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試される大地  作者: 石達
第1章 邂逅期
36/88

東方世界5

種族名が書いてて分かりにくいので変更しました。

マイクーン→小人族

ゼラーディ→巨人族

拓也達が捕らわれたのとほぼ同時刻。

拓也達から少々離れた廃屋の屋上にエドワルド達は居た。


「社長達が囲まれました。

ど、どうしましょう?」


ロシア製の狙撃銃であるドラグノフのスコープ越しに拓也達が捕らわれるのを見て、明らかに動揺した声色でラッツはエドワルドに尋ねる。

日々の厳しい訓練によって戦闘技能だけは海綿のように吸収した彼であったが、いかんせん経験が浅い。

突発的な緊急事態に対し、平常心を保つのは未だ無理であった。


「あー あれは駄目だな。

下手に動くと捕まった奴らが逆にヤバイ。

ありゃ昼間見たサルカヴェロの正規兵だろ。

あんだけの火器を持った兵に囲まれてたら分が悪すぎる。

今出て行くよりも、隙を見て救出の機会を待つべきだな」


「えぇ!?

それじゃ社長達にもしものことがあったらどうするんです?」


「その時は、拓也の嫁かステパーシンの息子が会社を切り盛りすればいい。

我々の組織としては、さほどの違いはない」


「そんな……」


あまりにもドライなエドワルドの言葉に、愕然とするラッツ。

エドワルドは所詮外部から監視のために派遣されてきた雇われの身。

正社員であるラッツとは違うのだ。

ラッツはエドワルドの言葉に互いの立ち位置が異なる事を再認識し、ここでエドワルドが動かないのであれば自分たちだけで何とか出来ないかと思考を巡らせる。

だが、そんな彼の思考もエドワルドにとっては御見通しだったらしく、彼は射撃姿勢で寝そべるラッツの頭を軽くたたき、言葉を続けた。


「まぁ それは最悪の時だ。

取りあえず救出のプランを立てるぞ。

さすがに100人近い銃兵に10名弱で突っ込んだら、少なくない犠牲が出る。

奴らの動きを見ただろ?

まるで、特殊部隊か何かの様な突入から、目標拘束までの迅速さ。

武器がマスケットみたいな短銃の癖して、アンバランスな技量だ。

今突入しての奪還は不可能ではないが、お前たちの技量と敵の動きからして損害は不可避。

それも目標の安否も含めての話だ。

上はどう思っているかは知らんが、俺は拓也達や折角育てた後進共を無駄に失いたくないのでな。

見捨てることはしないが、拓也には少しの間は我慢してもらおう」


「エドワルドさん……」


「それに、もし勝手に突撃して拓也に何かあった場合、お前は奴の嫁に殺されるぞ?

