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試される大地  作者: 石達
第2章 発展期
57/88

交流拡大、浸透と変化3

高木と始め、各国の使節が夕食会で懇親を深めていた丁度その頃。

夜の港では、とある騒ぎが起きていた。






礼文島

船泊港-新規造成地区-





夜の港。

そこは、普段は人気もなく、暗く寂しい場所であるのだが、今日は様子がいつもと違っていた。

降り積もった雪が月明かりを反射し、雪国特有のうっすらと明るい夜なのに加えて、燦々と昼間の様な光量を放つ投光器が港の一角を照らしていたからだ。

一隻の船が接舷しているとある岸壁。

そこに集まっているのは光に集まる虫の様に、一か所に固まる赤色灯を回したパトカーと、大量の警官の姿であった。

彼等が取り囲む中心に有るのは、赤い染みと共にくっきり残る雪の人型。


この日、礼文の岸壁で事件が起きていたのだ。


そんな物々しい雰囲気の中、一人、場違いな空気を身に纏う人間がその現場を見ていた。

長い黒髪に小柄な体格。

警察の制服を着ていなければ小中学生に間違われそうな少女がそこにいた。

彼女は警察の封鎖線の中、実に堂々と腕を組み、忙しなく動く警官たちを眺めている。


「平田警部。

たった今、病院から連絡が有りました。

ガイシャは息を引き取ったようです」


仁王立ちする彼女に、警官の一人が報告にあがる。


平田警部


北海道英雄称号保持者にして、不運にも少女の義体に押し込められた彼は、それから数年の月日がたった今もその姿を保っていた。


「そうか。

まぁ あの様子じゃ無理も無いな……

とりあえず、今日の所は刑事課の奴らも来たようだし、後は任せて帰っていいかな」


そう言って平田は実に爽やかな笑みを浮かべくるりと踵を返そうとするが、そうは問屋が卸さなかった。

報告に来た部下にガッチリと手を掴まれてしまう。


「駄目ですよ。

なにせ警部は目撃者の一人じゃないですか。

それなのに何を帰ろうとしてるんです?」


逃がさぬようにガッチリと手を掴み、自然に帰ろうとした平田の動きは完全に封じられた。

機の先を制した部下に、平田は明らかに聞こえる音で舌打ちをするが、振り返った平田は今度は目を潤ませて部下に掛け合う。


「でも……

他にも目撃者はいるし……

なにより当事者が大人しく確保できているんだからいいじゃないか。

それにもう勤務時間は過ぎてるしさ。

ちょっと今日は用事があるんだよ。……ダメかな?」


美少女な見た目を利用した泣き落とし。

知らない人間がそれをされれば、ついウンと頷いてしまいそうな表情を平田は浮かべるが

中身がオッサンだと知る部下にその手は通じなかった。

寧ろ白々しい目で平田を見つめ、酷く冷静に言葉を返す。


「それでも駄目です」


「ケチだなぁ」


平田はそう呟きながら口を尖らせてみるが、全く持って部下の表情は変わらない。

実に冷静な口調でもって、部下の警官は平田に断言する。


「何を言っても無駄です」


問答無用と平田を拘束する部下と、なんとか帰ろうとする平田。

両者の主張は平行線を続け、あたりを封鎖する他の警官を尻目に言い争いを続けていたのだが

気付けば、両者がすったもんだを続けている横に、いつのまにやら背広姿の男が立っていた。

男は二人の言い争うタイミングを見計らい、彼らの言葉を遮って話に割って入る。


「平田警部ですね?

お時間を少し頂きたいのですが」


そう言って男は平田に声をかけると、ようやく平田も気が付いたのか男の方に顔を向ける。

そこに居たのは少々くたびれたスーツを着た中年の男。

平田は彼の事を知っていた。

何故なら、作られて真新しい礼文北署内で何度か見たその男は、確か刑事課に所属していたはずだ。


「おぉ?、……やっと刑事課のお出ましか」


「ええ、ちょっとあそこの方の証言について、聞いていただきたいと思いまして」


「わかった。

直ぐ行くよ」


部下相手には色々とゴネてはみたものの、刑事課に呼ばれた以上、平田は腹をくくった。

長残コースは免れそうに無い。

本当なら今日は嫁のさと子と食事に行く予定だったのだが、後で謝っておくしかないと彼は思った。

そうして、平田はいつまで握っているんだと部下の手を振りほどくと、刑事について歩を進める。

といっても、それは十数歩の距離。

彼らが向かったのは、警察に確保されている事件の当事者の所だった。

目的のその人物は、埠頭に何個か置かれた木箱の上に座り、夜空を見上げながら面倒臭そうに足をバタつかせていたが

接近してきた平田に気付くと、箱から飛び降り、ビシっと平田を指差した。


「あ、あんたは連邦英雄さんアルネ!

