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試される大地  作者: 石達
第1章 邂逅期
38/88

東方世界7

ここで時間は少々戻る。


拓也がサルカヴェロに捕まった翌日。

バトゥーミの港には、大勢の人だかりが出来ていた。

一列に並ぶサルカヴェロ兵を囲うように集まる野次馬の群れ。

それらがバトゥーミの港の中でも一番水深の深い埠頭に集まっていた。

中心に立つのは巨人族の司令官とエドワルド。

そして、彼らの目の前に入港してきた船こそが、ツィリコ大佐とエレナ達の乗る船であった。

木造船ばかりの港内で一隻だけ異色な鋼鉄の船。

元々は中古の内航船であったそれは、ここでは堂々たる威風を放っている。

観衆は始めて見るタイプの船にざわめき、接弦した船に対して帆がないだの魔法の船だの騒ぎ立てている。

そんな船から先頭を切って降りてきたツィリコ大佐は、当然の如く注目の視線を一身に受けていた。


「北海道連邦軍 ウラジミール・ツィリコ大佐です。この度は歓迎ありがとうございます」


上陸して早々、先に口を開いたのはツィリコ大佐であった。

名前を名乗りながら、胸を張って右手を差し出すツィリコ大佐。

それに対して巨人族の司令官は、異文化の挨拶に戸惑いつつも彼の右手を握り返す。


「サルカヴェロ帝国 第五軍司令官 エルダリ・サーカシヴィリ。

貴国との邂逅を嬉しく思う。願わくば多くの益あらんことを」


エルダリ司令は傍目には堂々としていたが、ツィリコ大佐とその搭乗船を見て固唾をのんだ。

そもそも、急にメッセンジャーとして現れたエドワルドの言葉に半信半疑だった上、一応彼の言うことが本当だった場合に備えて出迎えの準備をしてみたが

所詮は、北海道なんて名前の知らない国。

おそらくどこかの小国が粗末な小船にでも乗ってくるのだろうと思っていた。

だが、そんなエルダリ司令の想像は、真っ向から裏切られることになった。

予定の時刻になってバトゥーミに入港してきたのは、見たことも無い船だった。

小声で横に立つエドワルドに聞いてみれば、鋼鉄で作られた船だそうだ。

そんな、帆も無く、動力は不明であるが低い唸り声のような音を響かせて接岸してきたその船を見て、司令の表情から侮りの色は消えた。

動力は不明であるが、鋼鉄船など本国ですら研究段階で実用化していない。

対魔術諸国用に作られた木造船に鉄の装甲を付けた装甲船が、1隻か2隻進水しているだけのはずだ。

それだけで、この名も知らぬ国が進んだ技術を持っていることは明らかだった。

それに、その船から下りてきた代表だと思われる人物の立ち振る舞いも、堂々としている。

自国に並々ならぬ自信がある証拠だろう。

エルダリ司令は一目見た情報からそう己の認識を改め、こちらも帝国の威厳を示そうと襟を正す。

この接触が後に如何転ぶか分からないが、正確な情報を上に上げる必要がある。

司令はそう心を切り替えると、司令部に向かってツィリコ大佐を案内するのであった。



こうして北海道、サルカヴェロの初の交流は始まった。

後の北海道側の資料によればコレはあくまで偶然の邂逅であり、基本情報交換くらいの接触だったと記録されているのだが

ステパーシンの密命を受けているツィリコは、それに留める気は毛頭ない。

己が使命を全うするために、ツィリコは歴史の裏舞台へと歩みを進めるのであった。

だが、そんなエドワルドの完璧ともいえるお膳立てが気に入らない人物が一人。

その影は、ツィリコに続いて船を降り、足早にエドワルドに近づくと、殺気を込めた目で彼を睨む。


「拓也はドコ?」


エレナは小声で一言そう言うと、コートの内側から硬質な何かをエドワルドに押し付ける。


カチリ……


コートの内側から聞こえるその音が、その物体が何かを明確に物語る。

それは、エレナがエドワルドに押し付けた銃の安全装置が外される音だった。


「……それについては後で詳しく説明する。

現状は無線で説明した時から変わらずだ。

拓也、アコニー、カノエはサルカヴェロ軍に捕まり、夜の内にどこかへ移送された。

今は追跡班を差し向けているが、未だ連絡は無い」


拓也が捕まって以降、エドワルドも黙っていた訳ではない。

可能な限り手は尽くしていた。

最初は警備の隙を見て秘かに奪還を考えていたが、準備も整わないうちに拓也らが移送されるのは想定外であった。

だが、追跡しようにも向こうは馬車で此方は徒歩。

追いかけるのは少々厳しかった。

それに翌日にはツィリコ大佐が来るのである。

拓也の救出とステパーシンの命令。

職務に忠実な彼にとって、残念ながら重要度の高いのは後者であった。

拓也の救出に全力を投入して、ツィリコ大佐の来訪を延期することは出来なかった。

だが、そんな状況にあっても運は彼の味方であった。

夜の闇にまぎれ、襲撃された飯屋からサルカヴェロ兵の目を盗んで這い出てくる小さな影。

それを、偶然にも夜の街を歩きながら対策を考えていたエドワルドの目が捕らえたのだ。

その影の主は、突入したサルカヴェロ兵が強引に開いたドアに挟まれ、その衝撃で落下したタペストリーの下敷きになったことでサルカヴェロ兵に見つからなかったイラクリであった。

