美人で優秀な憧れの先輩と組んで仕事をすることになったので、全力でアピールしてみたお話
「という訳で、この仕事は君ら二人に担当してもらうことになった。大丈夫だとは思うけど、よろしく頼むよ」
「はい、課長! 必ずご満足いただける結果を残して見せます!」
「いや、若手の君の教育も兼ねてるから、そこまで気合入れるほど大変な案件じゃないからね? ――大山君。そこの後輩君が気合を入れ過ぎて失敗しないよう、先輩としてしっかりフォロー頼むよ?」
「了解しました、課長」
そうして課長に渡された案件。それ自身は特別なものじゃない。
ただし、一緒に組む相手が特別なのだ!
「じゃあ、これからよろしくね。分からないことがあったら、何でも聞いてちょうだい」
「はい、先輩!」
大山先輩。
出来るキャリアウーマンな雰囲気のクール系おっぱい美人。時たま見せる笑顔は意外にもキレイってよりもとてもかわいくて、おっぱいが大きくて、いつでも周囲への気遣いを忘れてなくて、自分の仕事に誇りを持っていて、おっぱい大きくて、将来は役員までいくに違いないって噂されるほどに優秀で、おっぱい大きくて、しかもおっぱいが大きい。
こんな人とお近づきになれるチャンスをくれた課長に感謝だよ!
見てろ。指示待ちだのゆとりだの言われてる連中と違って仕事が出来るところを見せて、まずは先輩ともっとお近づきになれるように頑張るんだ!
うぉぉぉおおお! なんだか、常人の三倍くらいの速度で働ける気がしてきたぞ!
「ねえ、今朝頼んでおいた資料作成、そろそろ半分くらいは終わったかしら?」
「あ、それならもう終わらせてますよ。どうぞ」
「え、もう? ……あら、丁寧ね。凄いじゃない」
「ありがとうございます!」
「ねえ、私が外に出てる間に、先方からデータが届いてるはず――」
「あ、それならこちらに。分量が多かったのでA4一枚で内容まとめたものを別につけて、ついでに資料の気になる点についての指摘も付けてあります。これにデータ入ってるんで、チェックお願いします」
「でもあなた、任せておいた仕事は? あれ、どう頑張っても明日くらいまで掛かると思うんだけど」
「もうとっくに終わってますよ」
「終わった……終わった? ……本当に終わってる。しかも丁寧だし……」
「ね、ねえ。ここに置いておいた、今日私がやるつもりで昨日置いて帰った書類の山のことなんだけど、もしかして……」
「あ、今日ちょっと早めに来たんですけど思ったよりも早く割り振られた仕事が終わって時間が余ったんで、先に目を通してまとめてみました。チェックしていただいて、よろしければそのまま使っていただける程度には形式を整えておきましたよ」
「時間が余った……余った……」
こうして、無事に仕事は完了。
一夜明け、足取りも軽く出社中である。
流石は優秀な先輩が仕切っただけあって、一ヵ月の予定が三週間ほどで終わってしまった。
やっぱすごいや。すごい働きやすかったしな。
昨日終わってから打ち上げってことで先輩を飲みに誘おうと思ったんだけど、気付けばふらっと居なくなってて誘えなかった。
だから今日こそ誘うんだ!
そう意気込んで出社した朝一のオフィス。
目に飛び込んできたのは、なぜか私物や書類など一切がきれいさっぱり消えた先輩のデスク。
そして、困ったような顔で俺を手招きする課長。
「あの、課長。どうしたんです? しかも、先輩のデスクがやけにさっぱりしてますし」
「ああ、うん。まずは、ご苦労さん。先方も早いし丁寧だしで喜んでたよ、うん。そう、今までからは想像もしてなかった素晴らしい仕事ぶりだったって評価してることは思えておいてくれ。――君は本当に僕らと同じ人間かと疑うくらいにね、うん」
「ありがとうございます! 精一杯頑張った甲斐がありました!」
「それで、大山君だけどね……」
そこで少し視線を泳がせた課長。
そう時間を置かずに口を開いたが、どこか歯切れが悪い。
「そう。何と言うか、誰が悪いでもないというか、ちょっと思いもしなかったイレギュラーに理不尽なアンブッシュを受けたというか、思いもしなかったところでとんでもない壁に訳の分からないくらい重い一撃を叩き込まれたというか……その、彼女、職場での自分の存在意義が見えなくなったらしくてだね。ちょっと色々と見つめ直したいって思ったらしくてね、うん……」
いや、それって……それって!
「何かよく分からないけどスゲー! 流石先輩! 自分を見つめ直すとか、あんなに優秀なのによく思いつくなー。いやー、やっぱ憧れちゃうなぁー。ね、課長!」
「えっ?……アアウン、ソウダネー」