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領主様は転生者 ~え?僕もですか?~  作者: 赤五
幼年期(学塔生活の始まり)
36/48

36.活動編:魔石を育てて魔晶石にして砕く

 この世界の文明を支える根幹技術(笑)

 ブレアレス教官が任期終了してから3カ月が経過した。

 季節は初夏。

 でも、ブリアレス教官は巡り毎の休みのたびに、リサ教官に逢いに顔を出すので別れた気がしない。

 むしろ、あまりにも頻繁でうんざりなのだね。って、アンが言っていた。

 アルは、出会うたびに武術での勝負を仕掛けるけど未だに勝っていない。

 おかげで、僕とレラの聖属性の治癒術が向上したよ。

 だんだん、ブリアレス教官の手加減が無くなっているせいかアルの怪我が酷くなっているのが原因。

 しかし、骨折でも数時間で直せるのだから、聖属性って便利だよね。魔力は相当消耗するのが大変だけど。

 聖属性については、教会から派遣された指導員に教わっている。

 リサ教官と同じ年くらいの女の人で、レイド・テラワラス枢機卿の愛人なので信用できるそうだ。

 子供に聞かせて安心させられるような信用じゃないと思うけど。

 聖属性魔法についての腕は確かだけど、時々、レラを教会に誘おうとするのが難点だ。

 強引な誘い方はしないのだけどね。


「わたし、学塔の皆と一緒のほうがいいの」

 

 なんていうレラが可愛い。

 そして、僕は誘おうとしない。

 どうしてかと聞いてみたら、


「捻くれた腹黒い子供は嫌いなの」


 と、素直に酷い回答を貰った。

 一体、僕の何を誤解しているのか不思議。こんなに素直ないい子なのに。


「性格がいい奴は、こんな方法は使わないぞー」


 いやだなあ、これも武術だよ、武術。

 何をしたかというと、アルとの組手の時に落とし穴を作って嵌めただけ。

 格闘術の訓練だから、直接の魔術による攻撃は無しにしているけど、これは、直接じゃないし。

 踏み込んだ足の裏を起点にして、地面に中空になる部分を作っただけで。

 というか、そういう事でもしないと、アルとの組手なんて1分間も持たない。

 アイツは、自分の腕前が急速に上達していることを理解すべきだと思うけどね。

 格闘術、杖術、基礎体力作りは、ブリアレス教官がいなくなっても毎日続ける日課になっている。

 アンとレラの女の子組も参加している。危なくてアルの相手はさせられないけど。

 アンに体力作りをさせるのに、ものすごく苦労するけどね。

 

「疲れたー。だるいー。おぶってー」


 と、直ぐにサボろうとするのだ。

 アンがむかつく所は、居眠りしたり本を読んだりとサボっている時の方が魔力循環の効率が遥かにいいこと。普通、有り得ない。

 もしかして、それ以外の時はワザと魔力循環の手を抜いているんじゃないかと疑っている。

 

