見つかった
商業都市イームンデルン。地球の8割が焦土と化した現在では数少ない秩序が保たれている都市である。
わずかながらインフラが整備されており、ここを拠点に人類の都市復興が進められていくのかと思われていた。
「エイムラン街の4番地・・・エイムラン街の4番地・・・ここか」
三枝の目の前には奴がいるとされる雑居ビルが立っている。3階建ての小さなビルだ。
「案外あっさりと見つかったな」
森田は何だかんだ言って三枝について来た。あの町の後始末は仲間に任せるらしかった。
「よし、中に入るか・・・」
ビルへと一歩踏み出した三枝。しかし、それを森田は制した。
「待ってくれ三枝。アンタは何故そこまで奴を殺そうとするんだ。ちゃんと理由を聞かせてくれ。ここまで付き合ったからには全部聞かせてもらうぞ」
「・・・・奴は、俺が開発していたデュエルディスクに敗者を死に追いやる機能を付けて大量配布したんだ」
「なんだと・・・」
その結果、多くのデュエリストが戦いの果てに命を落とした。
三枝がディスクを発表する前に研究成果を奴は盗んで配布したわけだから、三枝自身が責任を問われることはなかった。
しかし、三枝は自分が開発したディスクが元となって大勢の人間が死んだ事に責任を感じて、奴をデュエルで始末しようと思い立ったのだ。
「そんなことがあったのか・・・」
「あぁ・・・だから奴の生存は一分一秒たりとも許せねえんだ」
まずは1階へと足を踏み入れた三枝と森田。2階、3階、探し続けても誰一人見当たらなかった。
誰も見当たらないので、2階の応接室らしき場所で棚に収納されているファイルや書類をかき回しつつ何か奴のヒントがないかと探すことに。
森田も三枝の言う「奴」とは誰か分からないけれど、とにかく誰かの居場所がわかるような物がないかと引っ掻き回して探す。
落合良太郎、倉本了一、川澄優里子、立花奈々、三上ツトム、玉田浩二・・・・たくさんここにいるようだが、誰が復讐の相手なのだ。
どうやらここのビルを拠点に生活用品全般の売買を行っていたようだった。このご時世生活用品はどれも貴重品だったから儲かるに違いない。
もしかしてここからあの砂の町に物資が送られていたのかもしれない。ビルの3階には大量の物資が段ボールで積まれていた。
2時間ほど探し続けても特に成果は得られなかったので、1階も探そうと、森田が下の階に降りたときだった。
ビルの入り口からちょうど一組の男女が入ってきた所だった。
片方は身長178センチほどで年齢30代前半の金髪オールバックの男性、もう片方は身長165.4センチの年齢20代後半の黒髪ロングストレートの女性。
二人とも腕にはデュエルディスクが。
男の方が口を開いた。
「君が復讐に燃える男、三枝かな?」
三枝の名を知る者、ということは敵なのか?
「俺は違う。三枝の復讐に付き合っている者だ」
「んー?三枝に仲間がいたとは聞いていないが、まぁいい。三枝はどこだ」
得体のしれないこいつらに三枝の事は教えられない。
「知らねえな」
「あまり舐めるなよ森田。俺たちにデュエルで勝てるわけないだろ」
下での騒ぎを聞きつけたのか、三枝が2階から降りてきた。
「どうした森田」
「三枝!?こいつらお前の事を知ってるぞ!!」
「へぇ、あの子が三枝」
女の方が三枝を品定めするかのように観察する。
「あ」
不覚をとった森田。
「お前が三枝か。事情は既に砂の町からしっている。あの人の命令でお前を消すことにした」
「そうよ。わたしたち2人がかりでね」
それを聞いて身構える三枝。
「やはり、奴の差し金か」
「2対1だけど躊躇しないわよ。覚悟することね」
「待て!!漢森田、黙って見過ごすわけにはいかねえ!この俺も三枝の手助けをする!」
「ふぅむ、タッグマッチというわけか。まぁ俺たち2人は構わねえが?」
「よし、頼むぞ森田」
「おう!!!」