まだ始まってすらもいなかった
新道高校2年、菊月 汎仁。
図書委員で弓道部副部長。
趣味はゲーム。なんでも好きだけどリアルとファンタジーが混ざったやつが1番かな。
今はまってるのは「H.B.D」っていうアプリ。
タイトルはHAPPY BIRTH DAY。都道府県から町まで好きなステージを選んで物語が始まる。
実在する街の中で繰り広げられる鬼獣との攻防戦。
アバターは好きにカスタマイズできるし、職業も多い。
バトルはリアルタイムシステムのため、協力戦も行われる。
見つけてから即インストール。
あれからほぼ毎日バトルしてる。もうすぐ次の章へいける♪
でもある日、運営から変なメールが届いた。
「当選者へのお知らせ
後日、詳細とともに各職業専用特殊武器をお送りいたします。道化師。」
聞けば従兄の辰矢にも来ているらしい(ってお前もやってたのか)。他のプレイヤーには「落選」とだけ送られているという。
運営からは何の説明もなし。新しいクエストか何かか、それすらも分からない。
しかし以降なにも音沙汰が無いため、何かの手違いか乗っ取りか………なんて噂されていたものの、次第に事態は沈静化していった。
あれから3ヶ月。
蝉が煩い8月上旬。
僕は従兄妹の家に預けられていた。
うちの親が本町の福引きで海外旅行をひきあてたらしい。
4人で1組というものらしく、父さんと母さん、それとおばさんたちと行ってくるらしい。
従兄弟といっても小さい頃からともに遊んできたせいか、あまりお泊まりって感じはしない。しかもタツヤは同じ高校、ミヨちゃんは隣の中学校だし。
それに両家は違う地区でこそあれど、同じ学区。
僕が本町寄りで、ここは山の下。
僕は夏休みいっぱいをここで過ごすらしい。
らしい、らしいってなんでそんなに曖昧なのか………
それはもちろん
両親が出発する前日まで知らなかったからだよ!!!
まったく………2人が準備を終えてのうのうとお茶してるなか、僕は急いで泊まりのを支度した。
最低限しか用意できなかったけど、いざとなれば取りに行けるからね。
そんなこんなでお泊まり5日目。
今日の夕飯はエビフライだそうです。