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UW<第七話>夏の氷編  作者: 津梅
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性格と能力(後編)

 冷やすという能力とは逆に、随分と熱情的な性格である。どうやら個々人の個別の能力というのも、特にその人の性格に関係しているとは一概に言えないようである。


 滋も、どうして自分が結界の能力を使えるようになったのだろうかと、UWに入隊当時に考えたこともある。祖父が同じような能力者だったという因果はあるが、四人の姉たちにはなく自分だけが覚醒していることを疑問に思ったものである。もっとも、それに悩んでいたところで何も始まらないので、いまではほとんど気にすることもない。


 また、「あちら側」を知ってしまった今では、自分自身を特殊だとも思わなくなっている。土方のような自信を持てるでもなく、自分を誇れるでもない。自分の才能にあった仕事を大学生の身分で始めている、ただそれだけのことだと思っている。確かに危険を伴い、ときに命を落としかねない経験もするが、滋の性格はそれを苦とも恐れとも感じない。理系頭で賢いようでも、その気質は桐生誠司以上に能天気でマイペースなのかもしれない。それでいて自分の程度というものを知っているから、進んで無理をしようともせず、無茶を他人に押し付けることもしない。平和な性格である。覚醒したときに結界が暴発して弥生を病院送りにしたことはあるものの、以降、そのような感情による能力の制御不能もない。同時にあの時のような巨大で勢いのある結界放出をまだ再現できていない。それはそれで修行足らずと本人も反省するが、極端な焦りもない。この精神の安定具合から見ると、超自然現象を操る能力者として土方よりも滋の性格のほうが向いている。それもまた一つの才能であり、能力者としては滋のほうが秀でているとも言える。自尊心の強い土方がそれと気づくのには時間がかかるだろう。滋自身は薄々とこの優越に気づいてもいる。無論、口にはしない。土方を前に確証もないことを言って、波風を立てるほど馬鹿でもない。そんな馬鹿になれる勇気もない。


「あの、それでどうします? 僕の電話も充電しないと、弥生さんへ電話するにしても番号も表示できませんし」


「連絡が取れないならお前たちの基地で待つというのもアリだな。お前たちの基地に行ったことは一度もないが、そこで所用があるように装って待っていれば彼女と再会できることだってあり得る。どうだ? ちょっとお前たちの基地まで案内してくれないか?」


「今からですか? でも、僕もお使いを頼まれていて、これを家に一度届けに行かないといけないんですけど… それと、今日は別に任務があるわけでもないですし、弥生さんもバイトを入れているわけではないですから、遊びにも出ていたし、多分というか、十中八九、今日は基地には立ち寄らないと思いますよ。それとも泊まり込みで待つつもりですか?」


「泊まり込みか、そこまで考えていなかったが、それもアリかもしれないな。大学の試験も終わったことだしな」


「大学って、大学生なんですか?」


「そうだが、何か問題でも? それとも大学生に見えなかったとでも?」


「いや、そういうわけでもないんですけど、二十歳くらいだろうとは思っていましたけど、なんというかバンドマンのようにも見えて…」


「それはつまり大学生に見えなかったと言っているにも等しいぞ。それでもまあ、バンドをやっているというのは間違ってはいないけどな。軽音のサークルでバンドを組んで、一応、ボーカルをしているからな」


 土方の話す声は高くもなく低くもなく、少し鼻から抜けたような性質をしている。最近の流行歌に疎い滋には、今時の楽曲にその声が良いとも悪いともわからない。



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