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領主様は転生者 ~え?僕もですか?~  作者: 赤五
幼年期(学塔生活の始まり)
30/48

30.魔法教育編:聖属性審理2

 次の日の朝、僕達は領都にある教会堂にいた。

 領都の教会は、僕の村にあった教会堂とは桁が違うほど大きい。

 というか、領都にあるこの教会堂は王都にある本教会堂に次いで大きな建築物らしい。

 そして、この教会は領主様が建設して王国総合教会に貸与しているそうだとか。

 教会堂の中で、一番大きなスペースのある礼拝堂には、多くの神像が祀られている。

 トウゲン領だと、もっとも信仰を集めているのは英雄紳。

 現在の英雄紳の代理であり現人神扱いされているのが、トウゲン辺境伯領の当主である領主様なのだから、当然と言えば当然。

 僕の両親も領主様教の信者だしね。

 でも、自分を模した神像を見て頬が引き攣っている領主様を見ると、こういう扱いは領主様の本意では無いみたい。

 それでも、信仰心を集めるためには手段を選ばないことで知られている総合教会にとっては、王国開闢以来最大の英雄と言われる領主様を祀り上げる事は当然で、それを崇めたがる人も多いわけで。

 有名人は大変だ。

 そんな有名人である領主様が、僕達の様な一介の魔法使い候補生達に付き添っているのも妙な話だけど。


「ああ、私はまだ、領都に帰還していないことになっているから。

 自由行動しても大丈夫」


 遺跡街からテラワラス枢機卿を連れて、飛行魔術で飛んできた領主様は悪びれることも無く平然と語る。


「ちゃんと、影武者は置いているし。豪勢な馬車と護衛を連れてゆっくりと領都に帰還中というのが、公式の見解だからね」

「貴族の体裁とは面倒じゃな。まあ、拙僧も似たようなものだが」

「堅苦しいことが続くと、つくづく昔の気楽な冒険者に戻りたいね」

「まったくじゃ。オリーはともかく、拙僧達なら問題は少ないよのう」


 などと、王国最大の貴族様と、教皇様を支える枢機卿様が仰っています。僕は何も聞いていません。

 教官達も聞こえない振りをしているし。

 それにしても、お二方って昔からの知り合いらしく仲がいいみたいだ。


「領主様って、ネズミのオッチャンと仲がいいの?」

「ぶっ」


 いきなり、とんでもないことを言い出すアン。

 油断していた。フォローの仕様が無い!

 

「アンっ 失礼なことを言うな。枢機卿閣下がネズミに似ているんじゃない。ネズミの方が枢機卿閣下に似ているだけだ!」

「お主のほうが、余計に失礼じゃの」

「いえ、申し訳ありません。つい、本音がじゃなかった本心が」

「いい度胸じゃのう。昔のクレハを思い出すわ」

「まあ、レイドがネズミに似ているのは昔からだから。何を今さらって事だね。

 レイドとは仲がいいというか、腐れ縁というか」

「そーなんだ。アンとレオみたい!」

「僕はネズミに似てないからねっ」


 とりあえず、アンの失言を誤魔化すことができたとほっとしていたら、後ろでレラとアルが小声で話している。


「どうして、アンちゃんとレオくん、あんなに気軽に領主様や枢機卿様と話せるのかな?」

「うー、凄いぞ。俺も挑戦して・・・やっぱ無理だぞ」


 いや、僕はアンをフォローするために無理しているからね。

 農家の4男坊にそんな度胸があるわけがないよ。


 それでも、レイド・テラワラス枢機卿閣下は気さくな性格の様だった。

 あれだけ、失礼なことを言ったアンにもにこやかに語りかけているし。

 それなのに、リサ教官は昨日から枢機卿閣下を警戒し続けているように感じる。

 ブリアレス教官も同様。いや、むしろ殺気を発しているような・・・

 うん、気のせい、気のせい。



 そして、僕達は礼拝堂を通り抜けて、教会堂の地下にある部屋に入った。

 

「ここが、聖属性審理を行うための魔法陣が設置された部屋じゃ」

 

 一見すると、何も無いように見える部屋。

 だが、床には複雑な魔法陣が描かれている。まだ、魔法陣については詳しく習ってないので、どんな効果があるのか見ただけでは理解できないけど。

 魔法陣は、魔石から作られる魔晶石を砕いた粉を特殊な塗料に混ぜ合わせて描かれる。

 効果の基本は術の補助。難しい術を行使するときによく使われるとか。

 その魔法陣を、リサ教官は睨むように見ていた。

 そして、暫くたってから、ほっと溜息をつく。


「そこまで疑われると心外じゃな」

「閣下を疑うなどと、とんでもない。稀にしか見ることのできない魔法陣の呪式に興味が惹かれただけです」

「そこまで心配せずとも、審理の補助はクレハに頼むのじゃからな。こやつを出し抜けるほど拙僧は自惚れておらぬぞ」


 やれやれと肩を竦めるレイド枢機卿閣下。


「リサ。昨日も言ったが、そこまで心配することは無い。

 レイドは信用できるし、私もここにいるのだからね。

 あの時のようなことは起こさせないさ」


 領主様が、リサ教官の肩に手を置いた。

 昔、何かあったのかな?