彼は母も姉も居ない暗い店内で目を覚ますと、気を失う前の記憶と現在の状況に軽く混乱をきたした。

だが、それでも彼は、叫びたい気持ちを押し殺し、心を落ち着けながらサルカヴェロ兵が警備している飯屋を抜け出してきたのだった。

そして、抜け出してきた彼の姿を見たエドワルドは、一つの手を思いついた。

サルカヴェロに攫われたのは拓也達だけではない。

盗賊の頭目も同じく攫われているのだ。

ならば、彼らの力を利用することによって拓也達の追跡が出来るとエドワルドは考えた。

そうと決めれば彼の行動は早い、あっという間にイラクリを捕まえて路地裏に引き込む。

急に路地裏に引き込まれたことで最初はイラクリも抵抗したが、エドワルドから仲間を救出するために一時手を組もうという提案を聞いて、彼も最終的には同意する。

イラクリの姉と母を思う気持ちは何よりも勝るものだったからだ。

イラクリはエドワルドとその仲間をアジトに連れて行き、そこで盗賊の仲間達にその意向を伝えた。

度重なる戦闘により大きく数を減らし、残っているのは生命力の強いハイエナ族のみとなっていた盗賊団にあって、イラクリはニノの直系。

若くとも序列一位の彼の言うことに盗賊の皆は従った。

イラクリは盗品屋のアッコイから馬を借り、監視・連絡役として無線機を持ったイワンを加えて、追跡班として朝日が昇る前に旅立ったのだった。


その後、エドワルドはツィリコ大佐が来るための準備として、北海道から派遣された使者を名乗りサルカヴェロ軍の仮説司令部に赴いて大佐の来訪予定を伝達した。

かなりの急ぎではあったがツィリコ大佐来訪準備を整え、拓也の追跡班を送り、やるべき事の全てをやった今。

エドワルド達に出来ることは、大佐をエスコートしつつ、追跡班の連絡役として同行しているイワンの連絡を待つだけだった。

だが、そんな事でエレナが納得するなどあるはずが無かった。

なぜならばエドワルドの行動は、全て事が起きた後の対処。

エレナの望むものではない。


「なんでよ……

なんで捕まる前に命がけで助けないのよ。

何の為にあなたがいるのよ。

拓也に万一のことがあったらどうするのよ……」


エレナはエドワルドのわき腹に隠し持った拳銃を突きつけつつ、涙で目を潤ませながら彼に言う。

その言葉を聞いたエドワルドはわなわなと震える銃口をわき腹に感じながら、一呼吸の間をおいてエレナに話す。


「大丈夫だ。

何とかする。

だから、今は泣くな。

これから大事な話し合いの席だ。

ヘタに引っ掻き回せば還ってくるものも還ってこなくなる」


「ううぅ……」


エドワルドの言葉に、エレナは必死に涙を堪えながら銃を収める。

感情的になりつつも、一線を弁えるだけの分別は彼女も持っている。

彼女はそのままエドワルドの傍を離れると、大佐の後を追って歩き出すのであった。




そうして一向は、エルダリ司令に先導される形で司令部にやってきたのだが、本来ならばエルダリ司令にもツィリコ大佐にも正式な外交手続きの権限は無い。

あくまでも両国の基本情報の交換と、暫定的な情報交換窓口を設置して後は本国同士の交渉と言うことで話は纏まった。

それ以上は自分達の職分を越えると言うことで、エルダリ司令は何も取り決めはせず、二人は雑談へと移行していたのだが

ツィリコ大佐としてはコレで終わりと言うわけではなかった。

彼はステパーシンからの密命を帯びている。

エルダリ司令との雑談を楽しんでいるようで、内心は話を切り出す機会を狙っているのだった。


「……それにしても、ココは良い港町ですな。

町並みは美しい上に、外壁として機能している不思議な構造体が、防波堤の役目も果たしている。

わが国からも近いこの港は、この先、貿易で栄えていきそうな気がしますね」


「それはもう。

未だ開発途上ですが、ここは良い街になりますよ」


ツィリコ大佐の言葉に、エルダリ司令は無難な切返しで答えてくるが

その言葉の中に占領したばかりだと言う表現は無い。

サルカヴェロから見て南方であるこの亜人居住地は、現在、軍を進めて平定中であるが

わざわざ自軍の行動計画をさらけ出すことは無い。

むしろ秘匿するべきとして司令は対応していた。

(実際の所は、エドワルドから情報を得ていたツィリコは知っているのであるが)


