33.活動編:新年祭2
投稿再開です。さくさくいくつもりが、何故か脇道話ばっかりに・・・
リリーさんは気を取り直して、僕達をじっと見ている。
主に僕とアンが対象だ。視線の先は、髪の毛?
「あなた達が、お父様のお気に入りの子供達ね」
そう言われても返答に困るよね。
そりゃ、領主様には目を掛けてもらっているとは思うけど。
「えーと、おねーさんはどなたですか?」
将来の権力者に悪い感情を持たれたくないから、とりあえず良く判っていない子供の振りをして誤魔化そう。年相応ともいうけど。
僕が努力しているのに、後ろで三人が笑っている気配がする。
「あら、先ほどの紹介を聞いていなかったのかしら。足りないのは記憶力?それとも注意力かしらね」
わぁ、絡んできているな。僕が恨みを買う理由なんてないと思いあたらないんだけど。
「ごめんなさい。おいしそうなご飯がたくさんあったから・・・
おねーさんみたいな、綺麗な人の話、聞いてなかったなんて、僕・・・・・・
ごめんなさい」
少し俯いて上目。おお、慌てている慌てている。悪役には成りきれない人っぽね。
ちょろい。
「あ、あれ? ちょっと、そんな責めているのじゃないから、ちょっと、泣いたりしないの」
さすがに、ここで涙が出る程の演技派じゃないからなあ。
涙ぐんでいる雰囲気だけだしておこう。
「もう、誰よ。今年の新人はふてぶてしくて生意気だなんて、言ったのは!
・・・あ、お父様だったわ。私を担いだのかしら」
「おねーさん、怒ってない?」
「怒っているわけないでしょう、ちょっと、気になったから顔を見に来ただけなの。
ほら、男の子なんだから、しっかりしないとね」
そして、お姉さんぶってくる。ふむ、ちょろいね。
その後も、頼りない年下の男の子として会話をつづけ、最後に、ありがと、綺麗なおねーさんなどと言って、リリーさんを送り返した。
よし、後腐れ無く乗り越えた。
振り返ると、笑い転げているアンとアル、引き攣った笑いを浮かべたレラがいた。
関わると面倒そうな子供を上手く追い払ったのに、僕の努力を何だと思っているんだ。
本当に酷い話だね。
その後、いろいろな人に話しかけられたけど、何故か対応する羽目になったのは僕一人だった。
リサ教官が助けてくれたけど。
ブリアレス教官は、何か考え事をしていたのか気もそぞろ。やたらとそわそわしていた。
色々な人って言ったけど、学塔の先輩たちである子供たちは基本的に自分たちの学友と一緒に過ごしている。
割り当てられたテーブルがそうなっているし、他の学塔の子供達との交流は少ないみたい。
元々、普段から交流できる位置にそれぞれの学塔はないし、縦の繋がりは薄いのかもしれない。
僕達の所に来たのは、他の学塔を担当している教官が多かった。
どうやら、僕達の魔法の修練達成速度が今までにないほど早いのと、領主様から頂いた新式の魔晶宝石への興味があるようだ。
新式の魔晶宝石が支給されたのは、僕達だけだからね。
他には教官達も持っていないし。
「これが必要となるほどの魔力量に達するのは難しいな・・・」「むしろ、協同術式魔法の触媒に流用することを考えた方が・・・」「いや、それよりも魔晶石に応用すれば、使い捨ての大容量の魔力源に・・・」
などと、僕達の魔晶宝石を見た人たちが言っていた。魔法学って理系の人が多いのかも知れない。技術的な関心を持つ人がほとんどのようだ。
僕達の様な子供に支給している理由とかを推測している人はいなかった。
何で、僕達の様な子供に支給しているのか不満に思っている人はいたかもしれないけど、僕が見た限りでは、この魔晶宝石が必要そうな人もいなかった。
領主様を基準にしちゃうと、教官達でさえ魔力量が過少すぎるように見えちゃう。
一瞬、トウゲン辺境伯領所属の魔法使いのレベルを心配したけど、領主様の魔力量の方が遥かに異常なことは間違いない。
そんなことを、人が途切れた時にリサ教官に話したら、苦笑いされた。