あのおっかない奴の嫁は、明日の昼にはツィリコ大佐を連れてこちらに着くんだからな」


エドワルドは冗談めかして彼に言うが、ラッツはエドワルドの話を聞いて思わず身震いする。

拓也の嫁にして、警備事業部の部長でもあるエレナ。

彼女とは事業部立ち上げの際に一緒に訓練をしていたが、なんというべきか、天性の才というものをラッツは感じていた。

ロシアでの大学時代に軍事教練を受けただけとは思えぬ動きに、魔法があり身体能力で勝っているはずの亜人達が翻弄されることも多々あった。

そして、感情的になったら止まらない傾向にある彼女が本気で怒った時……

もし、その原因が自分だったら……

まず間違いなく、ラッツは一人の社員からその日のスープの具材へと変貌しているだろう。


「……分かりました。

皆には機を見て救出すると伝えましょう。

今は、社長達に耐えてもらうしかないですね」


そう言うとラッツは再びスコープを除く。

そこには縛られて連行される拓也達の姿があった。

そんな姿を見て、今彼に出来る事は彼らの無事を祈る事だけであった。









飯屋での捕り物から二時間後


サルカヴェロ 第五軍 バトゥーミ司令部


サルカヴェロ軍による拓也達の捕縛から程なくして、襲撃の指揮に当たっていた小人族の指揮官は、司令部として接収した建物へと戻ってきていた。

なにせ青髪を捕らえたのである。

帝都の元老院から表彰されそうな功績であった。

彼は意気揚々と司令部へと戻ってくると、待機していた巨人族の司令官に結果を報告し、今後の日程について話始めた。

出来ることならサッサと報告を終えて、青髪捕縛の報告書の作成にかかりたい。

何せ事が事だ。もしかしたら自分の報告書は元老院まで上がるかもしれない。

ならばこそ推敲に推敲を重ねて完璧を期したいし、それに青髪を帝都へ移送しようとなると色々と準備が必要なのだ。

出来るだけ威風堂々と帝都に戻りたい。

自分や部下の装備はきちんと修繕しておきたいと彼は思っていた。

だが、そんな彼の目論見は、巨人の司令官の一言により脆くも崩れ去ることになる。


「じっくり準備したい気持ちは分かるが、時間が無いな。

報告によればサトゥマ人の第二師団の到着は明後日になる」


大きな椅子に腰掛けペンを片手にそう告げる司令官の言葉に、彼の表情が固まる。


「な?!……それは、予定より2日も早い」


「連中は戦がしたくてウズウズしているんだ。

第二師団からの伝令では、バトゥーミが陥落しているようならば、補給物資を準備してほしいと言ってきている。

いくら今回の南方平定が大遠征の為の予行演習だからって、連中、気合の入れ過ぎだな」


司令官は困ったもんだと苦笑いを浮かべるが、小人族の指揮官にしてみたら苦笑いではすまない。

この町を管理する司令官としては、短縮された準備時間で援軍を迎える物資の調達する事に頭を悩ますことになりそうだが

青髪が絡んでくると、事はマズイ事になるのだ。


「まぁ サトゥマ人は生粋の戦闘民族だから戦場を求めるのは仕方が無いでしょう。

帝国は奴らに戦場を用意してやるという条件で併合したんですから、戦が続くうちは好きなようにさせてやればいい。

でも、そうなると青髪の処遇が問題になります。

彼らの文化にはヒエモントリという罪人を使った鍛錬がある。

サトゥマ人に見つかれば、罪人だと言って生き肝を引き抜かれて食われかねんですよ。

出来れば生きたまま帝都に送りたいのですが、そうなると道中で奴らと出会わないように今夜中に送り出した方が良いですね」


「まぁ 余計な問題を回避したいなら、奴等に見せない方が懸命だな」


司令官は小人族の指揮官の言葉に同意する。

サトゥマ人は比較的新しい被征服民である。

そして、彼らはあらゆる意味で帝国内の帝国内の他部族とは価値観が違った。

例えば彼らには娯楽で罪人の生き胆を抜く文化がある。

それに気性も好戦的なため、見つかれば何らかのイザコザが起きることは想像に易かった。

仮に青髪を帝都に移送する前に問題が発生すれば、小人族の指揮官の管理能力が問われることは明らかだった。


「では、今から護送馬車の準備をさせます」


「頼んだよ」


「は!」


子気味良い返事と共に、小人の指揮官は司令部を後にする。

そして、一人残された巨人の司令官は、窓の外に広がる夜のバトゥーミを見ながら、一つ深い溜息を吐く。


「ふぅ…… それにしても、サトゥマ人か」


そう呟く彼の眉間に皺がよる。

恐らく……いや、まず間違いなく青髪以外でも何かしらのトラブルは起きるだろう。

相手は補給の為に何日かバトゥーミに滞在するはずだ。

何も起きないはずがない。


「色々と面倒になりそうだな」


彼は再度大きく溜息を吐くと、これから数日にわたって起きそうな面倒事に頭を悩ますのであった。









一晩明けて、既に拓也やカノエ達は馬車の上だった。

だが、一概に馬車の上と言っても、重要人物であるカノエとオマケである拓也達の扱いには激しい落差があった。

カノエの乗る馬車は、四方を厚板で囲まれた要人護送用と思われる4頭立ての馬車であり、その前後左右をサルカヴェロの騎兵がガッチリと監視している。

そして、その護衛の騎兵達の異質なスタイルは、見るものに大きな威圧感を与えている。

まず、身の丈3mはある巨人族の馬は、騎乗する種族に合わせて巨大な動物だった。

拓也は大陸に渡って以降、この世界では巨大な鳥に乗ったりとウマ科の動物以外も騎乗動物に使われているのを幾度も見てきたが、騎兵として彼らが最強(魔法は抜きにして)である事は一目でわかった。

