On-the-Job Training(OJT)4
海賊船団 旗艦
旧式帆船甲板上にて
武たちが準備を進めるころ、襲い掛かる海賊船の船上では、荒くれ者たちがその出番を今か今かと待っていた。
狙いは石津……大陸では訛ってシーズと呼ばれ始めた傭兵集団の周りをウロチョロする巡礼者等の小舟である。
それらは愚かなことに危険海域を航行するのに、警備会社と契約を結んでいない船だ。
まさに襲ってくれと言っているようなものである。
まぁ、近くにシーズの船がいるため、土壇場で契約する可能性も無きにしも非ずだが、基本的に貧乏な移民か何かを載せてる船ならそんな金も無いだろうと彼らは考えていた。
護衛も雇えない貧乏な船でも、人だけはわらわらと乗っている。
そのため、奴隷として売り払えばそれなりの金になるのだ。
海賊たちはそんな皮算用の元、いつものように狩りを始めようとしていたのだった。
だが、この日に限ってはいつもと勝手が違っていた。
何故かなかなか突撃に移れず、荒くれ者たちは困惑していた。
いつもなら、非契約船しか襲いませんよと通達すれば、銃口は向けても全く干渉してこないシーズの船が、今日に限っては、本社に確認するだの何だのと言って一向にまともな返事を帰してこない。
そして、海賊たちもシーズが本気になればあっと言う間に海の藻屑にされてしまうため、こちらの通達に了解の一言があるまでは手が出せないでいた。
そのため、船の上では荒くれ者たちが手に武器を持ったまま時間だけが過ぎていく。
そうして初めに通告を出してから10分以上が経過した……そんな時だった。
「お頭。シーズの船に動きが!」
見張りの一人が、あとらんてぃっく・こんべあ丸を指差して叫ぶ。
彼の目に映ったのは、甲板上でローターを回し始めたヘリの姿だ。
だが、不幸なことに見張りの彼は視力がいいだけで抜擢された若い男で、それが何であるか判断できる経験が彼には足りなかった。
甲板の上で動く何か。
彼にはそれが戦闘ヘリの離陸準備だとは分からなくとも、いつもと違うシーズの対応だということは分かった。
見張りは異常を感じて慌てて海賊船の船長に伝えるが、船長はそんな見張りの報告に半信半疑であった。
「なに?あの守銭奴は契約が無きゃうごかねーだろ。
それに、安全にただ乗りするゴミどもを捕まえて奴隷に売ろうってのに奴らが邪魔するかよ」
金も払わず、自分たちに寄生する船を助けたところで、彼らには一銭の得もないどころか有害である。
噂では、シーズが裏社会と繋がってマッチポンプで需要を作り出しているのではとも囁かれている。
そんな会社が、善意で他人を守る行動をとるとは船長は到底思えなかったのだ。
「でも、現に……」
見張りはチープな作りの双眼鏡を手に、船長に見たままの様子を伝えようとするが、その事を最後まで言うより先に、甲板上で荒くれ者たちの声が沸き上がった。
「お頭!ゴミ共の船からドラゴンが!」
甲板から獲物の巡礼船を見つめる彼ら。
十分に近寄った巡礼船は、既に甲板上の人の動きも見て取れる。
だが、そんな彼らの目に映ったのは、必死に逃げようと無駄な抵抗を試みる獲物達の姿ではなく、獲物の船から飛び上がり、今まさにこちらに向かって飛んでくるドラゴンの姿であった。
船長は羽ばたくドラゴンの姿を瞳に映すと、驚愕の表情を隠せなかった。
「なんだと?
ええい!撃ち落とせ!!」
なぜあんな貧乏船にドラゴンが?そんな疑問が脳裏に浮かぶが、今はそんなことを考えている時ではない。
ドラゴンを撃ち落とす。
それが、今すべき最優先の事項であった。
荒くれ者たちは、手に持つ単発式の小銃を空に向け、必死になって銃撃する。
だがその銃撃は、対空射撃としては絶望的に弾幕が薄い上、狙いも甘い。
撃ち掛けられる対するドラゴンは、そんな弾幕をものともせずに、海賊船に向かって突っ込んできた。
ゴオォォォォォォォ!
