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カノウコウチク~吉野翔太の怪事件ファイル~  作者: 広田香保里
怪8 呪恨館の宿命
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単純で重要な

 樹さんの部屋で起こった雷。

意図的に起こされたものなのは間違いない。

雷は静電気と原理は同じだと、テレビで見た記憶を頼りに痕跡を探す。

天井に良く見ないと見えない位置にあった細い針。

これを繋ぐ何か機械がある筈。

天井へ入れる場所は無かった。

ならこの部屋の中に。

机の下。

引き出し。

そして見つけた。

洋服ダンスの中に大き目の機械。

これが多分、雷を意図的に引き起こした。

そして、密室の引き金。

バラバラだった情報が、1つに収束する。

大量に敷き詰められた烏の羽。

やっと理由が分かった。

燃える事も計算に入れられていた。

食堂のすぐ傍の部屋だからだろう。

華音ちゃんが追いかけて来ていた。

「何か分かったんですか?」

 ああ。

俺は頷いた。

それにこの方法であるならば。

犯人も自ずと浮かんで来る。

「……そう言う風に、毎回事件を解決して来たのですね」

 俺は苦笑いする事しか出来なかった。


 解決に意味なんて無い。


「……え?」

 事件を解決しても、意味が無い。

なら何故?

俺はこんなにも必死に殺人の証拠や方法を探しているのか。

きっとそう。

あの時から。

罪滅ぼしの為に。

「犯罪を防ぐ事に対して、ですか?」

 きっとそう。

それは他人の為なのか。

それとも自分の為なのか。

それすらも分からないけど。

これだけは言える。

どんな理由であれ。

それで立ち止まったら、多分俺はもう歩けない。

そんな恐怖から逃げてるだけかもしれなかった。

華音ちゃんは何故か嬉しそうに俺を見ていた。

「兄さんが翔太さんを気に入るのも当然かもしれません」

 は?

今のどこに何を思ったんだろう。

「優しすぎます」

 ……取り合えず、樹さんの部屋の密室は分かった。

俺は華音ちゃんに食堂へ戻るように言い、3階へ向かった。



 殺人は成功しただろう。

後は吉野翔太がどのタイミングで方法を見破るか。

残る殺人は自分次第と言う事。

館華星は、静かに私の机にカップを置いた。

私はありがとうと言い、カップに口をつける。

これは強制した訳ではない。

目が見えるようになってから、活発に動いている。

まるで止まっていた時間を、必死に取り戻すかのように。

心と体の時間にずれを感じた時、それを必死に取り戻そうとするのもまた人だ。

ヴァイオリンの音も、最近では頻繁に聞くようになった。

まるで生まれ変わったかのように。

ある日、彼女に聞いてみた。

楽しいかな? と。

彼女はただ首を振ったのだ。

「楽しいとか、楽しくないではないと思います」

 彼女の表情は、儚くも強かった。

「ただ、尊い。それだけです」

 良い答えだと思った。

人の持つ時間は。

喜怒哀楽で測られてはならない。

等しくただ、尊くあるべきだ。

それを彼女は人生の中で学び、実行しているのみ。

「呪われた運命を持った皆さんも、その時間は等しく、尊く流れているのですよね」

そんな尊い世界だからこそ。

悪を絶つ。

罪を断る。



 翔太に必要な情報を、あたしがいきなり全部覚える事は出来ない。

膨大過ぎるし、どれだけあるのかさえ分からない。

けど、それをいつでも調べられる状態にしておく事は出来るかもしれない。

高校の先生が、何とは無しに言った事を思い出す。

どれだけ知っているかではなく、どれだけ早く調べられるかが必要。

なら勉強は何の為にするのかってその時は思ったけど、こうして思い出せたのだから理由はこの際どうでも良い。

でもあたし達が事件で向かう場所は、スマホが使えなかった所も多かった。

なら、必要最低限の情報をどれだけスマホ端末に詰め込めるか。

……でも、折角の動物コレクション(主に翔太用)が圧迫してて、多くの情報は入れられないから買ってきた。

最近はスマホ専用のUSBメモリーなんて売ってるんだとビックリした。

楓さんから借りてきたノートパソコンの電源を入れ、良し。

早速作業に取り掛かる事にした。

何をどうすれば良いのか。

手探りだけど、やるしかない。

翔太だってあたしだって、まだまだ子供なんだからそれで良い。

今はそう思い込む事にした。



 記憶を辿る。

白い煙が充満しているのが見えた。

そして窓が開き、生方さんが飛び降りた。

その後に部屋に向かったけど、中から閂錠が掛けられていて開けられなかった。

流れとしてはそうだろう。

そして異常な程に冷たかった扉。

整頓され過ぎていた室内。

生方さんの部屋に誰かがいたとしても、あの白煙の中、誰かがいたなんて分かるとは思えない。

突き飛ばされたとしても。

窓が開いた時に、誰かがいるってこっちが気付く筈。

だからどんな状況なら、生方さんが飛び降りるあの状況に繋がるのかを考える必要がある。

部屋の隅の方に残っていた霜。

ここまで出掛かってるけど、何故自分から飛び降りたのか。

そこが問題だった。

こんな時、由佳ならなんて言うだろうか。

何て事は無いような発言をする由佳に、どれだけ救われたのかあいつはまるで分かってない。

……ダメだ。

由佳の事は由佳にしか分からないだろう。

考え方を変えてみる。

事件当日の生方さんの側に立って。

恐らく睡眠薬で眠らされていたのだろう。

そして起きたら視界が真っ白になっていた。

ここだ。

起きてから視界が真っ白になっていた。

何らかの理由があって、窓から出なければならなくなった?

両小指を絡め、手を口元に当てる。

だが、理由があったからと言って、ここは3階。

……あ。

そうだ。

だから密室にする必要があった。

床の霜、霧、密室、そして自分から飛び降りた。

そして雷と霜を使った……。

ハッとし、俺は急いで中庭へ向かった。


 これだったら十字架をわざわざ雪原に建てた理由だって説明がつく。

なら、ここに。

急いで十字架の根元を掘ってみた。

しっかりと刺さっていたから確認はしなかったけど……。

やっぱりそうだ。

……はは。

思わず笑いが漏れた。

こんな方法に気付かなかった自分は、由佳の言う通りバカな高校生だ。

呪いに見立てられた理由。

3つの殺人が同時に行われた理由。

それに俺達を呼び、橋を落とした理由。

後は睡眠薬を飲まずに済んだであろう方法。

そして証拠。

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