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UW<第七話>夏の氷編  作者: 津梅
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無粋が一人、二人…(前編)

 性は土方、名は瞬。聞けばその土方も滋たちと同じ二十歳の同学年だそうで、静岡の大学で経営学部に属しているらしい。学校ではサークルにばかり足を運んで授業はサボり気味という。単位も進級スレスレとのことで、それでも落第しないのは要領がいいからだと本人が語る。UWの仕事に関してもそつなくこなすと胸を張る。自分に自信があるのはよくわかったけれど、その実績のほどは語らないので滋には口達者とも見える。見えるが、馬鹿にはしない。


 さて、滋は頼まれた買い物を完了させるために土方に町の外れの丘の上にある「植木屋」という名の和菓子屋の場所を教えてやって、


「そこで基地のことを聞いてください」


 とだけ告げた。自らUWの隊員を名乗る土方を疑うわけでもないが、前回イーニアス・ローウェルの偽物が店を訪ねてきた経験もあるため、その和菓子屋の地下に基地があるとまでは教えなかった。土方のほうは、それだけの情報でも単細胞にも思えるくらい素直に喜んだ。感謝の言葉をいくつも並べ、「植木屋」のある方角へ走っていった。その後ろ姿を見た限り、悪人には思えなかった。


 恋する男の夢の実現に道標を設けてやれた今日の一善に、家に帰り、使いを済ませてからも部屋の中で滋はニヤニヤとする。骨の髄まで恋にお節介な無粋な性格である。そして、基地の中で弥生と出会えたであろうか、男女二人がどういう結末を迎えるであろうかと気になり始め、気になったものはみるみる膨らんで、その場に出向きたい、確認してみたいとの欲求に駆られてそわそわとする。別に彼自身が恋をしているわけでもないのに、いてもたってもいられなくなるのであった。まったくこの無粋の極みは傍から見れば変態の類である。彼のどうにもこうにも基地に行って自分の目で確かめたい衝動はやまず、結局たいした用事もないのに「植木屋」へと足を向けている。気分は上々、程よく興奮しながら「植木屋」に到着すると事務員兼売り子としてアルバイトをしている、あの不確かながら過去に戻れる力を持った日野原がまず出てくる。続いて日野原の恋人でもある調査課の村田も出てきた。


「佐久間君。君だな、あの土方君にここを教えたのは」


「え? もしかして拙かったですか? UWだと名乗っていたし、それに基地の場所は告げずにこのお店で聞いてほしいとしか言ってないんですけど…」


「いや、別にそんなことは問題ない。彼は確かに東海第二基地所属の隊員だ。データで調べたから間違いない。けど、何やら平塚君に会いに来たとかで、彼女がいないと言っても来るまで待たしてくれと頼むんだ。平塚君、今日は来ないと思うんだが、彼はいつまで待つ気なんだ? そのうち店の営業時間も終わってしまうよ?」


「いやぁ、泊まり込みも覚悟だとか言っていましたけど…」


「そうか… 店を閉めて上に誰もいなくなると次には基地で待ってもらうことになるけど、ここの所属でもない彼を簡単に泊めさせるわけにもいかないからな。そうなると帰ってもらうように頼むか、もしくは誰かが一緒に当直としてここで泊まり込む必要があるんだが… やはり君がこの場所を教えたのなら君が帰すか、君が今晩ここに残るという方向になるんだけど、それでいいかい?」


「え? そうなるんですか?」


「そうなるね」



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