前回のつづき(中編)
それじゃ予告どおり後半戦、行ってみましょー!
今回は手塚先生の「火の鳥・乱世編」についてガッツリ語りますので、未読でネタバレが嫌だというかたはブラウザバーック(笑)
いまさらオレごときが言うまでもないが「火の鳥」は名作である。
荒唐無稽なSFのお話もあれば、今回の乱世編のように史実に超忠実に作られているものもある。とにかく振幅がすごいのだ。
前回ちょろっと触れたが、この乱世編では超生命体・火の鳥があまり絡まない。てゆうか、何ならいなくても支障ない。
いちおうシリーズのシンボルとして登場はするが、伝家の宝刀「不死」の力を今作では与えてくれない。
火の鳥さんも気まぐれで、もうやめてくれってゆうくらいグイグイくるときもあれば、乱世編のようにさらっとしすぎのときもある。
この超生命体のグイグイ加減を見るのも、シリーズを鑑賞するうえで楽しみのポイントになるのではなかろうか。
さて、乱世編が上下2巻構成であることは前回話したとおりだ。
上巻は入道相国こと清盛が死ぬまで、下巻は源"The弟"義経が死ぬまでが描かれている、ざっくりゆうたらね(笑)
でもって前回、人間描写の濃密さがすごいと予告したが、それに大きく貢献しているのが主人公とヒロインの配役である。
主人公は飯森弁太山妹、通称「弁太」。純朴な山男という設定だが、義経との出会いによって運命を翻弄される。
そう、弁太はあの弁慶的なポジションを担っている。弁太を主人公に据えることで義経への密着取材が可能になる。
だがそれだけでは不十分である。平家および清盛のリポーターは誰がやるんだって話だ。はい、ヒロインの登場です(笑)
ヒロインは「おぶう」という名の田舎娘で弁太の恋人という設定だ。が、戦火は非情にもふたりの仲を裂き、おぶうはなんと清盛に囲われる羽目になる。
運命のいたずらか、それとも手塚先生の茶目っ気か、恋人のふたりは源氏がたと平家がたに引き離されてしまうのです。
ドラマチックな演出と抜け目ないリポーター配置を同時にやってのける先生は、やはり天才だなと。
まあまあ、この初期設定によって9割がた物語の骨子はできあがっていると言えるのだが、まだ最後にひと捻りあるからね。
とりあえず教科書どおりに流れを説明すると……、
・清盛および平家の台頭。
・驕る平家は久しからず。源"兄上"頼朝の復活。
・清盛、病死。
・木曽"冠者"義仲の挙兵。だが調子に乗って戦死。
・平家、壇ノ浦にて滅亡。
・義経、ちやほやされる。だが兄上の反感を買い都落ち。郎党の弁太らとともに奥州平泉にて討ち死に。
だいたいこんな感じでしょうか。このなかで火の鳥がかかわるのは清盛の死のみ。
時の権力者が火の鳥の生き血(永遠の命)を欲するのはシリーズのお約束ですが、入道相国にいたっては中途半端と言いますか、病気になったからそれじゃあみたいな欲しがりかたでした。そら火の鳥もツンデレになりますわな(笑)
けっきょく清盛は死に、平家は滅亡への道を歩み出す。
ただ予想外に相国の死を嘆き悲しんだのは、おぶうでした。ついに彼女は壇ノ浦まで一門と添い遂げる覚悟を決めます。
木曽義仲もごつくて強そうなキャラとして描かれていましたね。
「湯づけが食いたい」
これはほぼ負けいくさが確定したあとの義仲のセリフです。
そのとき巴御前がお茶漬けを用意してくれるのですが、これがまたウマそうなことよ。あいかわらず食事シーンに弱い大原の英ちゃんでございます(笑)
都にあこがれたが、けっきょくそこに馴染めなかった義仲。上のセリフに彼の心情がすべて集約されているような気がします。
長くなったので、次回へつづく!