「そこまで、魔力量を見切れるのはお前ぐらいだな。というか、本当に9歳の考える事ではないな、いや、今日でお前たちも10歳か。どちらにしても似つかわしくないのは同じことだな」
褒められたのか貶されたのか判らないね。
結局、全学年学塔交流会は文字通りの交流などほとんどないまま終わってしまった。
ま、おいしい物が食べられたので僕は十分満足できたけど。
交流会が終ったので、僕達は新年祭の行われている領都に出かけることにした。
とはいっても、リサ教官はブリアレス教官に誘われてどこかに行ってしまったので子供達だけのつもりだった。
ブリアレス教官が、気もそぞろだったのはこのせいだったのかと納得。
ゴンさん並みのへたれかと思ったら、そうでもないようだ。
「誰がへたれだって?」
「ゴンさん! どうしたの?」
「いや、ブリに頼まれていたんだけど。新年祭の時は街が混雑して危険だからって。
聞いていない?」
「全然」
熊のような見た目に反して、いろいろと気が回るのがブリアレス教官。
でも、僕達に伝えるのを忘れるなんて肝心なところが抜けている。
そして、アルとレラは誰だっけ?みたいな顔でゴンさんを見ている。
領都に来るまで馬車で一緒だった僕やアンと違って、魔晶宝石を持ってきたときにしか顔を合せてないので無理もないか。
だから、なんでアンまで「誰だっけ?」みたいな顔をしているんだ。
「いや、ほら、印象が薄くて忘れていたのだ」
え?僕には結構印象深いんだけど。というか、遺跡街でも散々迷惑かけておいて忘れるなんて酷い。
とりあえず、アルとレラには開発局の人でへたれ気味の人と紹介しておいた。
「だから、レオ君は僕の事を何だとおもっているのかな?」
「レティさんとは、あれからどうですか?」
「さあ、出発しようか。はぐれないように気をつけてね」
即座に話を逸らすゴンさん。また何かレティさんを怒らせるようなことをしでかしたのだろうか?
「おお、すごいぞー。さすが領都」
「わー、綺麗」
「ふむ、門街と変わらないのだ。アンは直接見たことないけど」
今日の領都は、街全体が飾り付けられていた。冬なのに色とりどりの花が街の至る所に飾られている。
それに、よくわからない巨大な竹飾り。
門松をでっかくして、それを派手にデコレーションしたような感じ。
「クリスマスツリーと正月飾りを合わせたようなのだ」
相変わらず僕にしか判らないような事を言い出すアン。
「ああ、これは領主様の命令で開発局が考えた飾りだよ。何故か、頭を抱えていたけど、領主様」
「こんなに綺麗なのに? 素敵だと思います」
うっとりと飾りを見ているのはレラ。うっとりしたレラは可愛い。
新年飾りは、魔晶石を使った魔道具で光らせている。
「夜になるともっと綺麗だけどね。この時期のカップルが集うスポットになっているよ、ここは」
爆発しろ―とか言っているアンを引きづって行った次の場所は、以前、聖属性審理を行った領都の教会。
派手な鳥居が目印になっているから、この時期なだけあって神社の様に見える。
なんか、それっぽい飾り付けも追加しているし。
屋台とか、おみくじもある。
「大吉だぞ」 アル
「わたしもー」 レラ
「凶・・・」 アン
僕は中吉だった。非常に反応に困るね。
これも、領主様の発案かな?
「駄目だ、この神社は。萌えられないね。
巫女さんがいないのだ」
赤袴もえーなどと言っているアンを引きづって次に行ったのは港。
新年祭のために、港に面する船も飾り付けられている。
「ここは、夜になると一斉に船の帆柱の上に松明をともすようになる。
その瞬間が、名物になっているね」
当然、その時間帯には僕達子供は外出禁止らしい。非常に残念。
そんなこんなで、ゴンさんの案内で領都を見て回った僕達は学塔に戻った。
すると、意外な人が中で待っていた。
戻った僕達を待っていたのは、領主様その人だった。