 気になるけど、とても訊ける雰囲気じゃないね。

 



「ほれ、子供達よ。その魔法陣の中にはいるのじゃ」


 特に準備をするわけでも無く、枢機卿閣下が指さした魔法陣の中心に僕達は入った。

 正面にはレイド枢機卿閣下。そして、その反対側に領主様が立っている。

 リサ教官とブリアレス教官は、魔法陣の外にいる。


「それじゃ、さっそくやるかの」

 

 レイド枢機卿の表情が変わった。今までのひょうきんな感じが消え、真剣な表情に。

 そして、祝詞が紡がれる。


 ──数多に在し、彼方に在し、此方に在し、世界に世間に遍在し神々の御心──


 枢機卿の言葉に応じる様に、魔法陣に描かれた線が光っていく。

 枢機卿からの足元から、領主様の方へと。


 ──聖なる御業、宿りしか、否や──


 領主様に達した光が、領主様を包み、そこから領主様の魔力が放出されていく。

 領主様から放出された魔力は、魔法陣に戻り、そこから徐々に強さを増して僕達の方に進んできた。

 そして、光が僕達を包み込む。

 その瞬間、視界が変わった。

 見える物は光だけになる。部屋の中にあるのは、8個の光の塊。


──世に繋がりしか、否や──


光の数が変わる、8個の光の塊が4個になる。


──繋がりしもの、宿れ──


魔宝晶石から魔力が吸い出されていく。

吸い出された魔力は、魔法陣を通して変質し僕の体に戻っていく。

長いような、短いような、不思議な時間が経過した。


そして、視界が戻った。

 戻った瞬間に、虚脱感に襲われて、立っていられなくなり床に座り込んだ。

 

「レオ、どしたの?」

「レラ―、しっかりしろ」


 平気な顔をしていたのは、アンとアル。

 体調に変化があったのは、僕とレラ。

 というか、レラは大丈夫かな。

 完全に気絶しているっぽいけど。


「ふむ、聖属性に適合したのは、レオとレラか。域界はどうなっているのか、レイド、判るか?」

「男の子の方が人界、女の子の方は、なんと神界じゃな。

 やはり、どちらか拙僧に預けぬか?」

「断ると言っておいただろう。まあ、教会が納得する程度の寄進と、レイドへの礼はちゃんとするから、指導できる人間の派遣も頼みたい」

「しかたないのう。信用のできる使い手を拙僧で当たってみよう」

「いなければ、私が指導してもいいが、セバスが煩いことをいうだろうしなあ」


 領主様と枢機卿閣下が話しているけど、虚脱感と疲労感が強すぎて内容が頭に入ってこなかった。

 ああ、これが魔力の使い過ぎによる悪影響の症状なのかも、などと思いつつ僕は意識を無くしたのだった。



 目が醒めたら、学塔にある自分の部屋に戻っていた。

 まだ、外は明るかった。

 教会堂へ行ったのは朝早くだったから、だいたい半日くらい意識を無くしていたみたい。

 何故か隣でアンが寝ている。一応看病してくれていたのかな?

 普段と立場が逆だ。

 そして、起こそうとしても起きないし。

 仕方が無いので、アンは放っておいて下階に降りると、共同部屋にリサ教官がいた。

 

「む、もう起きても大丈夫なのか?」

「ええ、平気ですけど。結局、聖属性審理ってどうなったのですか?」

「ああ、無事終わった。適性があったのはお前とレラの二人だ」


 教会堂にあった魔法陣は、聖属性の適性がある人間の魔力を引き出して、聖属性の術を使える様に魔力を変質させる効果があったらしい。

 どうもそれだけでは無い気がするけど、詳しいことは教会が秘密にしているみたいで、リサ教官も良く知らないとか。

 

「レオとレラは聖属性に関しても勉強していくことになる。

 これについては、私では教えられないが」


 特殊属性というだけあって、聖属性を覚えることが出来る人って少ないそうだ。

 たとえ適正があっても、魔法使いクラスの魔力が無いと役にたつ術を使いこなすことができないので、聖属性も使える魔法使いって貴重な存在だと言われた。


 ちなみに、領主様は聖属性に関する魔術も一流で、王国内でも5本の指に入るほどの使い手らしい。

 あの人、どこまでハイスペックなんだろうか。

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