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平和の崩壊 前編

 あれからしばらくして、買い物を終えたので俺たちは自宅へと足を運んで帰路についていた。


「じゃあ、店で倒れていた俺をそのカラオケ店の店員が見つけて」

「そうよ、まったく呼び出されたから何事かと思ったんだからね」

「そ、その時何もなかったのか?」

「何もないわけないでしょ。色々と店員が困った顔で怒られたわよ」


 その言葉にほっと安堵しながら肩をなでおろす。

 あの場での薬物を使用していた寿のことが気がかりであったが、何よりも気にすべきはあの部屋に残った薬物の証拠だ。

 それが自らに臭いとか痕跡が付着していなかったということなのだろうか。

 それにしてもなんか偶然すぎる気もする。


「どうしたの? 難しい顔して」

「いや、大丈夫なんでもない」

「そう」

「というか、俺が倒れていた間にずいぶんといろいろと買い物したみたいだな」


 俺の手には多くの荷物があった。

 さらに、イリューナも持っている上に彼女は顔をずいぶんと嬉しそうにほくほくさせている。

 雪日もまた重そうな荷物を両手に抱えてもっている。


「どこかタクシーでも拾って帰るでもよかったんじゃないか?」

「そういう無駄遣いはできません」

「えー、これは無駄遣いじゃないのかよ」

「これは必要経費です。イリューナさんの洋服や彼女が必要といったものを買ったまでです」

「イリューナさんに甘すぎるだろ」


 俺はがっくりと今度は呆れの肩落としをしてしまう。

 同時にため息までこぼれた。

 当のイリューナさんは実に楽しそうに先頭を切って歩いていく。


「イリューナさん、そんなに前に出て道わかるの? そんなステップ踏んでは危ないから少しペースを落として」

「道ならしっかりと覚えています。ですので、安心を――ぶべっ」


 俺は目の前で派手に顔面から転倒したイリューナさんを見て呆れるを通り越してもう目をつぶるしかなかった。


「なぁにしてんのよ」


 そんな二人の会話を聞いていると母親と娘の会話を感じてしまう。


「これじゃあ、親子だな」


 なんとなくそんな言葉を零してしまうとまるで衝撃でもうけたような反応を雪日がした。


「ちょっと、雄馬ったら、なによそんなこと言って!」

「いたっ、痛いです。もう、先頭切っていかないので許してください雪日ぃいい!」


 ぼかすかイリューナさんの右肩を荷物持った状態の手で殴りつける雪日。


「イリューナさん痛がってるぞー、やめてあげろー」

「あ、イリューナさんごめんなさい!」

「うぅ……私もう先頭歩かないです」

「ご、ごめんなさい! 本当に!」


 そんな暖かでちょっと面白おかしい会話をしながらようやく自宅についた。 

 雪日の顔が急に険しさを増し始める。


「雪日どうかしたのか?」


 イリューナさんまでもがそっと荷物を置いて何かを警戒するような仕草を始めた。


「おいおい、なんだよ。二人して怖い顔して」


 俺も気づいた。

 二人がやけに警戒している要因。

 なぜか、ゆっくりと玄関の扉が開き始めたのだ。


「え」


 何者かが家に入っている。

 鍵を閉めていたはずの家の中にわからぬ誰かが。

 もちろん、カギを持っているのは俺と雪日のみである。

 それ以外の誰かが家にいるということは不法侵入者の何者でもないということ。


「ようやく、帰ったっしょ」

「え」


 家の中から現れた不法侵入者の顔を見て俺は唖然とした。


「明石?」


 明石は険しい顔をしながら何かの黒い物体を俺に向けた。

 彼がそんなものをどうして持っているのか。

 なんで映画でもよく目にするようなそんな危険な代物が俺に向けられてるのかが謎だった。

 そんな彼は上に視線を送る。 

 俺もつられて目線を送るとまるで軍隊の暗殺部隊のような恰好をした一人の女性が向かい側の家の屋根にいた。彼女の手にもまた映画でしか見たこともないような物が握られている。

 その、二人が手にしている物は銃。


「なんだよそれ……玩具だろ?」

「はぁー、そろそろ平和ボケは終わりだってわかんねぇか雄馬」

「平和ボケ?」

「彼女がこの世界に来訪した時点で再び世界に変革が来ちまったっしょ。変革で災いがもう起こってる」

「何の話だよ……わけわかんねぇぞ。冗談は止せよ。つか、不法侵入だぞ明石」

「今の俺はコードAだ」

「は?」


 彼はその引き金を引き一発の銃声が鳴った。

 その瞬間に俺は雪日に押し倒されてるのに気付き、イリューナさんが魔法を発動したのに気付いた。

 膨大な風が明石に襲いかかって彼は吹き飛ばされるようなイメージを想像できたが全くの逆が起こる。

 彼は吹き飛ばされることはなく堂々と立っていた。


「コードA説明をしなさい。どうして彼を始末するの! まだ保護対象中だったはずでしょ! 第一、彼女や彼は何もしていないわ!」

「コードS、お前さんは常に対象者と行動を共にはしていないのを確認済みである。さらに現状周囲に変革が見られ、規則にのっとり彼を始末するように上からの命令も出た」

「変革が……そんな……だって、何も……」

「お前さんとあろう人が気づかないとは。コードS平和ボケが過ぎたな」

「くっ! イリューナさん魔法を使って私と雄馬をどこか遠くに運んで!」


 急に慌てるように命じた雪日の言葉にイリューナは困惑する。


「で、でも、魔法は使用禁止だと」

「今は非常事態よ! 許すわ!」


 イリューナは慌てるように右手を地面についた。


「まさか、異空間魔法を使える!? ありえないっしょ!」


 俺は混乱の中親友に銃口を向けられながらわけのわからない真っ黒な海の中に自分は沈んでいった。



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