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カノウコウチク~吉野翔太の怪事件ファイル~  作者: 広田香保里
怪12 鮎川由佳の逃避行
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いなくなった由佳

お待たせしました。

怪12、あいかわゆかのとうひこう。始まりです。

今まで書いた小説は、脚本みたくシーンを書いたりしてから小説にしてたのですが、

本部分はぶっつけ本番で小説にしています。

その方が突発的な思い付きで、意外な発見があるかもしれないと思ったからです。

なので終わりがどうなるかは私自身も分かりません。

そう言った事も楽しみつつ、書ければ良いなと思っています。

それではどうぞ。


日本負けちゃったなー(泣

感動しましたけどね。

上に行って欲しかったですホント。

『そうだ。あんまり大きな声は出さないでね? 鮎川由佳』

 誰?

って聞く前に女の子の次の言葉が発せられる。

『吉野優子、殺しちゃうから』

 まるで遊びの中での会話のような、最も恐ろしい言葉が継がれる。

弦さんって人が言ってた事実。

そしてこのタイミングでの連絡。

翔太は相田さんに言ってた。

誰に言われて実行したのか。

そしてあの女は悪魔だ……と。

今この状況がそうなのだとしたら、この女の子がそうなのかもしれない。

黒の御使いのメンバー。

相田さんを脅し、そして殺人まで行わせた。

そして優子さんを拉致した。

『A - B - C - D - E - F - G』

 いきなり歌いだす女の子に、この上ない恐怖を覚える。

二の句が継げなかったのは、優子さんの命がかかってると思ったから。

正常な考えで犯罪は犯せない。

こっちの常識で動かない方が良いと、反射的に思った。

『H - I - J - K - L - M - N』

 大きな声を出すなと言う事は、多分翔太や楓さんに気付かれないようにした方が良いのかもしれない。

そんな事を考えながら、気になる事。

『O - P - Q - R - S - T - U。V - W - X - Y and Zee』

あたしの番号を知ってる理由は置いておくにしても、目的が分からない。

何の為に?

『案外近くにあるからね。待ってるからね。鮎川由佳』

 終わったらしいABCの歌を聞き届け、あたしは出来る限り小声で、手短に言う。

行かなければ、どうなるの?

『言わなくても分かるよね?』

 ……。

『そうだ。この話は誰にもしないでね? それで出来るなら、誰にも気付かれないようにね? 鮎川由佳』

 そうして電話は切れた。



 目を覚ます。

まだ体中が軋むように痛い。

多分、あばらが何本も折れてるだろう。

咳き込むと、口の中が血の味で満たされてる事に今更気付く。

皇桜花に良いようにやられた傷が、容赦無く痛みをけしかける。

そして手が自由に動く事をようやく把握し、あたしはゆっくりと立ち上がる。

日の光が高い天井の上の方にある窓から漏れてるから、多分1晩中気を失ってたんだろう。

2晩なのかそれ以上かもしれないけど、今はとにかくここを出る事が先決。

窓から出たい所だったけど、生憎足場になりそうなものはイスしか無く、とても届きそうにない。

だとしたら正面の扉からだけど、予想通り鍵がかかってた。

もう1回誰かがここに来るかもしれないけど、今のあたしの状況で入って来た誰かを気絶させる事は難しい。

……。

確かあたしは最初、手錠をさせられていた事を思い出す。

何でわざわざ外したのか。

こっちとしては都合が良いかもしれないけど意味が分からない。

兎に角、あたしがここにいたら、人質としての役割を果たしてしまう。

何とかここから出て、あたしが無事だって事を翔太達に知らせないと。

スマホも無いから、あたしがここから出るしか方法は無い。

時間が惜しかった。



 予想通りテーザー銃は館周辺に落ちていた。

由佳の電話も終わったから、俺達は急いでパトカーに乗って帰路についている。

相田さんを乗せたパトカーは先に向かってしまっている。

何かしらの事件に巻き込まれた可能性は想像できるかもしれない。

過去に何度もそれで拓さんにはお世話になってるから。

けど、殺人事件が起きて尚且つ容疑者が特定された事まで、果たして予想できたのだろうか。

弦さんが乗って来たパトカーともう1台。

2台は拓さんが手配したものだろう。

後から来たもう1台は?

ふと、窓の外に目をやる。

黒い軽自動車が止まっている所を避け、パトカーが元の車線に戻ろうとした瞬間。

目を見開く。


 止めてくれ!


 倒れている人影が。

草影に一瞬だけ見えた気がした。

パトカーを降り、見間違いじゃなかった光景に顔を背ける。

何か所あるのか分からない銃創。

多分投げ捨てられたのだろう。

相田猛の変わり果てた姿がそこにあった。

警官が連絡を入れている。

黒の御使いに、姉ちゃんが拉致された。

そして直前のタイミングで俺達は依頼を受け、ここに来た。

そして犯人は警官に扮した何者かに殺害された。

理由も目的も何も分からないけど。

終わったらその人間をゴミのように捨てる。

相田さん達が過去に行った事は間違ってる。

それは言える。

言ってた事が例え本当だったとしても。

あの光景は残虐そのもの。

だからと言ってこんな風に殺害しても良い人間は。

もうこの世にはいない。

俺は来ていた上着をそっと相田さんに被せる。

秀介が自殺して。

その後に犯罪を防ぎたいと願った。

それから。

多くの人の死を見た。

余りにも多過ぎる。

もう、終わらせないと。

心に刻む。

「翔太君……」

「坊ちゃん」

 楓、弦さんの方に振り向く。

そこで初めて異変に気付いた。

辺りを見る。

由佳がいない。

警官は無線で連絡を取っていて、パトカーには誰も乗ってない。

……何だ?

どこに行った?

電話をかけてみる。

出ない。

「どこへ行ったのかしら……」

 この状況で?

自分の意思でどこかへ行く?

……!

急いで拓さんに電話を掛ける。

『翔太君か!』

 ホッとしたような声の所悪いと思ったけど、由佳の捜索を大至急お願いする。

『そっちで何があった?』

 由佳が突然姿を消した事を手短に伝える。

『直ぐに捜索隊を向かわせる!』

 PCPへわざわざ依頼をかけた理由が、俺達を姉ちゃんから離す事が目的だとしたら。

一連の事を起こしたのは間違い無く黒の御使いだろう。

そして多分。


 ブウゥゥゥン。


 今度は楓のスマホが鳴る。

「華音ちゃん? どうかしたのかしら」

『優子さんの事、伺っていますか?』

「ええ。それに、由佳ちゃんまでいなくなってしまっているの」

『え……』

 そうだ。

由佳が普通の知り合いと電話をするのに、別に人目を憚る必要は無かった筈。

女同士の話ならまだしも、姉ちゃんが拉致された。

弦さんまでここに来た状況で。

華音ちゃんまで知っていた。

だとしたらあの電話の主は誰なのか。

黒の御使い。

或いは星さんか久遠。

そしてさっきまで確かにあった筈の黒い軽自動車がいつの間にか無くなっている。

クソ!

今更気付いたって遅い!

「華音ちゃんは無事なのかしら?」

『私は森田さんがついて下さっているので、平気です。それより』

「坊ちゃん」

 弦さんは俺の肩に手を乗せる。

「ここには私がいます。彼女を追いかけて下さい」

 ……。

俺は警官を見る。

警官も事の重大性を把握したのだろう。

本来はやってはいけないかもしれないけど、人命が優先と判断してくれた。

「ご無事でいて下さい」

 俺と楓は、急いでパトカーに乗り込んだ。

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