あんたみたいな有名人が、なんでこんな所にいるアルか?

それにしても実物は可愛いネー」


そうきゃぴきゃぴと平田に声をかけたのは、若い外国人の女。

それが事件の当事者だった。

アジア系の顔立ちに独特のイントネーション。

そして頭には髪を纏めた二つの団子。

まず、間違いなく中国人だろう。

彼女は、まるでアイドルにでも会ったかのように平田に話かけてくるのだ。

だが、それも其の筈で、一般的の人間は平田の過去の姿知らない。

経歴からして少女の筈は無いのだが、見た目の良い義体外見を十二分に利用して政府がプロパガンダに利用する為

すでに本当の平田の姿は、彼に親しい人間以外から忘れ去られようとしている。

平田の心境は複雑だった。いいオッサンが可愛いと言われても嬉しく無いのである。


「あー…… それはどうも。

ちょっと仕事で港に来てたら、偶然にも現場を目撃しちゃってね。 はぁ……」


そう言って、平田は力なくため息を吐く。

平田がここにいる理由。

それは平田にとっては全くの偶然で、実に不幸な出来事だった。

各国の使節が礼文に集まるこの時期、当然の如く警察の警備体制は強化されている。

不測の事態が起きたら一発で外交問題になるため、平田を含め、多くの警官が市街を巡回し警戒していたのだ。

その日、平田は何時ものように地域を廻り住民と交流を深めていたのだが、ふと耳にしたのはサルカヴェロの使節を載せた珍妙な船が入港しているという情報だった。

そんな特殊な船が入港しているのだ。何か事件が起きては困るし、一度様子を見に行った方が良いかもしれない。

そう思いついてからの平田の行動は速かった。

もっとも、島育ちであるが故に船が好きだった平田が好奇心で見に行こうという気持ちが多分にあった事も原因ではあるのだが。

まぁ、結果的にその決断は半分良くて、半分は失敗だった。

確かにお目当てのサルカヴェロの船は、平田にとって大変興味深いものだった。

黒一色に塗られた装甲艦。

分かる人が見れば、その姿はアメリカ南北戦争にて南軍が使用した装甲船『バージニア』に似ていると言うだろう。

傾斜した装甲、そして煙突から上る石炭の煤煙は、バージニアに非常に酷似していた。

だが、この偽バージニア。全長で本家の倍も有り、防御面に関しては本家を遥かに上回る。

鉄鉱石を北海道に輸出する代わり、バーター取引にて手に入れた特殊鋼を装甲板としてふんだんに使っているのだ。

その防御力は高く、イグニス教諸国が艦船に搭載する魔導バリスタでは撃沈は難しい。

大量の鉄鉱石を輸出する代わり、量こそ少ないものの得られた特殊鋼はサルカヴェロの軍事力の底上げに繋がっている。

この偽バージニアは、北海道とサルカヴェロの交流によって生み出されたと言っても過言でも無い船だった。

平田は、そんな裏事情は知らないものの真っ黒で厳つい船を見て好奇心が満たされたのかご満悦であった。

だが、そんな幸せな時間は直ぐに終わりを告げる。

埠頭からの帰り道、まさに平田の目の前で事件が起きたのだ。

それは、荷降ろし中の船の横を通った時の事。

ヘルメットを被った女に指揮され、船から大陸から来たと思われる木箱が次々に降ろされていく。

別に何の変哲もない木箱。

だが、それも何個目か降ろした時にそれは起きた。

クレーンで埠頭に降ろされた木箱が地面に設置した瞬間。箱からナニカがバッと飛び出したのだ。

奇声を上げるナニカは、荷卸しを指揮していた人物に飛びかかっていく。


『グァァァ!!』


『あいやー!?』


余りに突然の事で、平田は満足に動けなかった。

だが、目を逸らさずにいた事で、襲い掛かったナニカが地面に倒れ伏すまでの一部始終を目撃してしまったのだ。

それが、今回、嫌々ながらも勤務時間を超過し証言に付き合わされている理由であった。



「まぁ、そういう訳で話を聞かせて頂戴ね」


「良いアルよ」


そう言って軽く答える女は、事の顛末をスラスラと話してくれた。

内容は平田が見たのと変わらない。

襲って来た異様な風体の男を投げ飛ばし、取り押さえたという事だ。

新たに分かったと言えば、この女性は王香蘭という中国人で岩見沢精機という会社に勤めているらしい。

今回は会社で作った製品を大陸に輸出する業務に付いていたが、大陸でちょっとしたトラブルがあり、戻って来た所で騒動に巻き込まれたという事だった。


「んで、襲って来たから取り押さえたと……

それにしても、王さん小柄な女性なのに凄いねぇ。相手180近くあったでしょ?」


「中国人なら気功と功夫くらいみんな出来るネ。

それくらい出来ないと毒菜食べたり大気汚染の中で呼吸できないアル。

気の力で毒を無効化するアルよ。

んで、そんな訳で、襲い掛かって来たもんだからちょいと投げ飛ばしただけヨ……

あ、でも死んじゃったのは私のせいじゃないネ。

あんなゾンビみたいなのは元から死んでたネ

だから私、無罪。即釈放アル」


投げ飛ばした男はゾンビであり、そもそもゾンビはバケモノであるから人間じゃない。だから死んでもOK。

なんともトンデモな理屈であったが、平田はその話を否定できない。

何せ死んだその男の見た目は、ゾンビと言っても過言ではなかったのだ。

壊死した肉の隙間から見える白い頭骨。

とてもじゃないが、あれが普通の人間だと言うには無理がある。

そして獣人やらドワーフ等もいるこの世界。バケモノとしてゾンビが居ないと言い切れるのか?

