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試される大地  作者: 石達
第1章 邂逅期
42/88

帝都大脱走1

最近、地図を作ってなかったので

サルカヴェロの地図を作りました。

挿絵(By みてみん)

サルカヴェロ帝国

帝都ティフリス


夜も更け、宵闇に包まれた帝都の中で、王城から少々離れたナリカラ要塞。

帝国の拡大に伴い、要塞はその目的を本来の軍事拠点から監獄へと性質を変えていた。

元々外敵の侵入を防ぐために建設された10mを超える防壁は、今では中から出ようとするものを拒む壁として機能している。

そんな要塞内に立ち並ぶかつては兵舎として利用されていた建物の一つ。

今では牢獄用に改装されたズラリと鉄格子が並ぶ建物の中で、拓也は絶望の淵に立たされていた。


「なんだい?何か策があるんじゃなかったのかい?」


「ぐぬぬ……」


うす暗い牢屋の中。

うず高く積まれた毛布の上から見下しつつ、悔しがっている拓也にニヤニヤといやらしい視線を送るニノ。

逃げるんじゃなかったのか?と彼女は皮肉った口調で拓也に尋ねる。

あまりに馬鹿にした態度での口調であったが、そんな彼女の言葉に対して拓也は押し黙るより他に無かった。

何故かと言えば、逃走を決意して以降、牢獄にぶち込まれる間にイワンとの接触を試みてみた。

だが、不運にもそんな機会は一切なく、何も出来ぬまま鉄格子の中へと押し込まれてしまったのだ。

拓也はニノの物言いに対して何も反論できずにいるが、それだけが何も言えない理由ではなかった。

大部屋の牢獄で一人一枚割り当てられた毛布だが、それを集め、高く積み重ねた上に座っているニノ。

それが、この牢獄の中での地位をそのまま表していた。



4人が押し込められた牢獄は、人殺しや盗人等、様々な犯罪者が押し込められた大部屋だった。

中の種族構成は、亜人やら人族などサルカヴェロの被征服民が大半を占めている。

(後に拓也達が聞いたところによると、サルカヴェロの共産主義政策に馴染めなかった者達が、犯罪に走って捕まったケースが多いそうだ)

そんな大勢の犯罪者が集まれば当然生まれるのが、力を基準とした上下関係。

力で相手を捻じ伏せ、牢の中で一番強い者が牢名主として鉄格子の中で一番の地位を得る。

一度そのヒエラルヒーが完成すると牢名主はその体制を維持するために尽力した。

その最もたるものが、新入りに序列を体で染み付かせる為に、歓迎会と称して序列を受け入れるまでボッコボコにするのだそうだ。

そして、それは拓也達にとても例外ではない。

入牢早々、高く積まれた毛布に座っていた人狐の男……と言うよりは二足歩行のごんぎつねは尊大な態度で4人に命令を下した。


「おい、新入い。

入牢の記念ござんで。はよたもれ」


その言葉と共に、手下が差し出したのは、並々と汚物の入った碗であった。

当初の彼らの思惑は、ここで新入りを激高させて力でねじ伏せ、無理やり汚物を喰わせることでプライドを粉々に砕くことが目的だったのだろう。

普通の犯罪者ならばそれで事足りた。

だが、彼らにとって誤算だったのは、この新入りが盗賊の頭であるニノ達を含んでいた事だった。


「ふぅ~ん。

なかなか美味そうだね。

でも、生憎あたいはお腹が一杯でさぁ。

代わりにあんた等がぁ…… 食・っ・て・く・れ!!」


その言葉と共に出された碗を手下の男の顔に叩きつけ、その勢のまま男は狐の男の方まで吹っ飛ばされる。

狐の男は飛んできた男を難なく躱したが、吹っ飛ばされた男は石壁に叩きつけられるとそのままグッタリと動かなくなった。

狐の男は、動かなくなった男を呆然と見ていたが、ふと正気に戻ったのか、次の瞬間、ニノの方を睨みつけ怒声を上げた。


「くっ!

