常識を捨てた答え
白田さんの時だけじゃなく。
藤岡さんの時にも全員が旅館にいた。
全員、完璧なアリバイがある。
そして持ち去られたスマホ。
無くなった孤面。
理由が絶対にある筈。
そしてその方法を一刻も早く明らかにする為に、転落現場へとやって来た。
狐面を確かに藤岡さんは被っていた。
だけど川のどこからも面は発見されなかった。
流されたのかもしれない。
だけどその理由は何か。
それに、和田さんと白田さんのスマホが無くなったのには理由があるのかもしれない。
だけどそれなら藤岡さんのスマホが舞台に残された理由は何なのか。
自分から飛び降りる他殺。
これだけの事を考えた犯人。
細かい所にだって理由はあるかもしれない。
スマホが振動し、取り出してみると由佳からの着信だった。
『何か分かった?』
俺は何も言う事が出来なかった。
『そっか……』
多分、何かの進展を期待して、俺に掛けてきたのだろう。
悪いなと言い、通話を切ろうとした。
『何が分かれば解決出来る?』
思い掛けない一言に、俺は気の抜けた返事をしたと思う。
今までの自分を変えたいとあたしは強く願った。
翔太を手助け出来ないか。
楓さんも同じ気持ちで動いてる事を知った。
だから翔太が何も言わなくても、自分で考えて動けてる。
でも、あたしは世界がどうなるとか。
犯罪を無くしたいとか。
そんな気持ちは全く無かった。
それでもあたしが思ってる事が1つだけあった事に気付いた。
自信の有無、能力の有無で世界が決まるのはとても悲しいと。
そう思った。
『由佳。いきなりどうした?』
翔太の推理力なんてあたしが一番良く知ってる。
けど、根本的な知識は無いんだ。
勿論あたしにも。
『凹ませる為に電話したのかよ……』
だったらあたしがそのサポートをすれば良い。
人は1人では何も出来ない。
誰でも知ってる事なのに、あたしは気付いてなかった。
それでもやっと気付いた。
あたし自身が動ける行動を、答えとして見つけた。
だから言った。
どんな常識外れな考えでも良いから言って。
あたしが考えを基に可能な方法を調べるから。
翔太は無言だった。
必要無い事はこっちから言わない。
これは推理を手助けする為の手段じゃないから。
犯罪を防ぐ為に必要なのは短い時間。
出来る限り早く。
それより更に早く。
想像はきっかけを作る為に絶対に必要。
翔太の想像を超える手助けが出来たら。
犯罪を防ぎたいと思ってる翔太を手助け出来るんじゃないか。
翔太に嫌な思いをさせるとしても。
あたしは、翔太の役に立ちたいから。
『どんなに常識外れでも良いのか?』
あたしはそれを受け入れるだけ。
『時間をくれ。そっちに戻るまでに考える』
そうして翔太との通話は切れてしまった。
翔太の頭脳で思いついた事が、実際に存在する。
あたし達はまだ子供だから。
翔太位の頭脳の持ち主が、他にもいると信じてるから。
もし、複数のSNSを同一のIDでプレイしていたら?
途方も無い調査と空振りを繰り返す中、とあるアプリの気になる事件を見つけた。
重課金による破産で自殺してしまった1人の男性の記事。
そして見つけたwhiteのID。
Mikio0903。
繋がるかもしれない僅かな糸を、ようやく掴んだ。
これで翔太君の推理を手助けし、高揚出来ると思うとぞくぞくした。
いつも以上にやる気が出ている事に我ながら呆れてしまう。
冗談はここまでにしておくとして、関係している人物が分かれば。
犯人として話を聞けるかもしれない。
或いは被害者、犯人が狙う標的であるならば、殺人を防げる可能性が出て来る。
そしてSNS内で、2人の所属ギルドはホームページを持っていた。
メンバーリストに見つけたokotoのID。
偶然が重なる事は有り得ない。
もう誰もいないのか。
いえ、違った。
探して見つけた。
残る1つの共通点。
由佳が何を考えてるのかはまだ分からないけど、信じて考える。
飛び降りた狐面を被った藤岡さん。
どこからどう見ても自殺だと断定してる理由は、その時間、舞台には誰もいなかった。
容疑者が全員3階の食堂にいた。
そして何より、自分から飛び降りた。
主にこの3つが他殺ではない理由。
だから考え方を変える。
両小指を絡め、手を口元に当てた。
自殺を他殺に変えてしまう、悪魔のような方法を。
どうすれば可能になる?
常識を全て捨てろ。
そして事件の前日の事を思い出せ。
前日は夜に宴会が開かれた。
藤岡さんは酒を飲んでいた筈。
その後、藤岡さんを犯人は拉致したのだろう。
そして面と着物を着せて舞台まで運んだ。
何かを仕掛けた。
……面に?
着物に仕掛けがあったとしても。
殺害し得る凶器はせいぜい毒だろう。
それだと他殺と判断されてしまう。
そして面は事件後、未だに見つかっていない。
時間的に犯人に回収する時間は無かった筈。
警察が見落としたとも思えない。
だとしたら、消えた?
ただ藤岡さんに被せただけじゃない。
理由がある。
そして事件後には消えるように?
スマホも消えた?
それでも藤岡さん自身のスマホはあった。
履歴を確認されても問題は無かったから?
舞台に置く事が重要だった?
これらを全て繋げる。
1つだけ思いついた。
突拍子も無い事。
これを由佳に伝えて、由佳はどうするのかは分からないけど。
役に立ちたいって言う由佳の思いを無駄にする訳が無かった。
そして顔を上げ、いつの間にか目の前に来てた宿へ入って行った。