まず、皮膚が馬とは違い、灰色のサイのような皮膚である。

あんな動物の騎兵突撃を受けたら小銃弾では対抗できない。

最低でも12.7mm以上の弾丸を叩きこまねばならない。

そして、そんな重防御の騎獣の上に跨る巨人族の後ろに、タンクデザントのように短銃を抱えた小人族の兵が左右2列に4人乗っている。

それはまるで、随伴歩兵を伴った戦車のような騎兵であった。

そんな騎兵がカノエの馬車の四方を囲んでいるのである。

カノエの重要性がよく分かる重警護であった。

それに引き替え、拓也やニノ達の乗る馬車は粗末な物であった。

ロバが引くオンボロな荷馬車の上に、奴隷市場から接収した木製の檻を載せただけ。

まぁ 檻自体は簡単に壊せないように強化の魔法がかけられていたが、屋根も壁も無い風通しの非常に良すぎる馬車であった。

それに加え、ボロ馬車の隊列の中の位置もなかなか酷い。

隊列の最後尾である。

本当の意味で拓也達はオマケなのだろう。

逃げたところで随伴騎兵に始末させるのは簡単だし、最終的に殺すなら家畜同然の扱いでも構わないと思っているのだろう。

そして、そんなサルカヴェロ軍の無関心さが、拓也の肉体にダメージを与えているとは彼らは知る由も無かった。


「ケツが痛い……」


当然の如くサスペンションの無いボロ馬車の振動は、何時間も胡坐をかいている拓也のケツを責め立てる。

同乗する肉感的な体つきの3人とは違い、脂肪の少ない男のケツは振動に対して脆弱であった。


「あぁ、ケツが痛い……」


この日、何度目か分からぬ拓也の呟き。

夜中にいきなり馬車に載せられ、それから十時間以上も馬車の上で揺られている拓也のケツは限界だった。


「煩いねぇ。

そんなにケツが痛いなら、寝転がってればいいだろ。

それにね。そんなにケツが痛いケツが痛いって連呼してると、終いにゃあたい等が掘ってやるよ。

あたいはノンケだって食っちゃう女だよ?

そうなれば、違う意味の痛さで今の痛さは忘れるだろうさ」


「それは…… 本気でヤメロ。

死にたくなかったら俺に触るな。

それに、横になるって言ったって、2畳の広さに4人も押し込まれてるのに、寝転がる場所なんて無いだろうが」


「狭いってんなら、あんたの手下でも肉布団にして場所を節約すればいいだろ。

それも嫌なら静かに座ってることだね」


「ぬぅ……」


拓也はニノのその一言を受けて黙るしかなかった。

確かに檻の中は狭く、一人が勝って気ままに寝転がれるほどスペースは無い。

拓也の持っている選択肢は、"我慢する"以外は最初っからないのだ。

そして、そんな拓也を見かねてか、拓也の横で体育座りをしているアコニーがフォローを入れる。


「社長。こっちじゃ馬車の乗り心地なんてこんなもんですよ。

向こうの車のシートが異常だったんです。我慢してください。

それと、肉布団はエレナさんが怖いので遠慮させてもらいます」


そう言ってアコニーは顔の前でバッテンを作ると「駄目ですよ」と念を入れてくる。


「衆人環視の中、そんな事お願いしないから。

というか、こうガタガタ揺れる板間の上に何時間も座っていると、慣れない人間にはきついんだよ」


その言葉の通り、檻の中の人間で、馬車に乗り慣れていないのは拓也だけ。

機械文明の北海道では、車両と言えばどんな粗末な物でもシートが付いていたし、サスも付いていた。

そんな贅沢な物にしか乗った事しかない拓也にとって、馬車というモノは快適とは程遠い代物であった。

それに対して他の皆はと言うと、アコニーは北海道に染まってきたと言っても元はこちらの農村の娘。

収穫物の運搬等で時々乗る機会はあったし、他の二人は盗賊として奪った馬車を日常的に乗り回していた口である。

だからだろうか、最初は拓也を不憫に思っていたアコニーも、何時間もケツが痛いと聞かされている内に拓也への同情心は薄れ、心の内に言葉が浮かぶ。


"さっさと慣れろ"と……


暫くすると、アコニーは拓也の事は半ば無視して、カノエのいる馬車を見ながらポツリと呟く。


「カノエは大丈夫かなぁ」


「……姿が確認できないのは心配だけど、きっと大丈夫だ。

奴等はカノエがエルフ云々って言った途端に大人しくなったし、何か迂闊に手を出せない弱みでも握ってるのかもしれない。

それなら、これからある尋問だか裁判だかまでは殺されないんじゃないか」


アコニーの独り言に、それを聞いていた拓也が横から声を掛ける。

まぁもっとも、ケツをモジモジさせたままだが……


「殺されるって……

社長。乙女にはですね、死の一段階前にも色々な危険があるんですよ。

特にカノエなんか何時襲われたっておかしくないのに……」


そういってアコニーはその身を抱く。

カノエがレイプされないかどうかが心配なのだろう。

そして、そんなアコニーの心配に対して、祈る以外に方法が無いのも事実だった。


「そこはカノエの交渉術に期待するしかない。

一体、どんな持ち札があるのかは知らないが、捕虜の虐待を止めさせる程度には影響力はあるんだろう?

