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領主様は転生者 ~え?僕もですか?~  作者: 赤五
幼年期(学塔生活の始まり)
39/48

39.活動編:夏休み3 複合属性魔術の特有化1

さくっと話を進めたいのに、なぜか長引く。不思議。


 夏休みも三巡りが過ぎた頃、僕達の複合属性魔術が完成した。

 今回は、オリジナルの複合属性魔術ということで構成の決定に時間が必要だった。

 構成が決まった後の術の習得自体は、いつもの如く、僕がみんなの魔力の調整を行いがら練習したのでそんなに時間がかからなかったけど。

 もっとも、さすがに複合属性魔術だけあって、今のままでは魔術を発動させようとしても、発動の準備にものすごく時間がかかってしまうし、失敗しやすい。

 発動に成功すれば、発動自体に必要な時間そのものは短縮されているけどね。

 そして、その欠点を補うために行うのが魔術の特有化。


「でも、間に合ってよかった。今なら無料で特有化できるっていうし」

「レオ、結構お金ためているのに。ちゃっかりしているのだ」


 アンが無駄使いし過ぎているだけだと思うけど。そろそろ娯楽本以外を買って勉強しろといいたい。ちなみに、僕は支給される給与をしっかりと貯めている。

 里帰りするときに、家族に何かいい物を買っていきたいし。

 田舎の村には無い物が、領都には大量にあるしね。


「まだ、二年も先なのに気が長いのだ」

 

 里帰りの許可がでるのは、三年過ぎてからだから僕達が12歳になった頃。

 たしかに、まだ先だけど時間ってあっという間に過ぎると思うのだけど。

 特有化が無料というのは、今、領主様が特有化の専門家を招いていて、学塔の候補生なら誰でも行ってもらえるようになっているから。

 必要な費用は全部、領主様持ち。素晴らしいことだね。


「王都から来た先生だよね。どんな人なのかな?」

「絶対、変りものだぞー。あの人たちみたいに」


 不在のリサ教官の代わりに訪れた魔法使いたちの顔ぶれを思い出すと(特に後半)、アルの言った事も納得だね。リージェス大隊長やグリモス局長は、アクが強すぎた。

 

「リージェスのおっさんは、普通だったぞー」

「そう思うのはアルだけだ」


 アルの出身地の西の開拓村では、ああいう人が大量にいるのだろうか。

 やたらと、筋肉質で肉体言語を使いたがるのが。

 

「絶対、行きたくないなあ」

「そうか? レオなら親父たちも喜ぶぞー。

 変な技を使うし」

「変な技いうな」


 あれは、僕が組手で、アルに殺されない様にいろいろと試している手段だ。簡易落とし穴とかだけど。


「研究者っぽい人なら、グリモス局長に似ているとか」


 開発局の局長の姿を思い出すと、隣でレラが震えていた。

 少しトラウマになっているみたい。

 まあ、実験素材扱いされかけていたから当然だね。震えるレラも可愛い。

 同じ開発局の人でも、ゴンさんは研究の成果を重視していた。

 グリモス局長は、研究そのものに興味がある風だったし。研究バカって奴?



 そんなことを言いながら、僕達が向かっているのは領館。

 王都から来た学者先生は、領館の中の大きな部屋を与えられていて、そこに滞在しながら、研究と特有化の処置を行っているそうだ。

 

「あら、あなた達も来たのね?

 いくらなんでも、まだ早過ぎないかしら?」


 学者先生がいる部屋の扉を開いて出てきたのが、リリーさんだったのにはびっくりした。

 リリー・トウゲン。

 金髪縦ロールの領主様の娘。

 会うのは新年祭の時以来だから、半年ぶりになる。

 前は絡まれるのが嫌で、何もわからない子供の振りをしてやり過ごしたんだった。


「あ、おねーさん。お久しぶりです」


 とりあえず、演技の継続性は必要だよね。


「その、わざとらしい喋り方はやめてくれないかしら。

 あれから、お父様からいろいろ聞いているわ。

 ・・・騙されるのって好きじゃないのよね」


 あ、猫被っていたのがばれていた。

 仕方ないので、普通に話すことにする。

 夏休みの課題が、オリジナルの複合属性魔術の特有化をすることだと説明すると、リリーさんは、呆れたような目を向けた。


「まったく、貴方たちの年齢で魔術の特有化をするなんて、無茶もいいところだわ。

 先生が怒り出さないといいけど」

「他の学塔の人達って、まだ特有化していないの?」

「私の塔だと、成功したのは私だけね。

さすがに上級生は1つくらい特有化しているけど。それでも、自分たちで開発した独自の魔術を特有化した人って、少ないわ」


 あれ、この課題って無茶苦茶難しかったのかな?