上空を通過ざま、ドラゴンのブレスが仲間の一隻の船に直撃する。
「お頭!一隻燃やされました!」
見張りの声を聞き、船長が被害にあった僚船の方向を見れば、直撃を食らった仲間の船は、マストが派手に燃えていた。
恐らくは延焼を食い止められまい。
「くそ!トカゲ風情がちょこまかと!!
豆鉄砲じゃ埒が明かん!無反動砲を出せ!俺がやる!」
恐らく小銃弾程度ではドラゴンは止められない。
そう判断した船長は、闇市場から買い入れた虎の子の無反動砲を出すように指示した。
M40……口径106mmの無反動砲は、北海道からすれば旧式ではあるが、であるからこそ輸出が認められた近代兵器。
弾種はHEAT等の装甲車両が撃破できるものは輸出制限されているが、対ドラゴンや大型動物用のフレシェット弾は各国軍向けに輸出されている。
だが、管理技術の不十分な武器庫など、汚職官僚にとっては宝の山でしかない。
この船に載せられていたモノも、某国の武器庫から横流しされたものだ。
海賊の船長は、そんな秘蔵の武器を取り出すとフレシェット弾を装填し空に向ける。
音速を超えて飛び出す散弾の矢。
当たればタダでは済まないだろう。
だが、バックブラストの激しい無反動砲の性質により、余り迎角をとりすぎると自分の船体を痛める。
船長は可能な迎角ギリギリまで砲を持ち上げながら、空飛ぶドラゴンが射角に収まるのを待った。
だが、海賊船がそんな凶悪な武器を撃つより先に、海賊船の変化に気づいたペレイラの行動の方が早かった。
「魔力注入…… 爆炎弾」
魔力弾にペレイラは炎の魔術を込める。
この航海にて、もう何度も練習した動作だ。
ペレイラは回避軌道をとるグエンの騎乗で、流れるように作業を進める。
ポーチより取り出したマガジン全体に魔力を込め、彼女に与えられたドラグノフ狙撃銃に弾を装填する。
そんな一連の装填準備を行うと、彼女は海賊船の近くを狙い、その引き金を引いた。
「あの子たちは……私が守る!」
ドン!
響き渡る発砲音。
そして着弾とともに立ち上る水柱。
だが、これは魔力のこもった弾丸である。
水面で発動した炎の魔術は、消えることなく膨大な熱量を持続的に放ち、蒸発した海水はあたりに断続的な霧として広がった。
「くそ!海を狙いやがったな!
霧で何もみえねぇ!」
その後も次々と海面に着弾する魔力弾は、広範囲に霧を発生させ、彼らの視界を遮る。
海賊たちも船を進めて霧を突破しようと試みるが、その霧は船を前に進めても途切れることは無かった。
何故ならば、ペレイラが海賊船団の進路に向けて魔力弾を放ち続けているのだ。
電波を発せるドラゴンに電波が見える竜人のペレイラ。
電波は霧を透過し、クリアな視界を彼女らに提供する。
彼らにとって、霧など全く障害にはならないのだ。
「お頭!ど、どうしま――うわぁ!」
相手が見えなければどうしようもない。
狼狽する海賊の水夫が船長に尋ねるが、その瞬間、聞きなれない大きな轟音と共に船に突風が吹いた。
船長は風で帽子が飛ばされないよう頭を押さえる。
「今度はなんだ?!」
突然の風。
船長はその正体を確認しようとするが、それが何か理解するより前に、船長の前、先ほど迄水夫がいた位置にドドンと何かが複数落ちてきた。
「なっ!なぁ!?」
元板水夫を踏み潰すように甲板に落ちてきたのは人だった。
それも銃を持った獣人が数人。
その中で船長に一番近くに降り立った女と思しき獣人は、着地の姿勢から立ち上がるなり、船員たちに飛び掛かかった。
まず初めに目の前にいた船長に大振りなナイフの一閃を浴びせる、続けさまに甲板に固まっていた海賊たちにAKの掃射を浴びせた。