ってか、そもそもサルカヴェロを怯ますエルフって何だよ。

森の妖精さん的な立ち位置なのかエロフ的立ち位置なのか、こっちの世界のエルフについてちょっと説明してくれ」


拓也達にとって、カノエの話は断片的な情報が多すぎた。

その上、この世界に明るくない拓也にとってみれば、彼女の言葉を纏めようにもバックボーンたるこの世界の常識が足りなさすぎる。

拓也は少しでもこの世界の知識を得ようと、カノエの言っていたエルフが何なのかアコニーに尋ねた。


「えー……

あたしも詳しくは…… 北海道に来る前は、ただの村娘だったし……」


だが、拓也の質問をぶつけられたアコニーは只困惑するばかりである。

亜人の農村にまともな教育機関があるわけでもなく、教育と言えば村の老人たちが相手であった。

そんなアコニーに実生活に全くかかわりのない種族の事を尋ねても、詳しい話など聞けないのは当たり前であった。

アコニーは質問に答えられずにオドオドするばかり。

そして、そんな不毛な空気が辺りに流れると、見てらんないとばかりに胡坐をかいたニノが拓也の方に向き直る。


「仕方ないね。あたしが説明してやるよ」


そう言ってニノは、自ら説明を買って出る。

まぁ 脳筋だらけの盗賊の部下達の中に、外から得た情報を分かりやすく伝えるのも彼女の役割だったのだろう。

ニノにとって見れば、何て事の無い事柄で頭を抱える拓也に対して、いつも部下相手にやっているが如くココは自分の出番かと思ったのであった。

そんなニノを見て、タマリは拍手をしながら場を盛り上げる。


「流石かーちゃん!博識だね!

馬鹿猫とは偉い違いだ」


「なにおう!?」


タマリの余計な一言に対し、グルル……と喉を鳴らして威嚇するアコニー。

彼女らは、いつもの調子でタマリが煽り、アコニーが反応すると言うパターンを繰り返しているが、拓也としては毎回そんなのまともに付き合う気は更々無い。


「はいはい。

狭い馬車でじゃれあわなくて良いから。

じゃぁちょっと、……ニノだったけ?説明頼む」


「ふん。しょうがないね。

でも、あたしの知っているのは概要だけで、あの娘との関係は知らないよ?

それでもいいね?」


「それでかまわない」


詳細が分からなくても、何も知らないのと概要だけでも知っているのは大違いだ。

拓也はニノの前置きを了承し、姿勢を正して説明をお願いした。


「そうだね。

どこから語ろうか迷うけど、なんなら最初っから説明しようか。

……そもそもエルフってのは、神話にもあるとおり神の尖兵としてこの世に生まれたって話だ。

南方大陸に溢れた悪魔を退治するのに神と人間と協力して戦ったって話だね。

このくらいは知ってるだろ?」


「いいや」


ニノは知ってて当然の如き口調で拓也に聞くが、アウェーで活動する拓也にとって地元民の伝承など知る由も無い。

そんな拓也にニノは少し驚いた顔をしつつも、話を続けた。


「なんだい?

このくらいは子供でも知ってるお話だと思ったんだけど、おかしな奴だね。

まぁいい、話を続けるよ。

神と悪魔の戦いの後、世界は平和を保っている。

だが、これは表面だけだ。

南方大陸は今でも戦線が構築されているからね。

長い戦と気候のせいで荒野と化したあの大陸で、奴等はずっと戦ってるんだ。

その証拠に、私達が攫って売り払う奴隷の殆どは戦奴として南方大陸へ行く。

それも毎年、大量に船で渡るが誰一人として帰ってはこないよ。

戦線の状況なんてあたし達まで届きはしないが、この事実だけで戦いが続いているってのは分かる。

そして、そんな地獄でエルフ達は何百年も生きているんだ。

噂では、奴等は子供が生まれない代わりに不老で、長い戦いの中で人間性は擦り切れちまってるそうだよ。

エルフってのは、そんな化け物みたいな奴等さ」


ニノの説明に拓也は驚きを禁じ得ない。

全てをそのまま信じることは出来ないが、そんな戦闘機械のような種族がいる事自体が、まさにファンタジーだった。


「ほ~……

なんだが、想像を絶する所だな。

それに一代限りの不老ね……

それって本当に生物?ロボットじゃないよね?」


「なんだい?そのロボットってのは?

あんたの言うロボットとかいうのが何かは知らないが、世間一般に言われているエルフってのはこんな感じさ」


「エルフって戦争とか嫌いそうなイメージだけど、こっちじゃそうでもないんだな。

それで、そのエルフは毎年人間を補充しているそうだけど、何か対価はくれるの?

無償?産業とかあるの?話を聞く限りじゃ何百年も戦争している所の経済とか想像できないんだけどさ」


「無償なわけあるかい。

ちゃんと銭は頂いてるよ」


「でも、戦争ばっかしてるってのに経済は成り立つのか?

それとも何か特産でもあるのか?」


拓也はぐいっと身を乗り出してニノに尋ねる。

長期の戦争、そして毎年一定量の奴隷を購入できる購買力。

拓也はこのエルフを取り巻く状況から、とある気配を感じ取る。

紛争地帯+武器商人。

その答えは余りに簡単。

すなわちビジネスチャンスの気配である。


「なんだか金の話にばっかり気が回る奴だねぇ……

奴らの金が尽きないのは、奴等の唯一の収入がボロ儲けだからだよ」


「唯一の収入?」


「あぁ 奴等の収入源はこれさ」


そう言ってニノは、自分の首にかけられたパステルカラーのネックレスを拓也に見せる。


「エレ○バン?」


「エレキ?これはそんな名前なのかい?

