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試される大地  作者: 石達
第1章 邂逅期
34/88

幕間 蠢動する国後

東方にて拓也達が盗賊たちと交渉を始めようかとしている頃

北海道連邦の内部でも異なる勢力同士の意見の応酬が続いていた。



国後島

ユジノクリリスク

自治区役所


ここは、転移後に南クリルが北海道との完全な統合までは自治区として存続することが決まった為に作られた真新しい庁舎。

そんな新築の建物の中にあるテレビ会議室に、ロシア側のトップであるステパーシンの姿はあった。

彼がモニター越しに参加しているのは、北海道連邦の立法機関である道議会である。

情報化の進んだ北海道では、議会の電子参加は認められている。

(コレについては忙しくても議会に出ろという議員に対する議会からの圧力のようなものだが)

そんな訳で、所用で国後を訪れていたステパーシンは、内務相としてやや不機嫌そうにモニターの中の人物の言葉に耳を傾けていた。

モニターに映る場所は北海道連邦の議会が置かれている旧道議会場。

そして現在、モニターの中心には一人の人物が映し出されている。


「……以上の事から、大統領と与党の推し進める移民政策には問題しかない!」


一院制を採用している北海道連邦の議会の場にて、質問壇の上でカメラを意識したオーバーアクションで一人の男が声高に叫んでいる。

議会は、与党側からとぶヤジと野党側からの喝采の中、今日も大いに盛り上がっていた。

そんな白熱の中心、質問壇に立つ男は野党党首の鳩沢直一郎。

今最も議会で勢いのある男だった。


「いくら労働人口が足らないと言えど、移民の流入は道民の仕事を奪い、治安悪化に繋がる!

それに加え、政府は道内で栽培されている遺伝子組み換え作物の種子をエルヴィス側に輸出しようとしているそうだが

それは、将来的に道内の農業経営者を圧迫する事に繋がると思わざるを得ない。

この事について、与党としてどう考えているのかお尋ねしたい」


鳩沢の質問に辟易としながら議長に名前を呼ばれた経済省の大臣が答弁に立つ。

だが、鳩沢を含め野党の人間の目は彼にはいっていない。

彼らが見詰めているのは、議会での答弁こそ出来ないものの低下する支持率回復と与党支援の為、一般教書演説に訪れた高木大統領に向けられていた。

質問の回答こそ大臣が行うが、お前に向かっていっているんだぞとその目で語っているのだ。


「え~、先ほどの質問についてですが、移民の導入は道内事情を考えれば不可避なものです。

現在、転移の際に坑道が無くなり資源の復活した道内各所の鉱山で主に働くのは、道民ではなく難民として渡って来たドワーフたちです。

更に現在、道東で試験的に農業分野等へ他の亜人達を導入していますが、これらについても結果は満足のいくものとなっております。

逆に、彼らを全く使わなくなった場合、資源の供給で支障が出る恐れがあります。

現に、道内の木材資源は需要に対して林業従業者が圧倒的に足らず、輸入木材が途絶えた今では建築業に支障が出ています。

これからは、第一次産業等を中心に積極的に産業の組織化・効率化と移民の導入が不可欠と政府は予測しております。

そして、それに伴い先の騒乱で被害を受けた礼文島に建設中の大規模研修施設が落成間近です。

これによって、北海道に移民としてくる労働者は、全員がここで文化や道徳についての研修を受けることになりますので、治安の悪化も心配されるほど問題にはなりません」


そう言って大臣は鳩沢の質問に返答するが、カリスマ性の欠如からだろうか

映像で見る彼の姿には、どうにも覇気が感じられない。

それに対して、質問に立つ鳩沢の姿は堂々たるものだった。


「大臣はその様に言うが、労働力の不足はロボット工場の完全稼動後は問題にならなくなるのではないか?

ならば、移民など導入する理由も無くなる。

むしろ、受け入れた移民がそのまま犯罪予備軍になる可能性を考慮しているのか?

それに、現在、政府は被災した礼文島の船泊地区を復興ではなく、移民受け入れの為の出島として大規模に造成しているが、これは被害者を愚弄する行為ではないのか?

