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UW<第七話>夏の氷編  作者: 津梅
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無粋が一人、二人…(後編)

 村田は冷静に言うが、その口元を見ると微笑を浮かべている。筋の通った論理で滋を問答無用で丸め込むことを秘かに楽しんでいる様子である。こういう意地悪もたまにはするのだと思えば、人間味がある、親しみやすい。きっと恋人の日野原が目の前にいるから見せる一面、と滋も見抜く。


「あの、ここって当直があったんですね…」


「そりゃ、一応基地だからね。でも普段は穂高さんがいるから、というかあの人は基地にほとんど住み着いているから、君ら大学生にその役割が回ってくることはほとんどなかっただけだよ」


「今日は、穂高さんはいないんですか?」


「いや、今日もいるよ。それでも一応は能力者を泊めるとなれば同じ能力者を置いておくほうが無難だろ? 俺たちは土方君のことはそこまで詳しく知らないからね」


「あの、僕で大丈夫でしょうか…?」


「うん? 大丈夫なんじゃない? 授業も休みなんだろ? 君ほどうってつけの人物もいないだろう。俺は今日早く帰るけど、一応、東海第二のほうに連絡を入れてプライベートで来ている彼を帰るよう言うように話はつけておくから、彼が帰れば君もすぐに帰れるよ」


「もしくは弥生さんが来るまでってことですよね?」


「そうだね」


「お二人は、今日はデートですか?」


「うん? そうだね」


 土方にここを教えた責任を取らされる理由もつまりはそういうことである。いつもの村田なら彼自身が適当に処理してくれている。滋とて村田と日野原の仲はよく知っているから邪魔するつもりもない。


「弥生、今日はみんなと徹夜でカラオケだって言ってたから、あの娘が来るのを期待するのはやめたほうがいいと思うよ」


 日野原はそう助言してくれる。彼女もまた勘の鋭い娘だから、土方の恋心も当然見抜いている。そうして、どういう結末を迎えるのか興味津々でもある。もちろん村田とのデートを優先する。それでいて仕事が終わる前に弥生がこの場にやって来てくれないものだろうかと声にして、ニヤリと笑う。滋同様のお節介がここにも一人いるのだ。野次馬根性を共感して同じく滋もニコニコとする。そんな二人を見て村田は肩を竦める。やれやれと言ったか言わないか。でも村田自身もこの手の話が嫌いかといえばそうでもない。胸の内では日野原と同じことを期待しているのだから、意外か、見た目通りか、ムッツリな男である。


「ところで今日は、誠司は来ないんですか?」


「いや、来るという予定は聞いてないな。今日は特にこれといった仕事もないようだからね。この間まで何かと忙しかったんだ、彼も今日は完全にオフかな。気分次第で顔を出しに来るかもしれないけれどね」


「誠司君もこの場に居合わせると面白そうね。弥生に気のある男が来ているってわかったら、彼、どんな反応を見せるんだろう?」


「なんとなく想像はできるんですけどね。相手のことを物好きな奴だとか、弥生さんの返答を笑ってみたりだとか… でも…」


「でも、結構気にするかもしれないよねぇ」


「そうなんですよねぇ」


 二人に比べて村田はまだリアリストで、


「それでも誠司は平塚君のことは同僚以外にどうとも思っていないだろう。恋愛対象として見ていないんだから、それはないと思うんだけどな」と言う。


 そんなことは承知の上でもあれこれと下らない展開を想像してしまうのが無粋のやることである。そんな妄想をこねくり回して人の不幸も考えない無邪気な滋と日野原にはさすがの村田も苦笑を漏らす。ほどほどにしておけと言ってやりたいが、出歯亀根性むき出しの彼らに果たして聞く耳があるのかも疑わしくて、能力者の能力よりもこんな性格の集まりのほうがよほど恐ろしいと思ったとか。女性の間でこそよく見受けられるそれら性格だと思っていたが、姿格好がそうなら中身もそうかと、佐久間滋がつくづく女の子のように見えて仕方がなかった。



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