まぁ 名前なんてどうでもいい。

答えは、魔導具だよ。

魔導具は、魔術師や魔法の得意な亜人がデザインした道具だけど、彼らが作っただけじゃその効果は現れない。

予め魔水晶に魔力で回路を書き込んでおき、最初の一回はエルフが特殊な魔力を注いで回路を固定するんだ。

その手数料が奴等の収入源さ。

一口に魔導具と言っても腕の立たない奴が作った代物は二、三回も使えば壊れちまう。

それでも凄腕の職人の作った魔導具は何百回使っても壊れなかったりするんだけどね。

そんなこんなで魔導具も常に一定量が壊れて新作するという循環がある限り、奴等は食いっぱぐれない。

しかも、エルフの眷属のダークエルフってやつはね、とってもがめつい商人なんだよ。

そんな奴等が配下にいる事もあって、エルフは魔導具を供給し、他の種族は戦奴を供給するって関係が成り立ってるわけさ」


「……なるほど、とりあえずエルフが羽振りがよさそうなのはよく分かった。

それにしても、盗賊なんてやってた割にはヤケに詳しいな」


「これも殆どが、盗品屋の叔父貴の受け売りさ。

身内にそんなのが居なけりゃ、知りようも無かったよ」


「なるほどね。

あのおっさんから教わったのか。

確かに裏稼業で商売しているなら、そこらへんに詳しそうな感じはするな。」


拓也はニノの情報源に納得する。

店舗を持ち奴隷の取引にも手を突っ込んでいる以上、一般人にはあまり知られていない事柄も色々と知っているんだろう。

拓也は一瞬、出会い方が違っていたら情報屋としても使えるんじゃないかと思いもしたが、今となっては過ぎた事だった。

恐らくはタマリを人質に使った事で敵対関係になっている可能性が高い。

とてもじゃないが再び訪れる気にはなれなかった。


「まぁ、そんなおっさんの話は置いといて…… 話の本題だが、そんなエルフとカノエの一族と何か関係があるのか?