バタバタと倒れる海賊たち。また、撃ち漏らした海賊には目にも止まらぬ速さで踊りかかるとナイフの一閃でその首筋を掻っ切った。
「雑魚すぎるね。
もっとマシな奴はいないのかい?」
血の付いたナイフを払いながら甲板上に降り立ったソフィアは軽口を叩く。
海賊船の船長は既に生首となり、他の船員は同時に飛び降りたヴォロージャ達に掃討されてる。
ものの数分で、海賊船は幽霊船へと変貌を遂げたのだ。
『旗艦以外は海の藻屑だ。
そっちはどうだソフィア?』
ハインドにて他の雑魚を始末し終わったのか、拓也からソフィアに無線が届く。
ソフィアは肩にナイフをポンポンと置きながら、拓也に応答した。
「制圧完了。
余りにも張り合いがないよ。
これから船倉でも漁に行ってくるね」
『了解。
こちらは船で待つ。
あと残作業の手伝いにペレイラを向かわせるから使ってくれ』
「……りょうかい」
またペレイラか。
ソフィアはそう思いながら通信を終えると、甲板上でペレイラを待つ。
すると、武から指示を受け取ったのか、グエンに乗ったペレイラは直ぐに甲板上に降りてきた。
「お待たせしました」
ペレイラはそう言って頭を下げるとソフィアの方を真っすぐな瞳で見つめる。
何か使命を遂げたかのような表情であるが、そんなペレイラにソフィは多くは語らず
「付いてきな。」
と、言うだけであった。
今回の戦闘だけ見れば、足を引っ張ることもせず、支援に徹し動きもよかった。
恋敵になりそうな相手ではあるが、仕事中に突っかかるような真似はソフィアもしない。
ソフィアは血の海となった船内をペレイラと一緒に歩く。
「う…… 凄い血の跡ですね……」
上空から戦ってたら実感が薄いが、船内は先日ペレイラが見たような死体がゴロゴロしていた。
ナイフで首を切られただけの死体は、大量の血と糞尿をまき散らしながら倒れているだけであるのでまだマシであるが、銃でヘッドショットを食らった死体などは見るに堪えない。
ペレイラは口元を抑えつつ、吐き気を必死に耐えてソフィアの後を追った。
そうして彼女らは船尾楼の奥まで歩いてくると、ある一室の前でソフィアの足が止まる。
「ここだね」
船長室そう書かれたプレートを確認すると、ソフィアは扉の鍵の位置にハンドガンを数発打ち込み、船長室の扉を蹴り開けた。
中はシーンと静まり返っているが、万一誰かが潜んでいることを警戒してソフィアは持ち前の聴覚と嗅覚で中の気配を確認する。
そうして、中に誰もいないとわかると率先してズカズカと室内へ入っていった。
当然ペレイラもそれに続く。
入ってみた船長室は予想以上に汚れていた。
室内は過去に略奪しただろう思われるガラクタが散乱し、お世辞にもきれいとは言えない。
そして、そんな中をソフィアはガラクタを蹴飛ばしながら何かを探している。
「あの、ここには何をしに来たんでしょう?」
ペレイラはソフィアが何を探しているのか分からず、彼女に聞く。
「航海日誌を探しな。
もしくは手紙とかその関係。こういう裏社会に組織を使って生きてる奴は、何かしら横の繋がりがある。
あたしらは、それらしき情報を集めて本社に送るんだ。
あたしには良く分からないけど、末端の小さな情報も集めて分析してると色んな世界の流れが見えてくるらしい」
ソフィアはぶっきら棒に答えるが、それを聞いてペレイラは成程と頷き探索に参加した。
ゴミに紛れて散乱している書類や手紙もペレイラは見逃さないように目を通す。
そして、その横では手慣れた手つきでソフィアが船長の机を漁り始めた。
ペレイラの手前、表情を緩めず作業に当たるソフィア。
相手に舐められないよう努めてそうしていたのではあるが、とある引き出しを開けた直後、その表情はいともたやすく緩んでしまった。
「お!金貨♪」
