の写真が飾られていた。

「それ、あなたと雪日ですか?」

「あ、ああ。昔にあの公園で遊んでいた時のだよ」

「そうですか……。二人は昔から知り合いだったんですね」

「そりゃぁ、幼馴染だったからな。何かとお互いに長い人生を共に歩んできてるよ」

「それは昔から婚約をしていたということですか!?」

「なんでそうなる!?」

 今の言い方に誤解があったのは認めるがここ数日での雪日と自分の態度を見ればそういう間柄でないことくらいわかりそうなものだと思うけれど。

「ったく、そういうのではねぇよ……。つか、イリューナさんこそ昔に付き合っていた奴とかいたんじゃねぇの。そんなにかわいい顔してんだし」

「はい? なんですか? それ口説いてますか? やめてください」

「えー、素直に褒めただけでその拒否!?」

 イリューナとの話はなんだか噛み合わない。

 何かとそれでも楽しくあった。

 あったんだけれど、頭の中にはここに来るまでの間に起こった出来事が走馬灯のように繰り返された。

「はぁー、どうしてこうなっちまったんだろうな。ごめんな、イリューナさん。俺がそもそも召喚したりしなければ……」

 おもわず自分の哀れさで謝罪という言葉が口から出ていた。

 彼女はその俺の言葉を聞いて首を横に振る。

「雄馬、悲しいことを言わないでください」

「え」

「私はこの世界に召喚されたことを悲しんだことはないです。逆にこちらがあなたに迷惑を多大にかけていることが原因でしょう。もともと私がおとなしくしていればこのような大事にはならなかったはずなんです。これは私のミスです」

「でもっ!」

「私はこの世界でまだ来て数日ですがいろいろなことを見て学べました。それはとても楽しく私の好奇心を刺激するものばかりでした」

「イリューナ……」

 なんだかこの狭い部屋で二人きりでありお互いにわかりあえたことが何だかうれしくって妙に感情が高揚してくる。

 それはイリューナも同じだった。

 二人が自然と顔が近づいていくときに妙なものが手に当たる。

 自分の思考に冷静さが戻る。

「なんだこれ?」

 ちょうどベットの下に隠されたように放置されていた箱があった。

 不思議に思って中を開けて確かめてしまう。

「え……なぜそのようなものが……」

「イリューナさん?」

「冷血の宝珠……」

「れいけつのほうじゅ? 何それ?」

 箱には一枚の写真も入っていた。

 それはどこかの病院かはわからないけれど見覚えのない場所で雪日と一緒に写真に写っている俺の姿。

「え」

 何よりも驚いたのが雪日の姿がまるでコスプレとは思えないような奇怪な姿をしていたことだった。

 そう、今目の前にいるイリューナがエルフの姿をしているように雪日の姿が――

「ヴァンドーラ……。まさか、彼女は――」

 イリューナが何かに気付いたときにゆっくりと部屋の扉が開く。

 その時に見えた雪日の姿は俺の知らない彼女で、刀を手にして一太刀が振るわれた。

 咄嗟に俺はイリューナを突き飛ばすのであった。

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