そもそも、なんでカノエはサルカヴェロに終われてんだ?」


「さあ?流石にそこまで知らないよ。

どうしても知りたいってんなら御者のサルカヴェロ兵に聞いてみな。

当事者の方がよく知ってるんじゃないのかい?」


「ふむ」


ニノは、自分の持っている情報はこれで全部だと拓也に言うが、肝心な所が抜けている情報に拓也は満足できなかった。

だが、囚われの身である現状で、試しに馬車の御者を務める兵に聞く以外、そもそも手直に聞ける人間がいない。

拓也はならば一度試してみるかと、ダメもとで御者のサルカヴェロ兵の側へと移動する。


「もしもーし」


檻から手を振って御者席に座るサルカヴェロ兵に声を掛ける拓也。

その声を聞いて、うつらうつらと半ば居眠りをしながら馬の手綱を握っていた歳若い小人族の兵士は、面倒くさそうに顔を上げた。


「なんだよ?静かに座ってろ」


「いや、ちょっとお聞きしたいことがありまして」


「駄目だ駄目だ。罪人は黙って座ってろ」


面倒なことはお断りだと、先ほどまで居眠りをしていた兵士は拓也の言葉をにべも無く却下する。

だが、只の一度断られたからと言って引き下がる拓也ではない。

それならばと、拓也は言葉を変えて再度頼み込んだ。


「う~ん。

ちょっとの時間で良いんですが。

なんなら、このハイエナ親子の胸くらいなら揉みくちゃにして良いですよ」


「「な!」」


拓也は、兵士の気を引こうと冗談でそんな提案する。

見ず知らずの相手にどのような方法でお願いするか少々迷ったが、相手の細かな挙動からエロ話でのネタふりでも問題ないと拓也は思った。

何故ならば、ここにいる小さな兵士は、ホビットかポークルみたいに子供ように小さい背格好の小人族の中でも特に童顔な風体である。

それも、外見だけじゃなく仕草からも察するに、実際に若い少年兵か何かなのだろう。

お年頃のこの兵士は、恐らくはそういった事に興味津々なはず。

その証拠に、拓也達が檻に入れられる時に、彼は女性3人の持つ巨砲が上下に揺れ動くのを顔を赤くしながらも凝視していたのを拓也は見ていた。

だが、興味津々なDT小僧とは言っても今は任務中。

常識で考えれば他の兵士が大勢居る中でアホな行動は出来ないし、軽い冗談と受け取るだろうと拓也は思っていた。

提案を断られても、話のキッカケさえ掴めればそこから話が弾んで色々と教えてくれることもあるかもしれない。

というか、拓也の狙いはそちらであった。

それでも、仮に兵士が本気で食いついて来た時は、ニノとタマリには悪いが少しの間我慢してもらおう。

別に減るもんじゃないし、自分の仲間でもないので。

そんな拓也の提案に対し…… まぁ、外野の反応も予想通りというべきだった。

何も相談せずにそんな提案をしたために、ニノやタマリは最初は呆然としながらも次の瞬間には怒りの声を上げる。


「何言ってるんだい!」


「そうだよ!あたいの乳はあんたの物じゃないよ!」


ニノの抗議に続けてタマリが胸を隠しながら勝手なことを言うなと抗議する。

至極真っ当な反応。

だが、そんな当然と思われる反応も全員が共有するものではなかったらしい。


「あたしらが胸を揉まれる程度で我慢できるか!!やるなら最後まで行くよ!!」


「?! ……かーちゃん?!」


倫理も欠片も無い盗賊の親玉にして、フリーセックスを是としているニノ。

そんな彼女は、未だ歳若いタマリと抗議のポイントが違っていた。

やるなら最後まで満足させろというのだ。

だが、そんなニノの斜め上な回答に、拓也は上手い返しの言葉が出ない。

ニノの反応は拓也の予想外であった。

「とりあえずヤりますか?」とでも兵士に聞けば良いんだろうか。

拓也は兵士の顔色を見ながら、次にどんなアプローチをかけようか悩む。

だが、そんな拓也の心配も兵士の言葉によって杞憂に終わる。


「……で、な、何が聞きたい?」


……通った。

拓也は意外に乗り気なこの少年兵に驚いた。

しかも、声は上ずり、顔を真っ赤にして落ち着かない様子である。

このDT小僧は、このチャンスを最大限に生かそうとしているのは間違いない。

だが、思いの外簡単に情報が得られそうな感触であったが、その代償は小さくなかった。


「……社長。今、あたしの中の社長の好感度が一気に下がりました」


アコニーがジト目で拓也を見つめる。

明らかにネガティブな感情がその目から見てとれた。


「言うな。俺も最初は軽い冗談のつもりだったんだ」


そうは言ってみるものの、勝手に女性の体を代価にするマネをしてしまった事は事実。

拓也はアコニーの目を直視できず顔を背ける。

そして、そのままアコニーの視線から逃げるように兵士に話しかけた。


「聞きたいことってのは主に、自分らが捕まった理由なんですが、

向こうのゴッツイ馬車に乗せられたツレの一族って一体何をしでかしたんですか?」


「ん? あぁ、あの青髪の事?

あんたら、そんなことも知らんの?」


兵士は「何だそんな事か」と言いながら拓也の顔をマジマジと見つめる。


「詳しいことはサッパリ」


「なるほど、理由も知らずに捕まったんじゃやってられんもんね。

話しても良いけど、何から話すべきかなぁ」


そう言って兵士は首を傾げて考える。

どうやら一言では言い切れない事情があるらしい。

拓也は出来るだけ詳しく物事を聞こうと、悩んでいる兵士に要望を出してみる。


「あのー。出来れば事の背景から教えていただければ助かるんですが。

 こちらの常識やら基礎知識まで何にも知らないもので」


「なに?あんたらそんなに田舎者なの?

……まぁいいよ。帝都までは長いから。

暇つぶしに帝国の偉大さから青髪の悪党具合まで全部教えてやるよ。


…………そもそもお前達が捕まった出来事から遡る事8年。

俺はサルカヴェロの片田舎に農家の12男坊として生まれたんだ」


「いや、別にあなたの人生を聞きたかったわけじゃなく……

ていうか生れたのが8年前!?」


「ん?小人族はお前らと違って早熟なんだ。

去年やっと成人して今年から軍で働いてるんだよ。

でも、早熟な分、寿命も30年くらいしかないけどさ。

まぁ、そんな事は良いとして、帝国の偉大さは俺の人生からでも十分に汲み取れるんだ。

一々ちゃちゃを入れずに、黙って聞くように!


……うぉっほん! 

では、気を取り直していくぞ……

最初に言ったが、兄弟の多い俺の実家は食料の消費が凄くてな。

他の国だったら貧困で死にそうな状況だったが、それでも飢えて死ななかったのは毎日の身を粉にして働いて……」


そうして始まったのは、彼の生まれ故郷での苦労話だった。

そんな、拓也の質問と全く関係もなさげな彼の話に拓也とアコニーは如何したものかと顔を見合わせる。


「……社長。

なんか、この子の自分語りが始まりましたよ。

それも何か苦労系の話です。正直、別に聞きたくないです」


「だが、これも情報を得る為だ。

そのうち俺達の求めているところに話は進むだろう。

それと、そんなに彼の苦労自慢が聞きたくないなら、一人で素数でも数えてなさい」


「素数って何です?」


アコニーは首をかしげて素数とは何かを拓也に聞く。

そんな全く話を聞いていない二人に気づいたのか、兵士は勢いよく振り向くと二人に向かって怒鳴った!