 学塔での魔法の修練の方は、基本三属性を全員が扱えるようになったので、次の段階である付与属性を組み合わせる修練を行っている。

 付与属性は、火、光、重 の三種類があるけど、これと基本属性を組み合わせると水が湯になったり、空間が光ったり、土がさらに重くなったりする。

 組み合わせは自在。アイデア次第。

 とはいっても、定番なものは既に術式化されているので自分で考える必要は無いらしい。

 但し、危険な魔術も簡単に作れてしまうので、自傷を塞ぐためにも魔法障壁は必須で、しかもある程度の技量を身に着けるまでは修練禁止だとか。

本来なら何年先に習う事なのかは、聞かないでおくことにしている。

知らなくても問題ないしね。

魔力容量と魔法技術を伸ばす。これが、今の僕達のする仕事なのだ。


 そんな実際の魔法技術関係の授業と修練の他にも、僕達が学ぶことはたくさんある。

 その一つが、魔導技術関係の知識。

 魔導技術というのは、魔法使いや魔術師でない一般の人でも魔法の効果を得られるための技術の総称。

 今の現代文明を支えているのは、魔法技術そのものより、そこから発生した魔導技術だとも言われている重要な技術だ。


「魔導技術の基本は魔石の利用だ。魔石を精錬することで魔晶石として、そこから魔力を取り出したり、魔晶石そのものを変質させて利用することになる」


 リサ教官は、今でも授業では堅苦しく話す。休みの日にブリアレス教官と話している時のギャップが凄いけど。


「もっとも一般的な使い方は、魔晶石を粉末にしてから使用することだ。

 粉末にしてからの方が、特性を変質させるのが容易になる。

 但し、魔石を魔晶石にして粉砕する作業は魔力持ちでなければ出来ない」


 なので、安全なアルバイトとして魔力持ちである魔法使いや魔術師が、魔石の粉末化を行う事もあるらしい。

 魔晶石の粉末は、万能触媒と呼ばれ、あらゆる分野で使用されている。

 僕がよく目にしたのは、田んぼや畑の肥料かな。

 この万能触媒、万能という名にふさわしく、あらゆるものに混ぜて効果があるとされている。

 肥料に混ぜると作物の成長を大幅に助ける。

 鉄に混ぜると強度が上がる。

 煉瓦に混ぜても強度が上がる。

 はてには、調味料として使っても旨みが増える。

どうしたいかとの思いを込めて混ぜれば効果を発揮する。まさに万能の触媒。


僕の異世界の知識がそんなバカなと言っているけど、これが現実なのだ。


「さすが、ファンタジーなのだ」


 うん、僕も同じ思いだよ、アン。



 その現代文明を支える根幹技術の魔晶石粉の製作に挑戦することになった。

 魔石は、魔獣や魔物を倒すと得られる魔力を含んだ宝石。

 他にも、遺跡街にあるような生成装置からも生産されるけど。

 その魔石を特殊な魔法陣の上にのせて、魔力操作をすると魔晶石に変化する。

 これを魔石の成長というらしい。

 そして、魔晶石が内臓する魔力以上の魔力を、外部から与えると魔晶石が崩壊して粉になる。

 必要な魔力量の放出技術と、作業に耐えるだけの魔力容量さえあれば簡単な作業だね。

 

「それでも、習いたての魔法使いでは無理な魔力量の筈なのだが、お前たちなら何の問題もないな」


 なんでも、魔力量と魔力容量の測定技術が無かった昔は、魔晶石の粉末化作業をさせることで、その二つを推測していたらしい。

 試しに用意された魔石を魔法陣の上に乗せて魔力操作を行ってみる。

 すぐに、色が変わり透明になった。この状態が魔晶石。

 魔晶石に魔力循環の経路を繋いで魔力を流すと、魔晶石が白く変色して、その後、白く細かな粉になる。

 さらさらとした非常に細かい砂のような感じだね。


「なるほど、確かに簡単ですね」

「・・・なんと、上質の魔晶石粉」


 なんでも、粉末にする時の魔力量は魔晶石の魔力量にできるだけ近い方がいいらしい。

 少なすぎると粉末にならないし、多すぎると魔力の影響で使い辛い粉末に変質するとか。

 

「難しい。どうやったらいいのだ?」


 アンは魔力量の籠め過ぎ。なんで、魔晶石粉が真っ黒になっているんだろう。


「こうやったらいいのかな。ちょっと疲れるね」


 レラは、僕と同じように白い粉を作っていた。作業速度が遅いのは、トロイせいなのか、魔力容量が不足しているのかどっちだろうね。


「こっちの方が早いぞー」


 魔石の手刀割をしているのがアル。

 どうして、それで魔晶石粉が出来上がっているのか理解できない。

 でも、アルの非常識ぶりにも慣れたので誰も驚かない。


 教室には、机の上が一杯になるほどの魔石が用意されていたけど、直ぐに全部が魔晶石粉に変わった。

 リサ教官の話によると、この程度の作業量だと銀貨一枚くらいの報酬がもらえるらしい。

 4人でやったから、一人あたり大銅貨2枚と中銅貨1枚くらいになる計算だね。

 確かに、小遣い稼ぎにはいいかもしれないなあと思った。


「魔法技術の進歩していない昔は、これも魔力操作の修練の一環だった。

 今では、魔力循環に完全にとって替わられているが」


 魔法技術も日々進歩しているらしい。

 そんなこんなを学びながら、僕達は着実に魔法使いとして成長していく。

 もっとも、


「お前たちは着実というより、跳躍しているな」


 というのうがリサ教官の意見のようだけどね。


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