その確証が彼には無かった。


「んんー……

ゾンビねぇ」


「そう、ゾンビね!」


だが、ハッキリ言い切る香蘭とは裏腹に、独特のイントネーションと自信満々な顔にどこか胡散臭さを感じてしまう。

例えるなら、中国の土産物屋で激安のブランドバックを発見した時、店員に「シャチョさん!それは100%本物ネ!」と言われたかのような感じだ。

根拠はないが、どこか信用に置けない。


「まぁ いい、取りあえず話の続きは署でしよう。

いい加減、冬の港にいるのは寒くて敵わん」


平田の言うとおり、風を遮る物の無い冬の港は寒い。

続きは署で聞こうと言う平田の言葉に、香蘭も頷く。

なんだかんだ言ったものの、簡単に解放されるのは無理だと彼女も分かってはいたのだ。


「あ、それならちょっと皆に今後の仕事内容指示してくるから、ちょっと待って欲しいね」


そう言って、香蘭は船で待機している仲間の方へと駆けて行った。

後には平田と部下、そして刑事の3人が残される。


「ゾンビ……ってこの世界にいるのかな?」


船へ駆けてく香蘭の背中を見ながら、平田はポツリと呟く。

どこまでがアリな世界なのか、平田には想像がつかない。

そんな平田の呟きに、部下の警官は首を捻りながら彼の疑問に答えた。


「それは判りませんが、前の世界で似たような症状になる原因は心当たりがありますね」


「え?! 前の世界って…… 転移前からあんな肉の腐ったゾンビになる病気かなんかあったの?」


医療にあまり詳しくない平田は、部下の言葉に驚いた。

自分が知らないだけだったのかとポカーンと口を開けていると、「いや、そうじゃなくて」と前置きして部下の警官は話を続けた。


「病気については良く知りませんが、似た様になる麻薬はありましたよ。

クロコダイルという麻薬を使い続けると同様の症状になりますね」


「クロコダイル?」


平田は首を傾げる。

一応警察に入ってから巷に出回っているシャブの名前や何やらは習ったのだが、クロコダイルなどと言う名称は聞いたことが無かったからだ。


「ロシアや欧州で広まったんですが、ガソリンと咳止め薬から作る麻薬で、恐ろしく安価。

でも、強烈な依存性があり、長期に渡り服用すると肉が壊死して生きながらにして肉が腐っていくという恐ろしい麻薬です」


「これもそのクロコダイルだと?」


「可能性の一つです。

まぁ、本当にゾンビだった可能性もこの世界では否定できませんが……」


断定はできないが麻薬の可能性もある。

しかもその場合、製法は確実に北海道……というか転移前の世界に由来する。

……此方の人間が大陸で不義を働いている可能性。

あまり考えたくない可能性に、平田の眉間に皺が寄った。


「もし仮にその予想が当たっていた場合、道内から輸出していたんだろうか」


「又は、道外に生産拠点を築いたかですね……」


それはあくまで想像の域を出ない仮定の話であったが、

世間の裏で何か組織的な悪意が動いていそうな気配に二人は息を飲んだ。

……そんな時だった。


ガッシャーン!と金属が落下したような音が辺りに響く。