「おい!ちゃんと聞いてるか!?」


急な罵声に拓也もアコニーも一瞬浮き上がったように驚くと、慌てて姿勢を直して彼の方を見る。


「はい!聞いてますよ!

どうぞ御気になさらず続けてください」


「ったく。折角話してるんだから真面目に聞けよ。

……話をもどすが俺達が飢えて死ななかったのは、一生懸命働いた事と、当時は既に青髪共が帝国を支配していたからだ」


「へぇ、カノエ達は支配階級だったんですか?」


「あぁ、一体どこから現れたのは誰も知らないが、30年くらい前にポッと現れたかと思うと、俺達小人族と巨人族に技術を授け

あっという各地の豪族達を打倒して国を作ったんだ。

そして、その時からだな。各地の豪族や豪商が処刑されて、今では帝国では当たり前である財産の共同所有が始まったのは。

お前たち西方の人間は制度が遅れているから知らないと思うが、こっちでは皆が働いた分だけ平等に豊かになれるんだ」


兵士はそう言って胸を誇る様に自国の特徴を語って聞かせるが、拓也は兵士の言葉に耳を疑った。

今、彼は何と言ったか?

思いがけない社会制度の存在を匂わす彼の言葉に、拓也は今一度聞き返す。


「……え? 財産の共同所有とか…… 共産主義?!

異世界にまでコミーの手が広がってるんですか?

それなのに帝国って…… 国として成り立つんですか?」


社会制度の触りを説明しただけで妙に食いつく拓也。

そんな彼に、兵士は何でこんな所で突っかかるんだと困惑しつつも説明を続けた。


「ん?なんだ急に食いついてきて?

お前の言うコミーだか共産主義とかいう言葉は知らんが、青髪が来て以来この国はそういう制度だ。

現にそれでうまくいっている」


「でも、やっぱり皇帝なんてブルジョア支配階級をプロレタリアートが黙って放置するわけないですよね?

実は内部は揉めてるとか?」


帝国と言う言葉と共産主義と言う言葉から拓也が連想したのはロシア革命だった。

彼は上手くいっているといっているが、果たしてそれは本当に上手くいくものなのだろうか。

拓也の中にそんな疑念が渦巻くが、地球の歴史を知らない兵士にとって拓也が何故そんな質問をするのかはサッパリ分からなかった。


「う~ん。お前の言う言葉はよく分からんな。

一応言っとくが、今のこの国の皇帝は、西の奴らと違って世襲じゃないぞ?

元老院の指名によって就任するんだ。

だから西のアホどもと違って王族が人民の上でふんぞり返ってることも無い。

旧来の豪族達に代わって支配階級についていた青髪共を一掃した今、国の頭と人民の関係は良好だよ。

まぁ 少し前まで政争で揉めていたがな。

それも今のジュガシヴィリ皇帝が国を治める様になってからは、揉めてると言う話は聞かないな」


拓也はその説明で一応は納得できた。

この国では皇帝と言ってもそれは名称だけで、別に王朝があるという訳ではないのだ。


「あ~ なるほど、皇帝っていっても名前だけなんですね」


「まぁ 魔法ばっかりに頼って社会の遅れた西方とは違って、帝国の皇帝は名前は一緒でも制度は違うんだ」


「中世みたいなファンタジー文明の隣にソビエトがあるなんて……

というか、どうやったらそんな独自文明を維持できるんです?

別に交流が不可能と言うほど他の国々と距離が離れているわけじゃないんでしょ?

もうちょっと混じりあっても良いと思うのに……」


「あんたは変な事ばっかり気が付くな。

仕方ない。

この俺様が詳しく説明してやる。

そもそも偉大な帝国の制度は人族や他の亜人共とは相性が悪い。

前に人族の領主が真似をしてみたが、個人個人の欲が強すぎる種族はすぐにやる気を無くすそうだ。

だが、その点俺たちは違う。

俺たち小人族の寿命は大体30年。

お前たちより短い間隔でポコポコ生れてドンドン死ぬんだ。

だから、本能的に個人の利益より集団の利益を優先してしまう。

そしてもう一つの基幹種族である巨人族の奴らは、逆に200年くらい生きる。

更に、子供が出来るペースはさほど早くない。

そんな事もあってか、奴らは自己能力に対する向上心がとても強い。

物欲よりも、個人の知識や力を磨いて己を鍛える事を重要視するんだ。

だから奴らは人族と違って、労働の対価が平等でも文句は言わないし、力を合わせて全体の力量を底上げすることで自分の知識や能力を向上させることに喜びを見出してる。

まぁ そんな性質の違いもあって俺たちの社会制度は西方には殆ど広まらないな。

それに、青髪の出現から全ての変化が急すぎたってのも理由にあるが……」


「へぇ~……

社会制度とかについては、よく分かりました。

だけど、一つ分からないのが、そんな技術やら制度やらを授けてくれた青髪達を何故迫害するんです?

