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謎の先輩

長らくお待たせしました。

再開です。

 呼吸が乱れてうまく酸素を取り込むことができない。

 息苦しさに思わず喉元を抑えながらゆっくりと周囲を観察した。

「あのクソエルフどこ行きやがった! 俺の変態伝説を作ったお礼をしてやらねば気がおさまらねぇ!」

 体育館にまで来て探してはいるが見当たらない。

 確かにこちらに天井を伝って走っていく光景を見たはずだった。

 いるような気配はない。

 それどころか、ここでさっきまで使用していた後輩たちは俺の姿を見るや否や悲鳴を上げて逃げていったのだ。

 未だに脳裏にはあの光景がよぎって悲しい気持ちになる。

 本当にひどい。

「この学校マジでやめようかなぁ」

 悲しい気持ちを抱いている暇はない。

 徹底的に隠れられる場所を探して行動をするのが先であろう。

 ステージ下の椅子を収納するスペースや体育館の壁際の倉庫を徹底的に探す。

「クソッ、いねぇ!」

 イラっとしながら壁を叩くとガタンと物音がした。

「今の音」

 音のした方角に歩いていこうとしたタイミングで体育館の扉が開く。

 一人の若い男性と倉本さんが何か深刻な顔をして入ってくる。

「倉本さん、どうしたんだよ」

「例の不審者探しを手伝いに来たのよ」

「いやいや、いいよ。そんな手を煩わせるわけにもいかないしさ。というか、そっちの人は誰?」

「この人は先輩っすよ。神崎先輩っす」

「へぇー、倉本さんの彼氏?」

 鋭い拳が俺の溝に直撃した。

 一瞬で呼吸は詰まって走馬灯が見えた。

「殺す気か!」

「くだらねぇこと言うからっす!」

「いや、だって……倉本さんに先輩の知り合いがいたこと自体初耳だしそれに……」

 神崎といわれた先輩を見てみる。

 この先輩は何か怖い。

 見た目はすごく優しそうな青年という感じの印象がある。

 長い黒髪に程よい筋肉質な体系。いわゆる細マッチョな感じ。

 男性モデルでも通用するくらいに足は細いし精悍な顔つきもしている。

 だけど、なんだか凄みのようなものを感じ取ってしまう。

 無言で彼はずっとこっちの会話に入る気もなく周囲を見ていた。

「それになによ」

「いや、なんでもない」

 人を前にして怖いとかいうのは失礼すぎると感じてしまい妙にはぐらかしてしまった。

 当の先輩は椅子を収納しているスペースに歩いて、椅子を収納したステージ下の引き戸を片手で一気に開けた。

 そう片手でだ。

 鉄パイプ椅子は何百脚と収納スペースである。

 それを筋肉質ではあっても片手で一気に開くのは人間業とは思えない。

 口は半開きになり、その光景を呆然と見てしまう。

「ちょっと、神崎先輩!」

「静かにしろ、明菜」

「でも、一般人の前でその行動は……」

「うるさいぞ」

 まるで親し気に神崎先輩が倉本さんのことを名前で呼んでさらには冷たくあしらう態度に無性にイラっときた。

「おいおい、神崎先輩って言いましたか。お前さぁ何様だか知んないけどその態度女に対してねぇだろ。女性には優しくって教わらなかったのかよ。つか、なんだその怪力? 化け物みたいだなぁ」

 その時、今まで感じていた威圧めいたものが一気に俺へ伸し掛かったような感覚が走る。

 思わず、膝をついた。

 身体からは嫌な汗があふれだして目の前の神崎先輩を見上げた。

 獅子を目の当たりにした子ウサギのような気持ちだった。

 直感的に殺される。

 そう思い込んだとき、体育館の扉がまた開かれる。

「ちょっと、ゆっくん探したわよ!――ってあれ明菜?」

「ゆ、ユッキーっ!?」

 新たに体育館の扉を開けて入ってきたのは幼馴染の雪日であった。

 途端に俺に伸し掛かっていた威圧感もなぜか消える。

 激しく動揺する倉本の頭を叩いて神崎先輩がその手を引いていく。

「行くぞ」

「え、先輩。彼女は……」

「邪魔がいては無理だ」

 などという先輩に俺はおもわずその手をつかんだ。

「さっきからお前なんだよ。倉本さんの先輩だか何だか知らないけど倉本さんに対してひどいことしすぎじゃないか」

「ちょっと、ダメユウ先輩に歯向かうんじゃないっす! 私は別に気して」

「うっせぇ! お前がどうなろうか普通は気にしたくはねぇけど俺は男が女をいじめていることが嫌なんだよ!」

「何キモイこと言ってんすか! 私そんなこと言われても惚れないっすよ!」

「いや、惚れさせるために言ってるんじゃねぇよ!」

 倉本さんと言い争っている最中、腕に痛みが走った。

 当の文句を言った相手である先輩が自らの腕を掴んでいた。

「イタタタタッ」

「神崎先輩! 何をしてるっすか!」

「コイツは例の召喚者の可能性があるんだろう。なら、この場で排除するべき可能性も考慮した」

「ちょっと、待つっす! それはやめて欲しいっす! せめて、彼女の前では頼むっすから!」

 何を言ってるのかよくわからない。

 だが、『召喚』という単語にこの彼が何か異次元な存在なんではないかと推測できる。

「ちょっと、ゆっくんになにをしているのよ!」

 そこへ雪日の怒る声が聞こえたかと思えば、神崎先輩の顔面へと雪日がドロップキックをする光景が視界に映りこむ。

 神崎先輩が派手に吹き飛んで自分で開いた収納椅子に激突して椅子が散乱する。

「おい、雪日やりすぎだろ!」

「いや、だって……ゆっくんを助けたかったんだもん」

「いや、ありがとうだけど……」

 妙に思ってしまう。

 あんな数トンもあろうかという重いものを簡単に開いた先輩が雪日のドロップキックでどうしてあそこまで派手に吹き飛んでいったのか。

 慌てたように倉本さんが歩み寄って介抱している。

 その彼女の手を無造作に振り払う姿に俺はまたイラっと来るがその肩を雪日が掴んでいた。

「ゆっくん、もうつっかかからないの」

「だけど……」

「悪い癖だよ。自分の考えを他人に押しつけがましくするの」

「うぐっ……」

 そのまま、神崎先輩を連れて倉本さんが体育館を謝罪を口にする。

「いえ、こちらもごめんなさい」

 最終的には雪日も謝罪を口にして、彼と倉本さんが出ていく姿を見送る。

「ゆっくん、腕は大丈夫?」

「ああ。それよか、アイツがまだいるはずなんだよ。といっても、場所には見当ついている」

 俺はゆっくりとステージ側に歩んでいく。

 ステージの照明器具に街灯に張り付いた無視のようにへばりつくパンツ丸出しのエルフが一人いた。

「おい、パンツ丸見えだぞクソエルフ」

「きゃぁあああああああああ!」

 悲鳴を上げ、そのまま飛び降りーー

「へ?」

 飛び降りた先にいた俺。

 足底が俺の顔面へと撃沈した。

 意識が暗い闇の底に沈んでいく。

「ちょっと、ゆっくん!」

 最後に見えたクソエルフのパンツの色だけは脳裏に焼き付いていた。

 いい、黒だった。

次回は1週開けてまた掲載します。

すみません。

再来週のいずれかで掲載を予定。

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