引き出しの中。目当てのものではなかったが、金貨が目に留まったソフィアは笑みを浮かべて胸の谷間へ金貨を収納する。
へっへっへ~とニヤケながら回収するソフィアであるが、そんなついうっかり笑顔を浮かべた時に、彼女を見ていたペレイラと視線が合ってしまう。
「……何見てんの」
「い、いえ。ソフィアさんも、そうやって笑うんだなぁって……」
思い出してみれば、ソフィアはペレイラの相手をする時は絶えず怒ってたような気がする。
ペレイラにとってはソフィアの緩んだ笑みはレアものだったのだろう。
「……いいから黙って仕事するよ。
重要な情報をついうっかり見逃したじゃ済まないから。
こうやって念には念を入れて机の中も漁って……って、アレ?」
金貨を抜き取り、満足して閉めようとした引き出しの奥。
ペレイラの手前、真面目の仕事してる様子を見せようと念には念を入れて机の中を再度漁ると、そこになにか封筒があるのにソフィアは気づいた。
「これは……」
差出人のない手紙。
封印は既に破かれているが、ソフィアはそっと手紙を開き、中身に目を通した。
「へぇ…… これは武に報告しなきゃね」
「何かあったんです?」
いつになく真剣な表情になったソフィアに、ペレイラが何が書かれていたのか聞く。
そんなペレイラをソフィアはじっと見つめると、何を考えたかペレイラに手紙を投げてよこした。
「読んでみな。
面白いことが書いてある」
ソフィアから投げて寄こされた手紙をペレイラは慌ててキャッチすると、彼女は慎重にその中身に目を通した。
「これは……
教皇庁からの依頼書?
えっ!? でもコレって!」
信じられないといった表情でペレイラは何度も手紙の内容に目を通す。
だが、何度読んでもその内容は変わらない。
「教皇庁から真宗の門徒を襲えとの指示だね。
イグニス教が異教徒の仏教徒を迫害してる証拠だよ。
異教徒だから待遇が悪くなるのは仕方ないけど、まさか粛清までしてるなんてね。
……いや、しかし、よくもまぁ北海道由来の宗教組織に喧嘩売る気になったもんだわ」
そういってソフィアは凄い情報見つけちゃったねと先ほどまでペレイラに対する固い雰囲気などまるで無視してケラケラ笑うが、それとは逆にペレイラは絶句していた。
「そんな」
信仰が其処まで厚くないとはいえ、ペレイラはイグニス教徒であった。
かの信仰の基本には、戦闘宗教であるが故、強者は弱者を守り導くという教えがある。
ペレイラも、相手は異教徒であったが弱者を守るという信念に従い今回の行動を起こしたのだ。
だが、ふたを開けてみれば、それを起こさせたのは教皇庁……つまり敵はイグニス教であったのである。
ペレイラは何かの間違いでは、と思考を巡らせるが現実はそう甘くはない。
「まぁ 異教徒に対する扱いなんてそんなもんだよ。
とりあえず、一旦船に戻るよ。あんたもそれまでに立ち直ってなよ」
ソフィアはショックを受けるペレイラに、彼女なりの励ましを掛けた。
何にせよこの文書は一度武たちに報告する必要がある。
ソフィアはペレイラの肩に手を置くと、母船に戻るために船長室を後にするのであった。
あとらんてぃっく・こんべあ丸に戻ると、ソフィアは見つけた文書を武に報告した。
「そうか、イグニス教が異教徒を粛清し始めたか……」
ソフィアから手紙を受け取った武は、その文面を見ながらそう呟いた。
「で、武はどうするの?何をしようと私は武に付いて行くだけだけど……」
「……いや、こっちで決めれることなんてないな。
情報はささっと本社に回そう。
あとは向こうが何とかするさ」
ソフィアにどうするかと聞かれても、別にどうこうする気持は武にはなかった。
世の中の裏の動きが垣間見えたとは言え、任務中の武にとってみれば「だから何?」という域を出るものではなかったのだ。