普通なら、逆に感謝する所では?」


彼らにマッチした社会制度や技術を提供し、東方の覇者にまで押し上げた青髪の一族。

そんな彼らに対し、なぜ迫害するのか拓也には分からなかった。

彼の話を聞く限り、青髪の一族の恩恵ばかりがよく聞こえる。

そんな拓也に対し、兵士は少し遠い目をしながら質問に答える。


「まぁ 普通に統治していた分にはそうだな。

だが、奴らは普通じゃなかったんだ。

帝国の黎明期から拡大期にかけては青髪とも特にいざこざは無かった。

なぜならば、当時は全人民に月に一度、ある秘薬を飲むように強制されていたからだ」


「秘薬ですか?」


「そうだ。

それを飲むと、命令に逆らえなくなる。

死ぬような命令にも笑顔で応じる様になる。

そして、帝国の初期は皆がそれを飲まされていた。

配給の食糧は必要最低限しか与えられず、残りの余力は全て青髪達の研究の為の労働に充てられていた。

そして、薬の影響で全員がそれに満足していたんだ。

例え、人体実験で死ぬようなことがあってもね」


「それはまた……

薬によるマインドコントロールとはえげつない…… しかも人体実験とか……

なるほど、相手の自由意思を奪って技術や社会制度を伝授したってのは、善意とかじゃなく

手駒に道具を与えて効率的に運用しただけって感じがしますね。

そして、彼らの目的は研究……ですか。

一からの国家建設までやっておいて、一体何を研究してたんですか?」


「今でもそれが何かは分からない。

そして、そんな状況が25年続いたとき、一つの転機が訪れた。

一体何をやったのか知らないが、エルフが青髪の居城を襲ったんだ。

青髪の大多数はその時に殺されたが、狩り洩らしもいた。

エルフたちは、秘薬の効果が切れた俺たち人民に青髪を見つけたら直ちに捕まえて教えるように言うと、そのまま帰っていったんだ。

その時のエルフとの約束と家畜の様に扱われていた恨みが、今でも青髪の探索が国を挙げて行われている理由なんだ。

わかった?」


兵士は青髪とサルカヴェロの建国にまつわる話をし終えると、拓也の方に振り向いた。

自分の知識をひけらかした彼の表情は、実に満足そうであった。

だが、その話とは別に分からない事が一つある。

馬車の御者を務める彼は、明らかに下級兵士である。

そんな彼が、なぜそこまで詳しいのか。


「うーん。

非常に興味深い話でした。

でも、一般の兵士にしては詳しすぎません?

あなたが何者であるかも謎ですよね」


粗末な馬車に乗る下級兵士

見た目からはあまり学のあるようには見えない。

だが、拓也のそんな疑問に対し、兵士は拓也が何を言いたいのか察して答えてくれた。


「あぁ それか。

まぁ 俺も徴兵される前は人民学校での成績は優秀だったから。

普通の奴よりは歴史に詳しいよ」


「サルカヴェロには学校があるんですか?」


「こっちじゃ別に驚くことでもないよ。。

それに、西方じゃ学校なんて一握りの人間しか行けないかもしれないが、帝国じゃ殆どの子供が学校に行くんだぞ?

まぁ これも青髪の遺産というべき制度だが、帝国は世界一進んだ国だから、これくらい普通なんだ」


そう言って彼は胸を張って自国の偉大さを拓也に知らしめる。

我が国は世界一だと。

そして、その彼の説明は彼の思惑通りに拓也を驚愕させた。

まぁ その驚き方の種類は彼の思っているモノと多少違うかもしれないが……


「……なぁ アコニー」


兵士の話も終わり、拓也は色々な驚きを胸に横に座っていたアコニーに声を掛ける。


「ふぇ!? どうしました社長?」


「お前……寝てたな?

まぁ それはいい。

おまえらトンデモナイ世界に住んでるな」


「え?え?」


拓也は話を聞かずに船を漕いでいたアコニーに呆れつつ、思ったままの感想をアコニーに語る。

そして、急に話を振られたアコニーは、どう切り替えしていいか分からず目をぱちくりさせているが、拓也は気にせず言葉を続けた。


「片や中世ファンタジーみたいな魔法の世界かと思いきや、もう片方は旧式ながらも銃兵が主兵力のソビエトみたいな文明だぞ?

もう訳がわかんない。一体どんな風に発展したらこんな世界になるんだ?なぁ?」


「いや、あたしにそんなこと言われても……」


「それにサルカヴェロに技術を教えた青髪か……

一体、カノエは何者なんだろうか」


一通りの概要は理解できたが、それでも核心部分は謎のまま。

拓也の疑問は、より深みに落ちていくのであった。

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