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UW<第七話>夏の氷編  作者: 津梅
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素人たちの潜入(後編)

 桐生やヴァイスと違って、土方は手加減も知らない。人を殴って興奮して息も上がっている彼に代わり、滋が具合を調べた。頭から流血はしているが気絶しているだけだと確認できた。それにしても作戦実行の動きの一つ一つが危なっかしい。ハラハラとする滋の気も知らず、見張りが動かないとわかると、担いでいたライフルを奪ってしまう。さらには見張りが着ていた黒の毛皮のコートを脱がし、自分のものと交換してしまう。


「これで誤魔化せる」


 但し、変装したのは土方一人である。滋は老夫婦から頂いた白い毛皮のままである。これではあまり意味がない。次には男の懐を探り出し、何かを見つけて滋には見せずに吟味する。望みと違って気に入らないのか、舌打ちしながらすぐにそれを遠くへ放り投げてしまった。


「何だったんですか? 今の…」


「こいつらおそらく、いや確実に薬を打っているな。腕を見てみろ、シャブ中患者みたいに注射の痕がいくつも見えるぞ。それと注射器も持っていた。薬のほうは見当たらなかったが、間違いないな」


「本当だ… 中毒性があるって言ってたから一度使うと何度でも使いたがるのかも。ということは、この一撃ですぐにやられた見張りの人も増強剤でパワーアップしていたってことですかね? だから気絶で済んだんですかね?」


「さあね、魔法力を上げても肉体が強くなるとも限らないしな。それに、もうすでに薬の効果が切れた後だったのかもしれない」


「土方さん。僕、ちょっと思うんですけど、こんな見張りの人まで薬をやっていたっていうなら、ここの賊の人たちはみんな薬を一度は打ったことがあるってことですかね? その薬ってそんなに簡単に手に入るものなんですか? それともこの洞穴でその薬を製造しているとかってことはないですよね?」


 すると土方は不敵に笑った。


「もしそうだとしたら俺たち大手柄だよな。賊がまだいるってことは誰かがここを制圧したわけでもなさそうだし、あのヴァイス・サイファーを出し抜くことだって出来るかもしれないぞ」


「でも、先に動いているはずのヴァイスさんが手を付けていないとしたら、ここはその製造元じゃないのかもしれないですよね。利用者がいるってだけで…」


「ふん。まだそうとも限らないし、あのヴァイス・サイファー自身が実はここの大元締めなんてことだって可能性としてないわけじゃない。そうなったらどうする?」


「またそれを言いますか。もしそうだとしてあの人と戦闘なんてことになったら、正直、僕は僕の結界でもあの人を止められる自信はないですよ。それぐらい特殊な人なんですから。冗談半分でも僕はそんな考えは持ちたくないですね」


「冗談で言っているんじゃない、これはリアルだ。リアルな世界だからこそ、いろんな可能性があるってものだ。それにあいつ一人を特別視するのはやはり気に食わない。もっと自分に自信を持てばいいだろう」


 さて、潜入も速やかに行わないでいると、


「△○×■◎××!!」


 背後から何事か叫ばれる。振り返ると、ライフルの銃口が幾つも彼らに向けられている。



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