「出来るなら次回は観光で訪れたいものです。

そして、この街を守る兵達も精強そうですね。

西側では剣と魔術で戦う軍隊は見ましたが、こちらは銃を主体としているようだ」


「ほぅ……

あの武器の事をお知りですか」


ツィリコ大佐の口から出た単語に、エルダリ司令は感心したように反応する。

サルカヴェロの使う銃は帝国の黎明期に実戦投入された。

その後、東方での版図拡大に大々的に使われてはいるが、未だ西方諸国との戦闘は行っていない。

それに彼らは邪教の指導により帝国との交流を止めているため、彼らは銃の真価を知らないはずである。

可能性があるとすれば、密貿易船から情報が渡っているのかも知れないが、何にせよ銃を主兵装とした軍の強さは実際に戦ってみないと分からないであろう。

エルダリ司令は、そんな思いから自国の圧倒的な軍事的優位性を疑わなかった。

だからだろう。

そんな司令にとって、ツィリコ大佐の言葉は意外すぎた。


「銃火器は、我が軍の主兵装ですので。

その有用性や強さについては、転移前の世界で数多の血を以って証明しています」


意外な言葉に眉間に皺を寄せる司令に対し、ツィリコは当然とばかりに微笑んでみせる。

西方の国々と違い、魔術の使えぬ小人族と巨人族。

青髪の後押しがあったとはいえ、科学技術では世界最先端を独走してきた自負はあった。

だが、既に帝国と同じ銃を主兵装にした国が出てきているのであれば、その帝国の軍事的優位も危うい。

エルダリ司令の中では、西方諸国より、今まで名前も知らなかった北海道こそ、真に気をつけるべき存在ではないかと言う思いが芽生え始めはじめていた。


「なるほど、貴国は既に鉄と硝煙の偉大さを知っておいでか。

それならば西方の魔術諸国よりも、貴国の方が我々と話が合いそうだ。

大佐も知ってのとおり銃兵の戦闘力は強大だ。

今までは魔術を武器に大きな顔をしていた西方諸国も、今後は100万の銃兵を抱える強大な帝国を無視できなくなる。

来るべき世界の秩序は、魔術ではなく鉄と火薬の上に築かれるでしょうな。

願わくば、その際に貴国は我々と共にあって貰いたいものだ」


「新しい世界秩序ですか。

我々はこの世界では新参者ですが、出来るならその構築に加わりたいものです。

まぁ こういった話は政府の連中が決めることですがね」


そう言って大佐は、面白い提案だと笑ってみせる。

世界の頂点に君臨しようなどという考えが、司令の妄想かサルカヴェロの大戦略なのかは知らないが

仮に実行されれば大戦争に発展しそうな話である。

このような話に、迂闊に返事などできるはずも無い。

大佐は、それは上が決めることだとして話を打ち切る。

そして、エルダリ司令もそんなツィリコ大佐の内心を察してか、話題を変えることにした。


「まぁ 堅い話はこれくらいにしましょうか。

大佐。どうです?散歩がてら街の様子でも見に行きますか?