政府は国民よりも移民を優遇しようとしている声もあるが、これについて引き続き大臣にお尋ねしたい!」


「……えー、ご指摘のありましたロボット工場についてですが、現在は資源不足が原因での操業停止ですので

労働力の補充に大々的にロボットを導入することは出来ません。

よって移民の導入は不可避ですが、党首の仰られた様な移民の優遇というのは事実無根です。

それと、被災住民に関してですが、大規模造成に関して十分な補償金と被災見舞金をお支払いしておりますので

特に問題は発生しておりません」


「それは札束で被災者を懐柔しただけではないのか?

政府は感知しないと言っているが、私のところには一部住人から生活の為に金は受け取ったが、政府のやり方は強引だったという内容の投書が届いている。

住民からそう言った声があることに、政府としてどうもっているのか?」


「えー、その様な事実は確認しておりません。

政府としては誠心誠意対応させていただきます」


つづけさまに投げかけられる質問に、大臣はハゲた頭に浮かぶ汗を拭う。

投げかけられた質問に対しては、問題なく解答出来てはいる。

鳩沢はロボットで労働力を補えばいいと言うが、現在、道内では電子部品の自給が完全ではない。

転移前に電子部品の製造設備を移設したりもしたが、細かい部品については間に合わなかったモノも多いのだ。

例えば電子部品の中のコンデンサ。

更にその中の電解液を作る設備が無いだけで、連鎖的にそれを必要とするすべての生産ラインが止まってしまう。

そのような感じで、道内産業の中でも電子製品の復興は遅れ気味であり、必然的にロボット工場は設備があっても生産は出来ずにいた。

その事を大臣は簡潔に説明するが、どうにもやりにくいという意識が彼の中にはあった。

どうにも勢いのある人物と議論を行うと、その圧迫感からか脂汗が止まらないのだ。



「それは政府の確認が不十分だからではないのか?

今後、この問題についてはキッチリ追求させていただく。

続きまして2つ目の質問ですが、知的財産の保護という概念も無い世界に、遺伝子組み換えの高収量作物種子を輸出するとは如何なる検討を持って決めたのか説明していただきたい。

これについては農業事業者の一部から不安の声が出ているのはご存知でしょうか?」


「えー、党首の心配にもある通り、この世界は知的財産の保護と言う概念はありません。

ですが、だからと言って輸出を禁止していても、過去に中国や韓国で日本で品種改良された農産物が無断で栽培されていたように、交流を続けていれば漏れ出て行くのは必然でしょう。

そこで、政府としてはF1品種……簡単に説明しますと一代雑種ですね。

F1品種とそれ以外の従来作物にもは遺伝子操作で因子を組み込み、一代限りで次代の種子を巻いても発芽しない種子を大々的に輸出します。

そして、これらの種子を導入した国々では緑の革命によって大幅に食糧生産が増加するため、各国も我が国に依存を強めるでしょう。

生物学的なコピーガードによる知的財産の保護と食の安全保障の二本立てによって我々の利益は守られると政府は推測しています」


「ですが、農産物の増産は食糧価格の低下を引き起こして道産の農産物の競争能力を奪うのではないですか?

