スライムに転生
俺は今スライムになっている。
「ええええええええええええええ!!??」
もう一度言おう
俺は今スライムになっている。
「あべべべべべべべべべべべべ!!??」
さらに言おう。
俺は今スライムになっている。
「おぴょぴょぴょぴょぴょぴょぴょ!!??」
最後に言おう。
俺は今スライムになっている。
「おえおえおえおえおえおえおえ!!??」
はっ!
いかんいかん。
あまりの出来事におかしくなってしまった。
ことの始まりは数時間前。
気づいたらスライムになっていた。
何故だかは知らんがスライムになっていた。
これがあれか、いわゆる『転生』というやつか。
初体験だぜ。
ちなみに死ぬ前の記憶はない。
死んだのかどうかもわからん。
気づいたら森の中にいて、なんか草や木が以上にでかくてびびって、水溜まりを覗き込んだら、みんなのアイドルスライムになっていた。
青くて透き通ってプルルンとしてる。
我ながら可愛いぜ。
んで、そんなこんなで、水溜まりに写る自分に見惚れていたら、お日様がいつのまにか傾いていた。
あたりが暗くなる。
腹へったな~。スライムってなに食べるんだ?
そもそも、俺、体の中に核しかないんだけど、どうやって消化すればいいの?
……食料探すか。
考えてもわからないので、とりあえず探すことにした。
十分ほどすると、リンゴの木を見つけた。
赤くて大きいリンゴが沢山出来ている。
リンゴの木の下に移動すると、リンゴが落ちていた。
俺はリンゴの前で立ち止まる。
目の前には自分より少し小さいリンゴが落ちている。美味しそう。
食べたい! だが、俺には、足もなければ手もない!
ん?どうやって移動したのかって?
それはあれだ、俺の体は核しか動かない、が、核を前に出すと水(?)も合わせて動いてくれる。
そうやって少しずつ動いて来たのだが。
食べるにしても、俺の体には舌もなければ胃もない。
味わうどころが消化も出来ねえ。困った。
……体の中に直接いれてみるか。
俺は核をリンゴにくっ付けてみた。固い。
リンゴの感触がある。
久しぶりの感触に思わずほっとする。
それで、かんじんのリンゴだが、やはり消化出来ない。
うん。わかっていたよ、そんなに甘くないって。
俺はブルーな顔でこれからについて考える。
食べることが出来ない。
これは生物にとって危機だ。
食物連鎖カースト最下位のプランクトンだって何か食ってるはずだ。何かは知らんが。
……今日はもう遅いし寝よう。
翌日。
俺は同族を探すことにした。
この世界にスライムが俺だけってことはないだろう。
そしてそいつが何を食べているのか見れば良い。
そう思った俺は、青い顔で同族を探すことにした。
おっ!いた!
幸いにも同族はすぐに見つけられた。
俺とおなじ青いスライムだ。
俺は近寄った。
そいつもお俺に気づいた見たいで近寄ってくる。
――タッタッタ!
跳びながら近寄ってくる。
俺は唐突に嫌な予感がした。
――ヒュン!
俺にジャピングして来た。
とりあえず避ける俺。あぶねえ。
――タッタッタ!
反転してまた走って来た。
これ完全に襲われているよなあ。
――ヒュン!
とりあえず避ける。
――タッタッタ!
俺は大きな岩の近くに移動した。
――ヒュン!
華麗に避ける。
――びちゃ。
うわぁ……。
思い切りぶつかったスライムは、腐ったイチゴを壁に投げたときのような音と汁を出し、倒れた。あわれな……。
軽く這いずり回った後、スライムは光の物質になって消えた。
後には黒い石だけがある。
スライムの核っぽい。
俺の本能があれに近づけといっている。
俺は本能のままに核に近づいた。
ん? おお!?
俺の液体の中で核が泡を出しながら小さくなっていく。なにこれすごい。
『レベルアップ』
え?誰?
どこからか聞こえた。
『レベルアップ』
ん?心の中から聞こえたような気がするな。
あれか、天の声ってやつか。
核が消えた。
なんだかお腹も膨れた。
あと、体が軽くなった。
心なしか、移動も早くなっている気がする。
どうやらゲームのように強くなったみたいだ。
核が俺の食料らしい。
俺はとりあえず同族を探すことに決めた。
同族を探していると緑の巨人ーーゴブリンがいる。
片手に木の棒を持ち醜悪な顔で歩いている。
でかいなあ……。
あれは俺じゃ無理だ。逃げよう。
ゴブリンから反転してジャンプすると。
――パキ。
木の枝を踏んでしまった。
おそるおそる振り返る。
醜いゴブリンの子と目が合う。
……が、何事もなかったように歩きだした。
どうやら、俺みたいな可愛い子には興味ないらしい。
俺は逃げようか迷ったが、襲われる心配はないようなので、ついていってみることにした。
十分ほど歩くと、ゴブリンがいきなり走り出した。
慌てて追いかける俺。
レベルアップのお陰でだいぶ早く走れるようになってきた。
ゴブリンが向かった先には、冒険者がいた。ちなみに青年だ。
青年はゴブリンに気づき腰から木刀を取り出した。
見た感じ冒険者成り立てって感じだな。
木刀対木の棒、なんともまぬけな戦いだ。
俺は観戦することにした。参戦してもメリットないしな。
泥沼の戦いの末、青年が勝った。
木の棒を折ったのが勝因だな。
もし、ゴブリンが木刀だったら、どちらが勝ったかわからない戦いだった。
ゴブリンが光の物質になって消えていく。
あとには黒い核だけ残っている。
あれってスライム以外にもあるんだな。
「やったぞ! これで俺も一人前だ!」
お、言葉がわかるぞ。これがいわゆるテンプレってやつか。
青年はそのあと嬉しそうにどこかへ行った。
え?ついて行かないのかって?
冗談は転生だけにしてくれよ。
スライムがどんな扱いか知らないけど、討伐されるのが落ちだろ。
人との接触はもっとレベルをあげてからだな。
そういえば、俺ってステータスとかみれるのかな?
名無しのスライム レベル3
HP7/7
MP3/3
STR4
DEF5
AGI4
スキル
<異世界言語><魔石転生>
うん。弱いな。
やはりあったか、異世界言語。
異世界言語は何となくわかるけど、魔石転生ってのはなんだ?
魔石転生
吸収した魔石の生物に生まれ変わることが出来る。
転生しても能力、スキル等は引き継がれる。
おぉ!
これが、あればスライムから抜け出せるではないか!
しかも、能力が引き継がれるだと……!!
引き継がれるって、今のステータスをそのまま、転生した生物にプラス出来るってことだろ?
俺は意気揚々として魔物を探すことにした。