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領主様は転生者 ~え?僕もですか?~  作者: 赤五
少年期(僕も領主様)
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46.少年編:僕達の現状3

 港の始末は春風組に任せて、僕達は領館に戻る。

 春風組は僕がこのクール―島へ来てから傘下に収めた地回り組織だ。

 僕達が来る前は、北の大陸国家の支援を受けた地回り組に押されていたけど、今ではクール―島でも有数の勢力を誇るようになっている。

 僕達と一緒に派遣されたブリアレス隊長の工兵部隊は強力だけど、小回りが利くのは春風組の方なので重宝している。

 ブリアレス隊長も、百手長から千手長へ出世している。

 トウゲン辺境伯領が侯爵領になったおかげで、正規登録できる兵士の数が増えたせいでもあるけど。

 実際、昨年の戦争で活躍したのも事実だ。

 まあ、お互い死にそうになったけどね。

 あの頃って、まだ12歳になったばかりだったんだよなあ。

 戦争のせいで、僕達13期生は課外授業の場が戦場になったのだ。

 本来なら課外授業は最終年の筈なんだけど、僕達は3年間で必要とされる授業を全て終わらせてしまっていたので、上級生たちより先に戦場に送られてしまった。

 貴族への養子縁組のせいで、功績を立てる必要もあったみたいだけど。

 なんやかんやと手柄を立てることができたので、今の僕の立場がある。


「お館様、お帰りなさいませ」

「奥の間を使うから。誰も近づかない様にしてね」

「かしこまりました。ですが、ご承認を頂きたい書類が多々あるのですが」

「後回しで」

「かしこまりました」


 僕を迎えたのは、この館の執事をしてくれている初老の男。

 元々は戦争捕虜だったけど、縁があって僕の手助けをしてくれている。

 優秀な人なんだけど、どうやら故郷で問題を起こしたらしくて帰国したくないようだ。

 詳しい話は聞いてないけどね。

 使える人は使わないと、島の運営が回らないし。

 元々家臣団なんていないのだから、ミラー家の人材不足は深刻なのだ。


「アン様は、部屋に案内させましょうか?」

「いつも通り無理かな」


 僕が抱き上げたままのアンは、しっかりと首に抱き着いてきているし。

  領主様、いや紛らわしいか。今だと僕も領主様だしね。

  クレハ辺境侯に連絡するだけだし。

  一年前の戦争の功績でクレハ様は辺境伯から侯爵に爵位があがったのだ。

  実質、トウゲン辺境領だけの戦力で多国間との戦争に勝利したのだから、それも当然というか、それぐらいしか王国としては与えるものもないし。

すでにトウゲン領は実質的な独立国だ。

僕に海を越えた領地を与えているくらいだし。

王家との良好な関係がなければ、王国内で大問題になっているよね。


僕は奥の間にむかう。

途中でアル達も合流した。

血に汚れたアルの顔をレラが拭いている。

お熱いことで。


「レオには言われたくないぞ」


この島に来る前にアルはレラとも(・・)婚約している。

 というよりクレハ様の指導のもとに、させられてしまっていた。

 まあ、それは僕とアンも同じなんだけどね。

 王国の他の貴族や、他国からの干渉を避けるためだそうだ。

 元々、学塔出身者同士で結婚するケースって多いらしいから不自然じゃないそうだ。

これに関しては、クレハ様達がそうしむけていると思うけど。

 

 奥の間は、この館のなかでもっとも金がかかっている部屋だ。

 とはいっても、豪華な装飾品で飾られているような金のかけ方はしていない。

 みすぼらしくない程度には整えているけど。

 高価な家具や派手な高級品が周囲にあると落ち着かないし。

 これは、僕とアンの少ない共通点かもしれない。

 この部屋に掛かっている金は、クレハ様との直通の通信施設に費やされている。

 設置に必要な資金と、運営することに莫大な魔力が必要とされるため、王国全体どころか世界中でも限られた数しかない代物だ。

 この部屋に案内された人の大半が、トウゲン辺境領の実力を悟ってくれるほどの価値がある。

 案件がひとつ片付いたので、今回の定時連絡は気が楽だ。


 奥の間は壁の一面が鏡のようになっている。

 これは魔昌石を加工して一枚の板にしたもので、このサイズのものは開発局以外では作れないらしい。

 勿論、作成費用も大変高いものになるけどね。

 そして、魔法道具を起動させると鏡面が変化していく。そこに写るのはクレハ様の執務室だ。


「あ、おにーちゃんだ。あー、又、アンといちゃいちゃしてる。ずるい」

「ミオ!?」


 そこにいたのは僕の双子の妹・ミオだった。

 僕がミラー家を正式に継いでから、トウゲン領都に呼び寄せることになって、今はいろいろと教育を受けている最中なのだ。

 何しろ、ミラー家って実質的に潰れていた貴族家だったからね。

 リサ教官が正式にブリアレス教官の家に入ってしまうと、僕1人だけしかミラー家の人間はいなくなってしまったし。

 それに何より、クール―島という交易の重要拠点となる領地を僕に任せるためには、クレハ様に対する忠誠の証として人質が必要だった。

 魔法使いとしてのクレハ様の実力を知っている僕が、クレハ様を裏切るわけがないんだけど。

 対外的な評判のためにも必要だと、セバス家令に説得されたのだ。

 それは貴族として生きていくためには仕方ないのだけど。


「あら、ミオちゃん。やきもちやくなら、相手が違うわよ」


 リリーさんまでいた。

 

「あなたの相手は、アルくんでしょ」


 ミオの人質としての価値を高めるために、ミオはアルと婚約している。

 僕とアルに対する2重の人質だね。

 レラは僕の中では妹枠なので、この事を思い出すたびに二人の妹をアルにとられた気分がしてくる。

 ハーレム男は亡びろ。


「いや、レオだってリリーさんとも婚約しているぞ」


 まあ、そうなんだけど。

 むしろ、第一夫人の予定がクレハ様の娘であるリリーさん。

 平凡に生きる筈の予定が、どうしてこうなったのだろうか。

 人生って本当に不思議だね。

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