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8. プロローグエンド:領主様は転生者

プロローグが終ります。

なんというか、ヌルイですな。

個人的には、もっと血が流れ、エロばしる方が(ry

 僕は領主様を見る。

 僕やアンと同じ黒髪。僕達とは違う黒い瞳。

 その領主様は、自分・ ・で入れたお茶を啜っている。

 それどころか僕達の分も入れてくれた。


「うーん、まだまだ緑茶は未完成だな。君達はどう思う?」

「苦いの嫌い―」

「これはこれで、美味しいと思いますけど」

「ほのかな甘味が欲しい所だけどね。私としては」


 領主様は湯呑のお茶を飲み干すと、僕達を見る。

 トン、と卓袱台に置かれた湯呑が立てる音。そして声。

 聞こえてきたのは、この世界では通じない筈の言葉。

 日本語だった。


『あらためて言おうか、ようこそ。私の元へ。

 記憶なき幼き転生者達』

『おぉーアンの謎言語と同じ言葉』

『アンも使えるのか』

『小さい時から喋れた。でも誰にも通じないから使った事はほとんど無し。

 なのに、忘れないから不思議』

 

 僕もこの言葉を使ったことは殆ど無い。でも、いまだに使おうと思えば問題無く使える。

 普通なら、使わない言葉など忘れてしまうはずだろうに。

 

『領主様。それでこの日本語ってなんですか?』


 僕には、この言葉が日本語だという知識はあった。だが、それが何を意味し、なぜその言葉を使えるのかは判らない。

 

『私たちが元々暮らしていた世界の言葉だよ。日本という国だ』

『元々暮らしていた世界?』

『そう。私たちの前世の世界』

『前世?世界ってたくさんあるのですか?』

『そういう説もあるが、私には判らないな。只、私が暮らしていた世界が存在したのは確かだ。何しろ、私はその頃の記憶を全部持っているからね』

『信じられませんけど…』

『アンも判らない…』


 それから、領主様は日本語でいろいろと話をしてくれた。


 領主様の記憶にある世界の事。

 科学という技術が文明を支え、魔法が存在しない世界のことを。

 

今までの自分の生い立ち。

前の世界で死亡したと思ったら、今の世界で赤ん坊として生まれてきたことを。

そして、魔法の才能があることに気付き、前世の知識を利用してやってきた様々なことを。


 僕には領主様のいう事が本当かどうかわからない。

 だけど、領主様が嘘を吐く必要は無いのだから、本当のことである可能性は高い。

 少なくとも、領主様は本気でそう信じていることは間違いなかった。

 僕やアンも転生者だという事は、納得しきれないけど。


『転生者の魂を持っている人間は少なくない。

 むしろ、魔法使いと呼ばれる人間のすべては、異世界転生者の魂を持っている』


 領主様は断言した。


『だが、前世の記憶をもっている人間は、今の所私一人だね。

 断片的な知識を持っている人間は、結構いるのだが。

 君達の様に日本語まで覚えているほどの知識を持った転生者に出会うのは、私も今回が初めてだ』

『領主様は、なぜそれが判るのですか?』

『私は鑑定魔法が使えるからね。他人の能力を見抜くことができる。

 もっとも、魔力消費が莫大なので多用できないのが難点だが。

 君達には、異世界転生者の魂 異世界知識の断片 日本語 魔法の天恵 があるよ』


 便利な魔法があるものだ。さすが領主様としか言いようがない。


『おー! チートの定番。凄い』

チート(ずるい)なんて口にするなっ』


 領主様の言葉が本当だとしても、俺達の立場は子供の領民で、領主様は辺境伯。

 身分に天と地ほどの差がある。


『え?、褒め言葉なのだよ』

『そうなの?』


 アンの方が僕より順応性が高いのか、それとも異世界知識とやらが豊富なのだろうか。

 …知っている知識の偏りかもしれないけど。

 

 領主様の言葉を信じれば、小さい時からの記憶があることや、時々不意に頭に浮かぶ言葉や思考の原因は、僕が異世界転生者の魂を持ち、異世界知識があるからだということになる。

 …一応筋は通っている。

 まあ、これまでの話が嘘だったり、嘘じゃなくても領主様の妄想にしか過ぎないことだったりしても、僕には領主様に逆らうような力があるわけじゃないし。

 結局は、領主様の思惑に乗るしかない。

 となると、問題は…


『それでそれで、領主様はアン達に何をさせたいの?

 やっぱ、魔王退治の手伝いとか、世界征服の手伝いとか、世界の秘密を暴いて神と対峙する手伝いとかが定番じゃないかと、あたしは思ってる!』


 僕が尋ねる前に、アンが訊いた。いやでも、魔王って何?そんな物騒な存在聞いたことないんだけど。

 あと、世界征服に神との対峙って…

 アンの妄想力って怖い。


『いや、別に。そんな定番の使命なんてないよ』


 定番なんですか、領主様。


『おお、それもまた定番! 好き勝手に生きる系も好き。スローライフ系もいい。大抵エタるけど!』


 アンが何を言っているのかが判らない。もしかして、こいつ本当は前世の記憶があるんじゃないだろうか。


『君達を見つけたのは、毎年恒例の魔法使い候補探しの際だからね。

 普通に、教育《訓練》を受けてもらって、使える魔法使いになってもらうだけだ。

 トウゲン領の紐付きで。

 魔法使いの称号を得るだけの実力があれば、将来は安泰だ。

 君達にとっても悪い話じゃないだろう』

『その台詞を聞くと、何故か不安になるのが不思議!』


 アンがまた変な事を言ってるけど、アンの反応を見た領主様は嬉しそうだ。

 

『だけど、合間を見て開発局の手伝いをしてくれると助かる。

 今、いろいろと試作させているのだが、どうしても私が見るだけの時間が無くてね。

 開発局には優秀な人物が多いから、試作開発自体は任しておいても大丈夫なのだが…

 仕上げ自体は、私に似た感性のある君達の方が相応しいはずだ』


 ゴンさんが新型馬車を開発テストしていたけど、他にも何かあるのだろうか?


『味噌・醤油・日本酒 ほか発酵食品』

『ぜひ、協力させてください。』


 魂が引かれる言葉に、僕は即座に協力を申し出た。

 僕が成人するまでには完成させたい。特に日本酒。


『そうだろう、そうだろう。昔から挑戦しては失敗していたが、ようやく成功しそうなのだ。

素晴らしきかな人海戦術。

自分で作れないなら、アイデアだけ投げて後は任せればよい。

必要なのは地位と金。

それを得た今の私に不可能は無い!』


領主様は誇らしげだった。

 領主様の成り上がりの原動力は、味噌・醤油・酒にあったらしい。

 なんて素晴らしい領主様なのだろうか。


『他にも、いろいろと試していることがある。完成した物への共感を得ることができる君達は、私にとって貴重な存在だ。

 君達にとっても、私のようは保護者《後ろ立て》があるのは心強い事だろう?』


 一般農民の4男坊の僕の保護者としては、心強すぎる(・ ・ ・)のが心配なのだけどね。


 こうして僕達は、自称異世界転生者の領主様という心強い保護者を得ることができたのだった。

 


運命とか宿命?

うちじゃ見ない子ですね。


基本的に、ぼんやりほやほや。

レオ君はいい性格をしていますが、別に作者の人格を現していません。

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