プロローグ
カラスを愛する方へ。
この物語はカラスは登場しますが、想像しているカラスとは異なる可能性があります。
『僕と空き缶』
プロローグ -天の声-
君はカラスという生き物を知っているだろうか。
もしかしたら君の側にもカラスがいるかもしれない。
彼らは街に廃棄された人間のゴミを啄み、それを生命の糧としている。街からは忌み嫌われ、時には死の象徴として敬遠されることもある。
おや、君は何か勘違いをしているようだね。君が想像しているカラスという生き物は黒く、夕景の象徴としての鳥類ではないか。今話しているカラスはその様な可愛いものではない。
自らの私利私欲を埋めるために街を徘徊するカラスのことだ。
こうして話している今も人間の隙を狙い、暗闇から食事の機会を伺っている。
いいかい。これから君には少し変わった世界に迷い込んで貰うことになっている。そこで君はまるで自分の人生が一から加筆修正されたような気分を味わうだろう。
君は人間の廃棄したゴミを漁りながら生活するようになるのだから。
ただ、安心してくれたまえよ。
君だけがその様な理不尽な生き方をするわけではない。そう、君の近くには常に空き缶が転がっている。君は空き缶を見てどんなことを考えるだろうか。
綺麗なまま転がっているものもあれば、凹んだり、完全に潰されていたりするものもある。それはまるで人間社会の揉みくちゃに耐える人間のようにも見える。なんと美しい無機物だろうか。
おっと、少し話が長くなりすぎてしまったね、カラスの君。何のことだって。君はまだこの状況を理解出来ていないのか、それは申し訳なかった。それでは改めて君に告げよう。
今話していたことはすべて君のことだよ、相良修斗君。
初めまして、作者の凪希です。
これからストーリーに入って行くこともあり、自分自身とてもワクワクしています。
頑張って完結に向かって走ろうと思いますので、どうか温かい目で見てやってください。
次回予告 第1話 夕景の邂逅