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心亡 ―弐―
同じく寒い夜に
よく外に出ていたことを思い出す
家は嫌いだった。
アルコールの匂いと怒号
誰かの泣き声が脳裏をよぎる
帰っても暗いばかりで
そこだけ重力が何倍にもなって
かかっているようだった
学校でもその圧から逃れることは出来なかった
いくら優しくみえた人でも
表面を取り繕っているのはバレバレで
ついこの間一緒に笑っていた子を 仲間を
醜く踏みにじって楽しむ
それが生き甲斐のように、、
実に馬鹿馬鹿しい
人間は醜い
誰もが相手の存在価値を否定し
自分が優位な立場にいると安心したいがために
踏みにじる
嘘をつく
だから
人が嫌いになった
関わりたくなかった
だがその反面
人に嫌われたくなかった
誰かを傷つけたくなかった
そんな奴になりたくない
そして自分は
誰かの為ではなく 自分の為に
必要以上に心を隠し
必要以上に話さなくなっていった
この世に本当なんてないのだ
結局薄汚いもので出来ていて
化かされているだけで
気付いたら埋もれてしまう
自分はそれがどうしようもなく嫌だった