安全保障まで絡めて考えておられるのならば、価格統制の為に種子の輸出規制を行えば、石油を絶たれた戦前の日本の様に戦争に走るかもしれない。

そこのところを大臣としては如何お考えでしょうか?」


「それについては、政府として種子の輸出規制は考えておりません。

では、どうやって北海道農業を保護するのか順を追って説明いたします。

遺伝子組換作物の使用は、旧世界でのインドなどの例が示す通り、緑の革命が起った国々では食糧価格の低下により農民が困窮します。

それも一時的な価格低下ではなく恒常的な低下なので、農民は収入を維持するために増産を維持しなければなりません。

生産調整という統制と無縁の世界ですから、薄利多売で収入を確保しなければならないわけです。

そして、そんな周辺国家の農民の困窮は我々にとってはチャンスになります。

現在の北海道農業は、TPP加盟移行効率化の流れが加速していましたが、転移による物資・生産統制以降は組織化も急速に進みました。

そしてそれらの事業者には、政府の援助の下で他国の困窮した荘園等の農地を買い取り、海外進出を推し進めて頂きます。

例え、道産品の競争力が落ちても経営母体が耐えられるだけのリスク分散ですね。

経営母体の体力が付けば多少割高になろうと、一定の食料自給率は確保できると試算していま…………ブッ」








モニターの向こうでは議会での大臣の説明はまだまだ続くようであったが、それを気にすることも無くステパーシンは映像の音声を切る。

今日の議会では自分への質問は予定されていないし、この調子なら予定された質問に党内の見解を応えるだけだろう。

ならば、いつまでも見続けていてもしょうがない。

どうせ、電子参加といっても此方から向うに映像を送るのは答弁の時だけで十分である。

それ以外の時は、別に話を聞いていなくたって問題はないと彼は考えたのだ。

なぜなら、今日、彼の関心事は他にある。

特に自分に関わる質疑の無い議会よりも、目の前の面々との会談の方が彼には重要だったのだ。

現在、ステパーシンの前には、彼を囲むように10名弱の人間が円卓に座っている。

老若男女そして様々な人種が座っているが、一つだけ彼らに共通する特徴をあげるとすれば、それは日本人は一人もいないと言うことだった。

そして、そのメンバー中の一人。

杖を持って椅子に座る白人の老紳士が、一緒に見ていた議会の様子に溜息混じりに感想をもらした。


「ふむ。あの大臣は仕事ぶりはまともだが、答弁に覇気が無いな。

この調子では次の選挙や大統領選で与党は危ういぞ」


やれやれといった口調で彼はメンバーを見渡しながら軽く言ってのけるが、

同じ室内で議会の様子を見ていた他のメンバー達の表情には、その彼ほどの余裕はない。

むしろ眉を顰めながら一様に苦い顔をしており、会議室内には不穏な空気が流れていた。


「このまま与党が負けるようなことが有れば、我々の立場が不透明になる。

それだけは絶対に避けねばならん」


重苦しい空気の中、ステパーシンの横に座るアジア系の男がポツリと呟く。

この流れは不味いと……

そしてそれは、この場に集まった皆の総意でもあり、彼らが纏める集団の統一見解でもあった。


彼の言う"我々"

それは、この場に集まったメンバーの出自を見れば、それが何であるかは簡単に説明できる。

ここに集まった彼らは、背負っている背景は違えど、転移に巻き込まれた外国人コミュニティーのトップ達であった。

転移後しばらくして、混乱の収まった北海道では生活基盤を持たない外国人達の多数の為の住宅等がユジノクリリスクに整備されることに決まった。

転移の起った8月は旅行シーズンという事もあり、転移に巻き込まれた海外からの観光客の合計は10万人を超える。

そんな地方都市に匹敵する人口を道内で受け入れれば、元の住民との軋轢が発生することは目に見えていた。

どこで彼らの面倒を見るか。

検討に検討を重ねた結果、選ばれたのは国後島、ユジノクリリスクであった。

ロシア系都市の中心として今後の成長が見込まれ、なおかつ開発途上の為に都市計画が立てやすい。

なによりも人口希薄地域だったため、それを増強する意味でステパーシンの推薦があったのが決め手となった。

もとよりロシアは多民族国家。

異民族に対して扱いは、日本人よりは心得があった。

今では国籍別では最大勢力の現地ロシア人が、他の外国人や道内企業らと協力して新たな新天地を国後島に築き始め、国後と択捉の二島は内部から劇的な変化を始めていたのだった。

