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「っ⁉︎」

目を瞑り、土下座のような、両手で頭を抱えた格好で縮こまる。

もちろんこうすることで人が感じる五つの感覚の内、1番頼っているであろう視覚をなくすことが悪手であることは誰でもわかるであろう。

しかし、恐怖というものは人の思考を奪い、硬直させる。地震が起きたとき、車に轢かれそうなとき、雷が落ちたとき、死に直面するような恐怖は理性を超え、生を求める本能を刺激する。

事態を拒んでも事実は現実を突きつける。

「オオォォッ‼︎」

「ブギィ‼︎」

「っ、ぁ‼︎」

圧倒的な生き物としての差。蟻より簡単に踏み潰されそうな精神。異世界という名の無庇護。

「考えろ考えろ考えろ考えろ」

考えろと口に出すことしか考えられていない。

「とりあえず落ち着け、落ち着くんだ。一度、落ち着けば」

「オオォォォオオォ‼︎」

「ブルゥァァァァア‼︎」

「っく、ぁ、はぁはぁ、っつ......ははっ」

本能が、諦めた。

生というものに縋ることを諦めた。

生きるということは楽しいことや嬉しいことだけじゃない。恐怖も不安も悲しみも怒りも恨みも妬みもある。そして、今のハクアにはそれを跳ね除けるか受け止めるだけの未来への希望が、ない。

武器もない。知識もない。知恵もない。自分にはないものだらけか、と薄気味悪い笑みだけが浮かぶ。

「ははっ。はははははっ!」

これが最後だと思うと、走馬灯のように浮かんでくる記憶。

少し裕福な家庭に生まれ、家族に恵まれ、友達には恵まれなかったが、幼馴染はいた。

幼馴染。ふと思い出し、その顔を思い浮かべる。初めての恋であり、初めて失恋した相手だ。

もう一度、会いたい。あってずっと聞けなかったことを聞きたい。その理性は諦めた本能をを超える。

ほんの小さな希望の光もないかもしれないけれど、諦めたくない。その思いは理性をより強くする。

「......俺は、生きる」

一筋の光も見えないなら、自分で輝く。そう決めたのだ。

「......ははっ」

そしたらなぜだろうか、また笑みが出てきた。

今度の笑みは諦めじゃない。未来への希望が塗り替えた。恐怖も不安も悲しみも怒りも恨みも妬みも、絶望も。

自然と体が軽くなる。獣達の咆哮にも慣れてしまった。

ハクアは選ぶことができたのだ。現在の絶望よりも、未来への希望を。

「やる、か」

頭を慎重に上げ、状況を確認する。周りは背の高い草木に囲まれているため、立ち上がる。

「......猪と鹿?」

猪と鹿。地球規模なら死を感じるほど怯える生き物ではない。しかし、異世界の猪と鹿は違った。

「まじ、かよ。これ俺生きていけるか?」

冗談を言える程度には回復している精神だが、現実は何も変わらない。

ハクアの見た感想だと、サイズは猪が大人のカバ、鹿に関しては博物館に置いてある恐竜というのが率直な感想だ。

「距離は......だいぶある」

読んでいた小説の主人公のようにかっこよく「100mくらい」と言ってみたかったのだが、もちろん目測で測れるほどの目をしているわけもなく。

実際の距離は約150m。鹿一体に対して猪は三体だ。

「あれ、なんだ?」

鹿をよく見ているといきなり頭の上に赤色のカーソルのようなものが表示されていた。

「ゲーム仕様ですってことか?ステータスとか見れたり......できた」


ガルディア

Lv 98

体力 1829

魔力 579

攻撃(物理) 1543

防御(物理) 1461

攻撃(魔法) 318

防御(魔法) 1052

素早さ 241

器用 167


「......う、うん」

魔法関連であろう値は圧勝しているのだが、それ以外で勝てる気がしない。

「......」

これは喜ばしい出来事と悲しい出来事が一気にきたときの顔をしているとおもってもらえればいい。

「猪も見るか」


ドスボア

Lv 85

体力 1240

魔力 0

攻撃(物理) 1139

防御(物理) 1367

攻撃(魔法) 0

防御(魔法) 34

素早さ 235

器用 56


「お、俺と真反対の極振りか......⁉︎もっかい鹿......」

そして、大事なことに気付いたハクアは言葉を失い、顔を青くする。

「レベル、高い」

ハクアのプレイしてきたゲームは99や100が最大レベルだった。もし、最大レベルが99や100だったなら、この森は本来ハクアのようなレベル1がいていい場所ではないのだ。

「オオォォォッ‼︎」

鹿がハクアと逆の方向へ逃げていく。

「ブギッ!」

「ブギィィ!」

それを連携して追いかける猪。

「......助かった、のか」

いなくなった場所を見て安堵し、腰を下ろす。

「移動より先に状況を把握しよう。できるなら、自分のステータスとかもちゃんと見ておきたいしな」

胡座をかいて座る。まずは自分の体かを確かめるために腕を捲る。

「火傷の跡が......ないな」

1年ほど前にドジをしてしまった火傷は医者に一生治らないと言われた。その傷跡が綺麗になくなっている。

「だけどこれ、俺の体だ」

水絵をやるために短すぎるほど短くしている手足の爪、乳首の形、足の臭い、性器。どれも見たことのあるものだった。

「ステータス、確認するか」

自分の体だとわかって一安心し、周りを警戒しながらステータスを確認する。

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