相川聡の変化
放課後。
学校の授業も終わると、生徒たちはそれぞれ違う行動を起こす。
部活へ行くものもいれば、バイトへ行く者、居残りの勉強をしているなんてもの好きもいたりする。
その中でも俺は一般的な方向性の帰宅組。
帰宅準備を始めて、イリューナに声をかけようとしたが彼女の周囲の女子を確認する。
その輪には雪日の存在が見えたから何食わぬ顔で教室を出ていった。
校門の傍にまで歩いてい来ると携帯に着信が入る。
よく見れば『L〇NE』の通知。
『先に帰らないで待っていて』
雪日からのたった一文を確認し、大きなため息を零すと校門で足を止めて柱に背を寄せて待つことにした。
周囲からはちらっと視線を向けられる。
「はぁー、早くこねぇかな」
居心地の悪さに思わず愚痴がこぼれた。
「これなら、部活動をしておくんだったか」
しかし、ここ最近は部活動を活動させる気力もなく部長権限でイリューナが来て以降はしばし休みにしている。
顧問にも何も言われないように対策は万全なはずだ。
「お、奇遇だね」
「相川……」
校門で待ってると目立つような不健康男子の相川が歩みよる。
友達だから、声をかけられても別に悪い気はしない。
逆に暇つぶしにはなると思った。
「何をしているんだね?」
「雪日を待ってるんだよ」
「へぇー、羨ましい限りだね」
「は? どこがだよ」
「君は相変わらずだね。彼女は見た目も中身もいいんだね」
「はあ?」
相川の柄にもない発言に不思議に思う。
「お前いつからアイツの信者みたいになったんだよ?」
「信者? 俺っちは彼女をそれなりに元から評価してるんだね」
「おまえ、ずいぶん前は横暴女とか言ってなかったか?」
「それは君たちに合わせたまでだね」
「なんだよソレ……」
「この際はっきり言っておくんだね。俺っちは前から君が彼女と幼馴染で親しくあるのが気に入らなかったんだね」
「なんだそれ……。お前どうしたんだよ?」
急にらしくもない責め立てる言葉に不気味に思う。
「あ、そうそう。俺っちの権限で生徒会長に君の部活を廃部にしてもらうように申告しておいたよ」
「は? はあ!? なんだよそれ!?」
「なんだよって……、当たり前じゃないかい? 目立った活動もなく趣味全快でやってるような部活動などに貸し与える予算も部室も無駄なだけなんだよ。それにここ最近の活動は見受けられないのでは当たり前の対処として言えるんだね」
「ふざけんな! あの部活動はお前も推薦して作ったはずだっただろう! それに他の部員は認め――」
「それなら、しっかりと許可はもらってるんだね。ほら」
そう言って手渡されたのは退部の申請用紙。
「僕はあの部活動で一応、副部長。部員の申請用紙を代わりに受け取る義務もあるはずさ」
「お前どうしたんだよ? どうしてこんなことすんだよ!」
思わず怒りに任せて彼の胸ぐらをつかんだ。
不気味にほくそ笑み、見せた澱み切った瞳に俺は恐怖でその手を離す。
「ほら、また君の悪評がつくんだね。君がこれまで学内の悪行が良いようになっていたのも生徒会初期のメンバーでもある僕の助力があってこそだね。それも忘れたとは言わせないんだね」
「確かに、お前にはいろいろと感謝はしているさ……。けど、突然こんなこと……」
困惑した俺に彼はただ嘲笑して、俺の前から歩き去っていく。
「おい、相川!」
「君には話をしたから。あと、今後俺っちたちに話をかけないでくれるんだね」
「なんだよソレ……」
絶望に愕然としていると背後から声がかかる。
「ゆっくん、お待たせ……ってどうしたの? また何かしたの?」
彼女の問い詰めた言葉には俺は何も答えられずただ心がかき乱されたような気持ちでいっぱいだった。