こんだらぁ!!」


その声と共に、牢屋内にいる2、30は居ると思われる手下たちがニノに飛びかかり、一台乱闘が幕を開けた。

殺気を込めてニノに殺到する囚人たち。

だが、対するニノは、その横を風の様にすり抜け、他に脇目も振らずに狐の男を目指す。

そして、その背中を守る様にタマリが手下達を相手取り、一人、また一人とぶちのめしていく。

襲い掛かる人の波。

その中の多数を占める亜人達は、何かしらの魔法によって身体能力を強化したりしているのであるが

それを持ってしてもニノとタマリは強かった。

盗賊の頭を務めていたニノと彼女に鍛えられたタマリ。そして何よりハイエナ族特有のタフネスが彼女らを支える。

一発二発もらっても、鼻血を流す程度で全く倒れず、持ち前の腕力でもって飛びかかる相手を殴り伏せていく。

そうして、タマリが手下全員を殴り伏せたあたりで、ニノの方も決着がついたようだ。

積み重ねられた毛布の上でふんぞり返っていたごんぎつねは、いまでは鞣された毛皮の様になっている。

ニノは、狐の男を引きづりながら彼の定位置だった毛布の上に座ると、全員に向かって高らかに宣言した。


「今日からあたいが新しい牢名主だ!

野郎ども、肝に銘じるんだよ!!」


高らかに宣言するニノと、ノリノリで「おぉー!!」とそれに応えるタマリ。

あまりに急な展開に、流れに乗り遅れてしまった拓也とアコニー。

彼等は、呆然と彼女らの姿を見つめる事しかできなかった。






そんなこんなもあり、拓也の目の前でふんぞり返っているニノは、牢屋の中では絶大な権力を得ていた。


「んん~? 何か言いたい事でもあるのかい?」


この後どうするつもりだ?とニノは拓也に問いかける。

一応、未だに彼女らが身に着けているエ○キバンが魔導具だと信じている事もあって直接的な手出しはしてこない。

だが、その態度は、明らかに優越感に浸っていた。


「……とりあえず、部下が追跡してきている事は間違いない。

時機を見て逃げ出すさ」


アコニーが感じ取った匂いからして、追ってきているのは間違いない。

後はいかに接触して脱走の算段を考えるわけだが、まず最初の前提が成り立っていない。

並行して独力での脱走も考えてみたが、流石は監獄。

内側から独力で脱走など、あまりの堅牢な作りの建物相手には、少し考えただけではアイデアさえも出てこなかった。


「まぁいい。

あんたらが何か考えだすまで、あたいらはゆっくり待たせてもらうよ」


そう言って、ニノは毛布の上でふんぞり返る。

牢名主に就任以降、彼女は牢屋内にも拘らず、快適な環境を整えていた。

自分でぶちのめした狐の男は、毛皮がもふもふだった為に、専用クッションとして使用し、牢屋内の比較的外見の整った囚人を男女問わず侍らせてハーレムを形成している。


「なんだか腹が減ってきたね。

飯はまだかい?」


「ヘイ。

そろそろ時間の筈です」


ニノの言葉に新たな手下となった囚人が答える。

どうやらココの食事は、一日一回のパンとスープが有るらしい。

囚人はそうニノに説明すると、ニノの顔に笑みが浮かぶ。


「へぇ、監獄っていうからには、食事なんて3日に一度くらいカビの生えたパンでもばら撒かれると思ったけど、ここじゃぁスープまで付くのかい。

サルカヴェロの牢獄ってのは案外悪くないかもしれないねぇ。

これがゴートルムなら、腐った芋が出て終わりだよ」


「まぁ ここは死刑囚ばかりですからね。

普通の労働教化刑の奴らは属州の開拓地でパンだけの毎日ですが、ここの牢獄は教会の寄付と人生の最後くらい暖かい物を喰わせてやろうと言う温情でスープが付くんでやんすよ。