 リサ教官がハードルを上げ過ぎているのが原因に違いないね。


「新しい魔術の開発は、面倒なのよ、本来は。

 それを特有化までしちゃおうなんて、無茶にも程があるから、失敗しても仕方ないって思ってなさい」


 あれ?気遣いされているのかな。

 そういや、出会った時のアンの悪役令嬢だ!発言で、リリーさんの性格はキツイって思い込んでいたけど。

 あれって、外観以外、何の根拠も無かったっけ。


 リリーさんは夏休みの間、特有化専門の先生の下で助手をやりながら勉強をしているらしい。

 リリーさんは、技術が重視される魔法陣や錬成陣の研究をやることを将来の目的にしているそうだ。


「お父様のような実戦派の魔法使いになるには、私は魔力が少なすぎるわ」


 というのが理由のようだけど、領主様と比べると誰でも魔力が少なくて当然だと思う。

 でも、僕が見たところ、僕達4人のなかで一番魔力容量が少ないレラよりも下の魔力容量しかなさそうだし、正当な考えかもしれない。


 そんなリリーさんが夏休みの間、師事している学者先生は女の人だった。

 年齢的には、リサ教官より少し上。三十歳を超えたくらいかな?

 間違ってもおばさんと言ってはいけない微妙な年頃みたい。


「おばちゃんが、特有化の偉い先生なのか?

宜しくだぞ」


 そんな、僕の観察を台無しにする一言を言ったのはアル。

 このバカ、これから世話になる相手になんてことを言うんだ。

 どうやって、この場を取り繕うか考えたけど、学者先生の反応はちょっと違った。

 

「あら、元気な子供ね。飴ちゃん食べる?」

「アンも欲しいー」

「たくさん、あるのよ。はい、どうぞ」

「わーい」


 ほんわかした雰囲気の女性だった。

 学者先生と聞いてイメージする姿と大分違う。

 そして、アン。相変わらず飴に弱いな。

 普段は、僕が餌付けしているけど。


「リリーちゃんのお友達かしら。遊びにきたのね」

「いえ、先生。彼等も特有化の施術を受けにきた魔法使い候補生ですわ」

「あら、こんな小さな子供たちが?

 さすがにクレハさんの領地ねえ。規格外だらけで、楽しいわ

 でも、こんなに小さいのに親元を離れるって大変ねえ」


 本当に楽しそうに笑う学者先生。

 包容力のある感じは、さすがに大人の女性って感じ。

 もっと素直に言うと、お母さんって感じかな。

 言ったら怒られるかもしれないけど、案外嬉しがるかもしれないね。


 王都から来た学者先生の名前は、モルメルト・リンクス先生。

 話を聞いたところ(主にリリーさん情報)、王国随一の特有化施術の実績を誇る術陣式使いだそうだ。

 術陣というのは、魔法陣や錬成陣などの事で、術陣式は即効性はないけど複雑な魔術を行使するのに良く用いられる魔法技術の一つ。

 高度魔法と呼ばれる類のものらしい。

 まだ、僕達は習っていないけど。修練というより学習が必要となるらしいので座学として来年あたりに習うのかも。

 

 モルメルト先生曰く、

「魔力が少なくても、大丈夫な学問なのよ」ということらしい。

 興味深いけど、今日ここに来たのは複合属性魔術の特有化のためなのだ。

 

「あら、こんなに幼いのに独自の複合属性魔術を開発したの?

 すごいわね。おばさん、びっくりしちゃった」


 いや、頭を撫でるのはやめてください。照れくさいし。


「むー、レオって年上趣味・・・」

 

 そんな特殊属性は無いから。さすがに、モルメルトさんは年上すぎ。


「じゃあ、私ぐらいが・・・」


 何故か便乗するリリーさん。

 意外とノリの好い人のようだね。外観からは判らないけど。


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