我が帝都に比べると数段落ちますが、このバトゥーミも良いものですよ」


「それもいいですね」


大佐は司令の提案に賛同する。

折角訪れた異国の街。

色々と見聞してみたいという気持ちも強かった。

エレナやエドワルドに護衛されながら大佐は、エルダリ司令の後に続く。

それから暫く大通りを中心に歩いてみたが、元の世界の世界遺産の様な古い町並みは、大佐を満足させるものであった。


「なかなか活気のある町だ」


「まぁ それなりの規模がありますからね。

でも、帝国の進んだ技術や、法律、神の教えが広まれば、もっといい都市になりますよ」


「なるほど」


帝国の開発が進んだ都市はここの比ではない。

司令は自慢げに、かつ自国の素晴らしい都市を見せられなくて残念そうに大佐に語る。


「ほら、あそこは今まさに古い建物を改修して教会に作り変えてます。

アレが出来れば、この町の住人も安心して生きていけるでしょうな。

神の教えに接すれば、洗礼から礼拝、葬式まで正しい作法を知ることになるのですから」


そう言って司令の指差すのは兵士達によって改装中の建物であった。

元は何かの集会所であったのであろうか。

もともと中にあった家具類は通りに打ち捨てられ、その代わりに兵士達が作りたての長椅子等を運び込んでいる。


「ほう、私はこの世界の宗教には詳しくありませんが、どこの世界でも同じように洗礼なり何なりの儀式があるのですか。

後学のために、概要だけでも聞きたいものです。

確か、この世界の教会と言うのはイグニス教でしたかな?」


大佐は、こめかみに指を当てて、以前読んだ資料の内容を思い出す。

たしか、この世界で主に信仰されているのは、イグニス教だったはず。

そう思って大佐は口にしてみるが、その名前を聞いた途端、エルダリ司令の表情は怪訝なものへと変わった。


「イグニス?

それは西方の邪教の名前です。

そうですね…… 今はまだ改装中ですが、既に兵士のために聖像は安置されていたはずですから見に行きましょう」


そんな宗教と一緒にするなと言って、司令は大佐を引き連れて改装中の扉をくぐる。

左右に並ぶ長椅子の列に、最奥に鎮座するひな壇。

それを見て、どこの世界も教会の配置は似たようなものかと大佐が思っていると。

ひな壇の更に奥、聖像が鎮座している場所で、大佐は信じられない物を見ることになった。


「!?」


大佐は驚愕する。

これは何の冗談かと。

目を擦り、これは錯覚で無いかと何度も確かめ

その細部を観察すればするほどに、大佐の想像は確信に変わった。


「あれは、ハリストス…… いや、まさか……」


教会の奥。

聖像として鎮座しているのは、どこからどう見てもハリストス……ローマ教会風に言えばキリストの彫像であった。

あまりに予想外な出来事に大佐が言葉を失っていると、先導していた司令が、意外そうに大佐に聞く。。


「む?