もっとも、その程度で悔い改めてるような人間なら、初めから悪行には手を染めないんでやんすがね……って、飯が来たようでやんす」


その囚人の言葉通り、看守室兼この牢獄の唯一の出入り口である扉から、ガチャリと鍵を開錠した音が聞こえる。

食事以外何もすることが無い囚人の腹時計は、思った以上に正確なようだ。

ギィ……っと扉が開け開かれると、空腹を刺激する匂いと共に台車を押した痩せた男と表情が見えないくらい帽子を深々と被った少年が入ってきた。

格好から察するに、彼らはこの要塞の看守連中ではなく、出入りの業者のようだ。

既に食事が来た事に気づいた他の牢に入れられている囚人達が、「めし寄越せぇ!」と鉄格子から腕を伸ばしながらあたかもゾンビのように騒いでいる。

そんな囚人共に脇目も触れず、業者の二人組みはガラガラと台車を押して大部屋の方へと通路を進んでくる。

どうやら食事の配給は、人数の一番多いこの牢から行われるようだった。


「よし、飯も来た事だし、野郎共が新牢名主様に忠誠を誓えるかどうか試してやる。

全員。あたいの足に口付けしな。

そうすれば飯を食わせてやる。

しない奴には飯は分けないからね」


そう言ってニノはニヤニヤしながら拓也達を見る。

牢の中で実権を握ったことにより、拓也達に嫌がらせをしてるのだ。

ニノ達が未だ魔導具だと信じているエレ○バンを作動させるぞと脅せば、最終的には食料を渡すだろうが

彼女らの態度を見る限り、ちょっと脅した程度では素直に渡しそうな気がしない。

まるで玩具で遊ぶように楽しそうな表情を浮かべるニノと、苛立ちを隠せない拓也。

そんな二人が睨み合いを続けていると、思わぬ方向から声がかかった。


「なかなか楽しそうだね。かーちゃん」


その声にハッとして二人は、声のした方向に振り返る。

鉄格子の向こう、先ほどまで台車を後ろから押していた業者の少年が笑いながら此方を向いている。


「その声は…… イラクリ!」


ニノの言葉を受け、少年は深めに被っていた帽子を脱ぎ捨てた。


「じゃじゃーん。 助けに来たよ」


えへん!と胸を張るイラクリ。

そんな自分達を助けるためにここまで忍び込んできた我が子を見て、ニノは鉄格子越しに腕を伸ばしてその頭をわしゃわしゃと撫でる。


「でかしたよ!流石はあたいの子!