そんな外国人コミュニティーの中でもロシア人を代表するステパーシンを筆頭に、人口比で言えば二番目に多い大量の中国人観光客や労働者を抱え込んだ中国人グループや

2千人規模ではあるが、政府に接収されたアルカディア・オブ・ザ・シーズの富裕層乗客グループ、そして国別の外国人グループの代表たちがこの会議には出席している。

集まった彼らが議題に上げているのは、自分達の今後の事。

要約すれば、人口比で圧倒的マイノリティになる連邦内で、如何にして自分達の権利を主張していくかと言うことだった。

だが、開口一番に客船代表の老紳士から開かれた一言は、あまり良くない世の中の情勢。

暗くなる雰囲気の中、会議の中心であるステパーシンは、気を取り直して話を進める。


「まぁ お出で頂いた皆さんの言うとおりだ。

現在、道内での与党と大統領の支持率低下が続けば、我々の未来も危うい。

なにせ野党党首の鳩沢は、日本人中心の国造りと移民排斥を唱える右派でありポピュリストだ。

奴が大統領になった日には、我々の待遇がどうなるか分かった物ではないのは周知の事実だ」


事実は事実。

それはそれで認めなければいけない。

だが、問題はそれからどうするかという事だ。

そんな現状確認のステパーシンの言葉であったが、それに対して、それまで黙って聞いていたシンガポール出身者代表の女性が眉間に皺を寄せながら口を挟む。


「ですが、道内では物資・生産統制でホワイトカラーからやむを得ずブルーカラーになった者を中心に不満が渦巻いているのでしょう?

自分たちは廃業せざるをえなかった職を離れ、今までの経験が生かせない業種で働かざるを得なかったのに、能力の面で産業界で重用される亜人に対する嫉妬は根強いと聞きます。

そんな中でこれ以上外から移民を導入して支持率回復は大丈夫なのですか?

先の北海道西方沖航空戦の後では一時的に支持率は跳ね上がりましたが、統制経済の中ではジリジリと支持率は下落しているんでしょう?」


「だが、目立った回復要素はあまりない……

そもそも、そういった労働者の不満は現実逃避の八つ当たりに近いためどうしようもない。

転移後に観光業や道外との取引を主としていた企業が潰れるのは不可避だ。

それに、嫉妬の対象になった亜人達の職種は鉱山労働等の肉体労働が主だ。

いくら持て囃されているからって、職を失ったホワイトカラーが自分たちが嫌がる仕事に就くもの達を逆恨みするなどナンセンス極まる。

あまりに不平不満が多い者はコルホーズにでも送ってしまえばいい。

そう思うだろう?ステパーシン君」


そう言って老紳士は、シンガポール出身女性の言葉を聞いて不満がくすぶる一部道民についての不快感を表すが、

話を振られたステパーシンも苦笑いを浮かべながら彼の話を聞き流す。

不満を口にする労働者をコルホーズに叩き込む?

それが出来れば、どんなに楽な事か。

半ば真剣にステパーシンがそのような事を思っていると、話を横で聞いていたアジア系の男……中国人代表の男が、話の流れを戻そうとステパーシンのほう向かって話しかける。


「ここはやはり、我々も独自の影響力の保持を考えるべき時が来たようだな

ステパーシンさん。どこか良い相手の目星はつきましたかな?」


「ふふん。

それについては、一つ面白い所が有る。

こちらの世界でありながら、旧式ながらも火器を装備した国家なのだが」


「ほう。

それはどこですか?