平田は驚いて音のした方向を見ると、どうやら船からクレーンで吊るされていた荷物が落下したようだ。


「おっと、何だ?次は事故か!?

見に行くぞ!」


平田は次から次に巻き起こる騒動に辟易しながらも、荷物が落下した現場に向かって走り出す。

近くに寄ってみてみると、どうやらクレーンで吊るしていたスリングが外れ、木箱が落下したようだ。

幸い怪我人はなく、物的な損害だけのようだが、壊れた木箱を見て、例の中国娘は「あいやー」と言いながら頬を掻いていた。


「大丈夫?」


心配した顔で平田が香蘭の表情を覗き込む。

そんな平田に対して、香蘭はバツが悪そうに苦笑いを浮かべていた。


「あいやー嫌なとこ見られたアルね。

ちょっとした事故アル。気にしないで。

作業員はちゃんと玉掛けの免許持ってるし、無資格で従事してたわけじゃないアルよ?

怪我人も出てないから労働災害でも無いし」


「いや別に、そんな事言うつもりはなかったんだが…… って、箱から何か零れるぞ?」


見れば壊れた木箱からキラキラと真鍮色に輝く何かがポロポロと漏れている。

平田は壊れた箱から漏れたソレを一つ摘むと、マジマジと凝視する。


「……銃弾。

しかも、小銃弾だな。…………密輸か?」


平田が摘んだのは警察などで使う拳銃弾とは明らかに違う、長い薬莢と鋭い先端の弾体をもった小銃弾であった。

そんなものが壊れた木箱からボロボロと零れてくるのである。

平田は、この船が普通の民間の商船では無いとみなすと、ギラリと疑惑の眼差しを香蘭に向ける。

対する香蘭は、密輸という言葉を聞いた途端、オロオロと慌ててそれを否定する。


「み、み、密輸なんてトンデモない!

ちゃんと政府の許可の元に運んでるだけネ!

そんじょそこらのヤクザと違って無許可で運ぶ真似はしないアルよ!?

それにこの船は大陸から戻って来た所ネ。ヤクザなら弾薬なんて持ってこないヨ。

アイツらが持ち込むなら違法風俗用の獣人とかアルね」


ぶんぶんと首を振って否定する香蘭。

だが、平田の追及は止まらない。


「だとしたら、何でこんなモノ礼文に持ってくるんだよ?」


「それは先方にキャンセル喰らったアル。

アーンドラで補給用に売りさばく予定だったけど、情報は予想以上に早かったネ。

停戦交渉が始まった話が広がると、売却先の傭兵団やら騎士団から過剰在庫のキャンセルが来たアル。

でも、あたし等はまだ良心的アルよ?一部の不届き者は、持って帰るの面倒くさがって誰これ構わず叩き売ってたね。

そのせいで盗賊が重武装化してるから、帰ってくるのも大変、大変。

何せサルカヴェロのマスケットや北海道が供与したボルトアクション小銃が、戦場に死体と共にゴロゴロしてるから、戦利品として皆拾って武装してるし

そんな奴らに弾が叩き売られてたから、途中で酷い光景はいっぱい見たよ。

銃で武装した傭兵に下剋上喰らった騎士団で、女騎士が慰み者にされてたりね」


香蘭は「大変だったネー」としみじみ語るが、話を聞いている内に平田の表情は硬くなる。

大陸が酷い有様になっているのも、コイツら武器をばら撒いているのが原因ではないか?