……で、このおっさんはなんだい?」


ニノは心行くまでイラクリを撫でた後、その視線をイラクリと一緒に入ってきた男へと向ける。

一見して、くたびれた感じの雰囲気が混ざった人族の男。

男は、ニノの鋭い視線で睨まれたことの恐怖からか、何も言えずにおずおずと黙っている。

見た目からしてヤクザ者ではない。

そこらへんを歩いている普通のおっさんを捕まえてきたような風体だ。


「あぁ、このおっさんは、ここに忍び込むために利用させてもらったんだ。

ここって、囚人の飯を近くの飯屋から仕入れているらしくてね。

店の手伝いをしてるおっさんの息子と入れ替わったんだよ。

背格好は良く似てたし、家族を人質に頼み込んだら一発でOKだったね」


イラクリは「へへーん」とまるでお使いを正しく出来た子供のように自慢する。

そして、皆に協力している理由を説明されてたおっさんは、泣きそうな顔でニノ達に懇願した。


「た、頼むから家族にだけは手をださんでくれ」


「それは、おっさんの働き次第だね」


「そ、そんな……」


ちゃんと協力しなければ家族の安全は保障しない。

冷たく言い放つイラクリであったが、彼のあまりの非道っぷりに、横から聞いていた拓也は色々と心に引っかかるものを感じる。


「無関係の奴の家族を人質って……、いくらなんでもやり過ぎだろう」


無関係な堅気の人間を脅迫する真似に拓也には抵抗があった。

最近は色々と荒事を見るのにも慣れてきたが、日本人である拓也の感性が人質をとって無関係の民間人を脅すと言う行為に拒否反応を示しているのだ。

だが、そんな拓也を見て、ニノは青臭いと言わんばかりにニヤニヤと笑う。


「ふふん。 じゃぁ あたい等だけオサラバするから、あんた等はココに残りな。

別の機会を待つんだね」


ニノはそう言って、不服があるなら付いてくるなと言うが、拓也としてもチャンスがある以上、乗らないわけには行かない。

脱出のチャンスは目前にあり、それを活用しなければ待っているのは死だけ。

そして、その不服と言うのは感情的な問題だけとなれば、あとは我慢の問題だった。


「おっさん。

巻き込んで悪いね。

後で謝礼はたんまり払うから、少しの間だけ協力してくれ。

生憎、今は持ち合わせが無いが、後日きっちりと届けさせるよ」


脱出に男の協力が必要なのは間違いない。

ならばと、拓也は少しでも報いようと男にそう話しかける。

だが、そういった拓也の態度が気に入らないのか、ニノは眉を顰めて拓也を睨んだ。


「ふん。無駄な事をする奴だね。

いいよ。イラクリ。

こんな奴等、置いてっちまおう」


面倒くさいのは置いて自分達だけで脱出しようとニノは言う。

だが、そんな彼女の言葉に対してイラクリは顔を横に振ると、台車に乗せた籠の底を漁って取り出したモノを拓也に差し出した。


「かーちゃん。残念ながらそういう訳にもいかないんだ。

はいコレ。外で待ってるイワンさんから」


そう言って、イラクリが拓也に差し出したのは、携帯無線機と無骨なロシア製拳銃であった。


「おぉ! 無線機に銃まで!

ありがう。イラクリ!」


拓也は喜んでそれを受け取ると、喜びながら電源を入れコールする。


「イワン。聞こえる?」


『はい。聞こえますよ。感度良好』


ずっと無線に耳を傾けながら待機していたのであろう。

拓也が無線で呼びかけると、すぐさまイワンの返事が返ってきた。


「脱出の手筈はどうなってる?」


『こちらからは内部の構造が詳しく分からないので何とも……

とりあえず、そこにいる男から外からの経路は聞き出しましたが全体構造は不明点が多いです。

まぁ、牢屋から出さえすれば、最悪、通用口を爆破するので、そこから脱出してもらう事になります』


「了解。

手順はこっちでも検討するけど、奥の手は何時でも使える様に準備しておいてね。

それと、こちらの状況を国後のエレナたちに連絡しておいて欲しい。

脱獄してもそこから北海道まで戻るための足が居るしさ。

必要ならペナルティ覚悟で政府に泣きつくのも仕方ない。

ここままじゃ遠からず処刑されそうなんでね」


『了解。

ですが、イラクリを潜入させる前にエドワルド大尉に連絡を取った所、釈放のための書状を送ってもらったそうなのです。

もし、その話が本当なら釈放されるのを待ったほうがスムーズかと思われますが……』


「え?

こっちは全くそんな気配は無いよ?