これをネタに策謀をめぐらすのは本社の仕事であるし、今の武に介入しなければならない理由などない。
何かやらなければならないとすれば、転移後に分裂していた全ての真宗を統合し、道内の宗教界で確固たる地位を築いた新本願寺からの依頼があった後だろう。
なので今できることと言えば、少々回復したとはいえ落ち込み気味のペレイラを慰めるくらいだ。
「まぁ、裏事情がどうあれ、ペレイラの守りたかったものは守れたからいいじゃないか」
そういって武はペレイラの頭をぐしゃぐしゃと撫で微笑みかける。
そんな武の行動にペレイラも最初はびっくりしたが、同時にそのショックで陰鬱な気持ちから醒めたようであった。
確かに、武の言う通りペレイラが私費を投じて守った船は無事だ。
ペレイラはその事だけを考えるようにすると、先ほどまでの自分が少々考えすぎのような気がして苦笑を浮かべた。
「そうですね。
みんな助かったんだから、今はそれを喜ばないといけませんね」
ペレイラはそう言うと、後で彼らの様子でも見に行こうと心に決める。
恐らく、また変わらぬ笑顔を巡礼船の子供たちは向けてくれるはずだ。
そう思うと自然にペレイラの心も晴れてくる。
そして、そんな彼女を更に励まそうと武は彼女の両肩に手を置き、熱く彼女を応援する。
「ああそうだ。
今は無理にでも笑っておかなきゃな。
何せ、しんみりした状態で辛い請求書を見るのと普通の精神状態で請求書をみるのじゃ、後者の方がいい。
笑え!それも全力でだ!」
凄く真剣な表情で笑えと迫る武。
ペレイラもそんな大げさなと思いつつも、武の放った一つの言葉に疑問を覚えた。
「武さん、励ましてくれるのは有難いですが肩が痛い……
あと、請求書って何です?」
ペレイラは首を傾げて武に聞く、だが武は実に申し訳なさそうな表情で彼女を見た後、視線を外して淡々とその訳を答えた。
「……実はなヘルガさんの清算が終わったんだ。
実は、お前自身も他人に同情できる立場じゃないんだぞ?」
「え?」
「契約基本料はローンでいいが、オプションで定額を超えた分は実費だからな。
ソフィア達のライフル弾は安いもんだが、お前がバカスカ売ってた魔導弾は一発25万だぞ」
「え?え?」
「それと、人件費、ハインドの燃料代やチェーンガンの弾、そしてロケット弾も2発撃たせてもらった。
それらもの費用を多少割引効かせたとしても800万くらい請求するけど、追加でローンしとくか?」
武は哀れる視線をペレイラに向けながら、彼女の借金が増えたことを伝える。
だが、それを聞いて、ペレイラは真っ白になっていた。
「はっぴゃくまん……」
先ほどドデカい借金を背負ったばかりなのに、また想定を超えた額の借金を背負ったペレイラ。
自分の決断が招いたこととはいえ、その場に居合わせた皆は、流石に彼女が不憫に思えた。
「若様も人が悪い。
基本はローン地獄として、追加費用分くらいはポケットマネーで貸してあげればいいじゃないですか。
さすがに彼女に追加で800万だと天引き後の給料じゃ超極貧生活ですし、別で払おうにも風呂落ちでもしなきゃ返済は大変ですよ」
ヤレヤレといった感じでヘルガはペレイラに助け舟を出す。
まぁ助け舟を出したといっても頼るのは他人の金だが……
「まぁそれでもいいけど、どうする?ペレイラ?俺から借りるか?」
「お願いします……」
リッチな武からの借金であれば、ドギツイ取り立ては勘弁して貰えすはず。
ペレイラはお願いしますと深々と武に頭を下げた。
生活の為に石津製作所に就職したペレイラ。
しかし、初仕事で大きな借金を抱え込み、生活向上の見込みは未だ見えないのであった。