そう思わずには居られなかった。


「おっと、そんな怖い顔しちゃって。

英雄さんの可愛い顔が台無しアルよ」


「いやだって、それって死の商人って奴だろ?

大陸がそんな状態になってたのは、お前らが無節操に武器を売るからだろ?」


平田はそう言って、あからさまに嫌悪の眼差しを香蘭へと向ける。

武器商人……幾ら政府からお墨付きを貰おうと、治安悪化の元凶であることには間違いないと彼は思っていたからだ。


「んー ウチの会社は武器製造がメインなんで、純粋には違うんだけど、そう言われればそうかもしれないアル。

でも、ぶっちゃけ現地販売は上手くいかなかったヨ。

でっかい騎士団とか大口の販売先には先行のライバル社が大陸で幅を利かせてるし、小口は小規模な流通業者が参入し始めてるから

うちの会社は撤退アルよ。これからは製造一本に事業を絞るって社長は言ってたネ」


そう言って、もう直接販売は止めると言う香蘭の言に平田は少々表情を緩めた。

何も、もう止めようと言う物にまで厳しく当たるほど平田の度量も狭くはない。


「ん? そうなのか。

君の所の会社は撤退するのか。

それならこれ以上やかましく言うつもりはないんだが……

それにしても、大陸には他にも色々進出してるのか?」


「そうね。

結構色々な商社なり何なりが出て行ってるヨ。

特に最大手は国後の石津製作所アル。

あそこはとても恐ろしい会社ね。

昔、ちょっとだけあそこに勤めてたけど、ほんの少し情報を抜いただけで一度殺されかけたよ」


「石津製作所?

そんな会社があるのか?」


聞いたことのない社名に平田は首を傾げる。


「そうね。

武器製造だけじゃなく、民間軍事会社としてもやってるよ。

民生品は作ってないから一般の知名度は低いけど、大陸じゃ下手に揉めたら大火傷するって有名アル。

まぁ、そんな怖い会社だから悪い事も沢山やってる筈ネ。

証拠はないけど、大陸じゃ盗賊すらビビって逃げる相手だから巨大な悪と見て間違いないネ。

そんな訳で、警察さんは速くあの会社を手入れするといいね。

副社長のロシア人の女は特に恐ろしいので、捕まえて塀の中に隔離すると良いアルよ」


「そんな悪い連中なのか?」


多分に一方的な主観が多い香蘭の評価。

平田もさすがに怪しみ香蘭に聞き返すが、そんな平田の問いに対して香蘭は大きく頷いて断言した。


「絶対間違いないある。

殺し、盗みにヤクまで何でもアリあるよ! ……多分」


一々断言するものの、香蘭の説明はどうにも言葉の端々が信用できない。


「まぁ、彼女の言葉が何処まで本当かは別として…… ヤクか」


平田は顎に手を当て思案する。


「どうしました警部?」


「いや、昔見た映画で武器商人がコカインで決済してるシーンを思い出してな。

そんな悪い奴らなら、金の為に麻薬をばら撒くくらいしかねないのかなぁ……と思って」


「警部、それは余りに偏見が過ぎると言うか……」


「あぁ ごめん。

でも、最近、道内でも無責任に銃を売る奴が多くて困っててね。

政府が規制を緩めたとはいえ、道内に自衛用で猟銃を多量にばら撒いたのが原因で、警察の重武装化に歯止めがかからないのは知ってるだろ。

最初は対害獣用だったとしても、一人の犯罪者が銃を持つと護身用で一般にもあっという間に広がったし……

昔の礼文は警棒すら要らないんじゃないかって位平和だったのに、今じゃSAT顔負けの部隊も出来たもんだ。

地元が発展するのは嬉しいんだが、それに引き替え加速度的に犯罪が凶悪化するのは見るに堪えないんだよ」


「お気持ちは分かりますが、偏見に拘り過ぎると真実を見失います。

冷静にいきましょう」


「……わかったよ。

でも、なかなか貴重な話が得られたな。

石津製作所…… マークしてみるか」


香蘭の言葉を鵜呑みにすることは出来ないが、石津製作所とやらには何かがあるかもしれない。

礼文の治安を守る為、平田は出来うる限りで探ってみるかと決めたのであった。

嫁がシベリアに里帰りしたので

執筆時間が増えました。

これから1か月半くらいは更新頻度が上がりそうです。

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