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UW<第七話>夏の氷編  作者: 津梅
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賊たちの増強剤(前編)

 賊は十人ほどいた。銃を構えられたが、滋は咄嗟に結界を張って自分と土方を包んでしまう。張ってしまえばこちらのものである。驚いた賊たちが大声で怒鳴っても、何を喋っているのかわからないから相手にもできない。頭に一本角のついた毛皮の帽子を被ったボスらしき男が発砲した。透明な壁は放たれたその弾丸を弾き返してしまう。何発撃っても通用しなかった。一斉射撃をしても然り。普通の銃弾ではこの結界を打ち破ることはまず不可能である。


 この能力を初めて目にする土方は、圧倒的な有利に嬉々として発情期の雄のように興奮した。まるで自分の才能とばかりに誇らしく胸を張り、いくらでも撃てばよいと挑発的なことを口にする。


 確かに普通の弾丸で滋の結界を打ち破ることはできない。ただそれでも、弾き返した際にそれなりの衝撃は滋の腕に伝わってくる。特に一斉射撃を試みられると肘が痺れてくる。決してラクをして防いでいるわけではない。


 あれこれと賊たちを煽るようなことを言っている土方の言語を理解できないまでも、この小憎たらしい面、強気な口調を目にし、耳にすれば、賊たちの怒りにも火がついてしまう。ボスらしき男が部下に指示を出すと、速やかに奥から別のライフルと辞書ほどの大きさの木箱を用意する。木箱を開けると、中から注射器を取り出し、自分の腕に刺してから銃を構えた。土方も滋ももしやと思うが、それこそが魔法力増強剤である。新たに拵えたライフルにも滋は見覚えがある。「こちら側」のユーア国で警官や兵隊が手にしていた、魔法力を利用して弾丸を発射させる銃器である。ボスらしき男が弾を発射させると、ドズンと砲弾でも撃ち込んだような爆音がした。重い衝撃が滋の指先から肩口にかけて登ってくる。結界は、それでも破られてはいない。破られてはいないが、耐えるに厳しい一撃であった。連射されると持たないかもしれないと思った時には、賊のボスらしき男が何発と撃ち込んでくる。


「土方さん! 正直厳しいです!」


「何?! 絶対無敵の結界じゃなかったのか?! 根性出せ!」


「そんなことばっかり言っていないで、土方さんも何かしてください! 守るばかりじゃこの場はどうしようもないですよ!」


「何かだと?! お前、俺の能力でどうしろっていうんだ!」



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