というより、私としてはパイプを作るならエルヴィス公国あたりかと思っていたのですが違うのですか?」


「エルヴィスではありません。

あそこは既に連邦とズップリだ。

政権交代が有ろうと我々の提案には載らないでしょう。

それよりも面白そうなのがサルカヴェロ帝国です。

一応は政府も存在は知っていますが、公式の接触は未だ行われてはいない。

その帝国の詳細は部下が調査中ですが、もしかしたら、北海道を除いたこの世界では一番技術力があるかもしれないと現地を見た部下からの予測もある。

そこに我々独自のパイプを持つのは悪くはない」


そういってステパーシンはニッコリと笑う。

拓也達がサルカヴェロの支配地まで足を延ばしていたことについては、ラッキーだったと思っていた。

政府とは別系統で他国とのパイプを探っていた彼は、如何にして北海道側の人間に悟られぬよう手勢を派遣するかを考えていた。

この動きが表ざたになれば、分離独立の動きと見られ頼みの綱の与党にまで見限られかねない。

だが、手駒の内務省警察軍を使えば目立つし、軍を使えばどうやっても情報は政府にバレる。

そんな所に、丁度良い手駒が転がっていたのが拓也だった。

子飼いの企業が不審な動きをしているので探ってみれば、政府に黙って東方地域まで足を延ばしているのである。

彼にとってみればそれを利用しない手は無かった。


「ほう。で、その調査とはどの位で結果が出そうですか?」


「現在、民間調査団の視察を名目にツィリコ大佐を送ったので、彼の連絡待ちですね」


「大佐を送るとは思い切りったな。

政府から何も言われなかったのか?」


中国人代表の考えはもっともだ。

高級佐官を何のために東方地域に派遣するのか。

それ相応の理由が要りそうなものである。

だが、ステパーシンも抜かりはない。

それに対する立て前も同時に用意している。


「政府には、無断で大陸に渡る犯罪者の追跡をしている民間業者の視察に大佐が行った事にしている。

民間軍事会社の能力調査という名目なら、大佐が視察する名目もたつ。

それに、先方と接触した時に調査だけではなくパイプも作りたいため、しかるべき地位である大佐を送ったんだよ」


現在、北海道から大陸へ渡るのは、何も政府から正式に許可を貰った者だけではない。

内務省警察に追われて大陸に逃げた左派の過激派や、未開の大陸に技術を広めて自己顕示欲を満足したい行動力のありすぎたネット小説やラノベ読者、さらには宗教の勧誘員など

目的はさまざまだが、そういった者達が海保の目を盗んでチョロチョロと密航する事例は既に何件も報告されていた。

そんな状況下で、ステパーシンの用意した大佐派遣の建前は、その内の過激派追跡に使っている拓也達PMCの軍事能力調査というモノであった。

まぁ コレは、拓也達の密航がステパーシンに発覚後、彼の目的のために後追いで渡航のお墨付きを与えたものである。

だが、拓也達が東方地域にいることは正当になったのは間違いない。

そして、今後の軍とPMCとの連携を考慮する為、能力調査の査察に大佐を送るのである。

なんだが非常にややこしい事と思われるが、説明には一連の筋は通しておいたので、大佐派遣について政府から何も追及はなかった。

政府としてはそんな事よりも、先日の謎の霧でワクチン接種者の体に変異が起きたことに対する調査で一杯一杯なのだろう。


「まぁ それで問題が無いならこれ以上何も言わない。

だが、パイプを作る以上、最悪の想定が現実のものになった時には協力関係が築けるような間柄でなくてはならない。

そのためにも大佐にはがんばってもらわないとならないな」


「大佐が頑張るのは当然のことだ。

転移以後、マイノリティとして生きる我々は、圧倒的多数を占める日本人に対し優位な地位を確保できないでいる。

だが、各国人が受け継いできた文化や地位が、日本文化に埋没して失われる事を座視しているわけにはいかない。

我々の生存権は何が何でも確実に確保しなければならない。

全ては我々の未来に繋がっているのだ」


老紳士の言葉にステパーシンは、大佐から良い報告が来るのは当たり前だと言う様に答える。

なぜならば、彼らも彼等で余裕が無いのだ。

現在、多数を占める日本人に連邦の中枢は握られている。

このまま何もしなければ、連邦内に住むロシア人を始め外国人と呼ばれる者達の子孫は

時間と共に風化する祖先の文化を忘れ、いずれは完全に日本人と同化して生きていくことになるだろう。

国家としてみた場合は、その方が対立が無いことはこの場の皆も判っている。

だが、認められないのだ。

己が精神を構成する文化と言う名の模倣子が失われることは、転移後の世界では自国の文化が永遠に失われるのと同義だ。

ゆえに彼らは動く。

例え連邦の意思から外れていようと、己が模倣子の生存本能に従って。


この作品では、いずれ農業NAISEIとして異世界にて緑の革命を予定しています。

ノーフォーク農業とかの農業革命は、他でやり尽くされてるので……

最初は遺伝子組換作物。段階を踏んで農薬バンバン巻きまくった結果は"沈黙の春"とか

まぁ 詳細は未定ですが……

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