凶悪犯の溢れかえる牢屋にぶち込まれるとか、酷い扱いだし」


イワンの言葉を聞いて、拓也は驚いた。

釈放の手続きが進んでいると言うのだ。

だが、暗い牢の中に居たのでは、外界のことはサッパリ分からない。

少なくとも、現状で拓也達の扱いに関して変化と言うものは一切無いことは確かだった。


『そうですか。

こちらもおかしいと思ったんです。

大尉の話では、輸送隊の移動中に書状が届くような話でしたが、我々の監視中に伝令と接触する事はありませんでした。

もしかしたら、書状の輸送中に何らかのトラブルがあったのかもしれません』


「……もしそれが本当なら、待ってた所で無駄になることもあるわけか。

うん。やっぱり処刑される可能性が高い以上、脱獄をメインで考えよう。

なんらかのトラブルがおきてるモノに命を賭けるほど肝っ玉が大きくないからね」


『了解。

では、こちらも準備にとりかかります』


さて、どうするか。

通信を終えた拓也は、どうやって脱出するかを考える為、皆に話を振る。


「さて、こういう訳だけど、これからどうしようか?」


とりあえず、自信の無い時は皆に話を振り、良さそうなアイデアを採用しよう。

拓也はそう考えて拓也は皆の顔色を伺うが、それに対する回答は些か拓也の予想外の物だった。


「どうもこうも、あんたが一応主導権を握ってるんだから、あんたが決めれば良いだろ。

こちらと、捕まってからずっとあんたと一緒だったんだ。

あんたの持っている情報以上に判断材料はないよ」


皆の意見を尊重しようとする拓也に対し、何かが気に障ったのかニノの言葉は冷たい。


「どうにもあんたの態度は気に入らないね。

あたいらに話を振る前に、あんたは自分の頭で情報を整理してみたのかい?

いきなりこちらに話を振らないで、頭ならもっとシャキっと自分で決めてみな。

それでおかしなところがあれば他の人間が意見を言うよ」


「う……」


彼女の言葉から察するに、盗賊の頭として手下を率いていたニノにとって、拓也のやり方は気に入らないようだ。

リーダーなら、もっとワンマンになってもっと皆を率いていくべき。

そういった彼女の美学に照らし合わせた場合、自分で考えるより先に他人の意見をあてにした拓也の行動は論外と言えるものであった。

あくまで基準はニノの哲学であったが、彼女の言葉に対し、当の拓也は何も言い返せない。

特に戦闘能力があるわけでもなく、特殊な能力があるわけでもない拓也は今までは皆の意見を参考にして決定を下してきた。

言うなれば、ただの調整役であって有事の際は存在感が空気と化している。

彼女のいう事にも一理ある。

拓也はここらで自分も変わらなければならないと感じ、まずは自分で一通りのプランを考えることにした。


「わかった。

方針は自分が決める。

だが、その前に情報を纏めようか。

イラクリ?君だっけ。

ここまで来る間の内部構造はどうだった?」


「内部構造はほ鉄壁だね。城壁が高すぎて門以外の出入り口は無し。

それに、城壁の外は水堀になってたけど、防犯の為にワニが居たよ。

それも、口の大きさが大人の身長くらいある奴が」


そう言って、イラクリは「こーんなの」と腕を開いてワニの口を表現する。


「なにそのイリエワニみたいなのは……」


イラクリの説明が真実ならば、恐竜みたいなワニがいる堀は、落ちたら即死の罠である。

そうなると、脱獄はどうにかして門を通らなければならないのが不可避となる。


「そのイリエワニってのはよく知らないけど、そんな訳で警備も脱獄は不可能と見て、外から入る分にはチェックが甘いよ。

二重底になってるバスケットに気が付かないくらいだし。

でも、その分どうやって出るかが問題なんだけど……」


イラクリはそう言って銃器を持ち込んだ台車に積まれたバスケットを指差す。

彼の言い分では外から入るのは易いが、外に出る時のチェックは特に甘くは無いらしい。

十二分な準備の無い状況で、コソコソと隠れて脱獄するのは不可能であった。


「そんな訳で、今回はイワンさんが言ったとおり通用口を破壊する手で行くよ。

あの人の見立てでは通用口は手持ちの道具で破壊できそうって言ってたし。

サルカヴェロの奴等も、出入りの人や資材に紛れて脱獄するのを警戒していたけど、まさか扉を吹き飛ばされるとは思っても見ないはずだよ。」


門から堂々と大脱獄。

色々と大騒ぎになりそうな気もするが、最初の混乱さえ乗り切り迎えに来た仲間と合流できれば

あとは北海道に逃げるだけ。

サルカヴェロ国外に高飛びすれば、もう拘束される心配は無い。


「じゃぁ 問題はここから通用口までだな」


外への門まで到達すれば、イワンが爆破なり何なりで開けてくれるのだろう。

ならば、問題はそこに到達するまで……

拓也は限られた今の手持ちの材料で、脱獄の計画を練り始めるのであった。


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