神の子の名前を知っておいでで?

その通り、我らが教会は、神と精霊と神の子ハリストスの三位一体を崇める教えです。

正式にはサカルトヴェロ使徒伝道正教会といいますが」


「せ、正教会!?

それにサカルトヴェロですか……」


ツィリコ大佐はその言葉に聞き覚えがあった。

それは大佐がまだ本国の一部隊の指揮官に過ぎなかった頃、初の実戦として派遣された南オセチア。

そこで戦火を交えたグルジア人達は、自分の国の事をグルジア語でサカルトヴェロと言っていたはずだ。

当時は記憶の片隅に止めていた事柄であったが、それでも自分の初陣で覚えたことは、今でも昨日の事のように思い出せる。

ツィリコ大佐はこんな偶然がある物なのかと思いつつも、早計は禁物だと司令の話に耳を傾ける。


「サカルトヴェロと言うのは、古代に巨人族と小人族に共通の文化を授けたと言われる古の国の名前です。

聖書によると何百年も前に異界からこの世界に流れ着いたものの、適応できず直ぐに滅びたという事ですが、彼らの伝えた文化・宗教が、現在の帝国の土台となっていることに変わりはありません。

同じ文化・宗教でもなければ、小人族と巨人族がここまで手を取り合えなかったでしょうからな。

現在のサルカヴェロという国名は、それを捩ったものなのですよ」


「異界から流れ着いた!?

それは転移したという事ですか?

それも我々がこの世界に来る何百年も前に?」


司令の説明に大佐は衝撃を隠せない。

だが、そんな大佐の様子を見ても、全ては聖書に書かれていることだとして、淡々と話を続けた。


「我々の聖書によるとそうなってます。

それより、あなた方もと言っておりましたが、それはどういう意味です?」


エルダリ司令はツィリコ大佐の予想外な反応に、その理由を問うた。

だが、ツィリコ大佐はすぐにはエルダリ指令の問いには答えない。

その代わり、胸元に手を入れると、銀色の鎖を引っ張って目当ての物を引き出した。


「!?

そ、それはハリストスの聖像……」


ツィリコ大佐が取り出したのは、十字架とキリストを模ったネックレス。

それを見て、エルダリ指令は目を見張る。


「このネックレスは、ロシア正教の信徒として常に身に着けている物です。

これはあくまで私の想像ですが、あなた方の言う古の国は、私たちの世界から転移してきたのではないですか?

サカルトヴェロと呼ばれる正教会の国…… 私たちの世界ではグルジアとも呼ばれ、我々の転移の時にはまだ地球上にありましたが……

しかして、これが偶然の一致とは思えない。

そして、グルジア正教と我々のロシア正教の根は共に同じ。

両方ともコンスタンティノープル総主教座から独立教会と承認された正教会の一員です」


「……ということは、貴方たちの国も正教会の国なのですか?

西方の邪教ではなく、我々と同じ神を信じていると?」


「いや、国自体は正教会ではありません。

国の中では信教の自由が保障されている。

他の宗教も同時に存在しているし、そもそも正教会の信者数は多数派ではない」


「なるほど…… それはいささか残念な事ですな。

信仰が自由と言うのは良いが、神の教えが国全体に広まっていないのですか……」


「そこは仕方ない事です。

我々のいた世界では、信教の自由は一般的なものになっていましたから。

ですが、国家規模の宗教的な繋がりはなくとも、正教会の信徒同士の交流を持つことは有益でしょう。

むしろ、貴国との交流を持つ場合には、国としての正規ルートとは別に、正教会を窓口にしていただくと我々としても都合がいい」


「それは……

そうですな。同じ信徒として手を取るのは自然な事。

それは、上の方にもそう報告しておきましょう」


異界で出会った二つの正教会。

ツィリコはこの出会いを神に感謝したのだった。



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