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白く輝く帆の下で  ー北の州長の奮闘記ー  作者: きいまき
ロウノームス
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回避。

「だが、エイブ。王都にますます人が集まる事で、食料が足りなくなるのではないか?」


「その為の釣り大会と天然食材探し競争だよ。例えば釣り大会なら、競技でじゃんじゃん釣ってもらって、それで一番でっかい魚を皆で分け合いっこして食べるっ」


 魚には捌いて切り分けたりする人が必要になるけど、そこまでなら王都のおかみさん達に頼むことが出来る。

 だけど食べる側の誰かに、何人も給仕係を付けるなんて論外だ。


 自分で食べることが出来る大の大人に、給仕係を付ける?

 それこそ人材の無駄遣いでしかない。


 今回のお祭りでは、いかに人手を少なく出来るかが鍵である。


 仕事を頼まずにすんだ人達がお祭りを楽しむ。

 つまりお客が増えるっ!


 それこそお祭りが盛り上がる秘訣!


「私は楽しそうだと思うのですが、どうでしょうお従兄様?」

 昨日の馬車の中でさんざん僕がお祭りを推したからか、ケラスィンも口添えしてくれる。


「余った魚は燻製して、州までの帰り道のおかずにしてもらったり、お土産にしてもらうんだっ! で、どうかな?」


 新しい行事であるお祭りには先例がない。


 これまで通り、結婚式を晩餐会やパレードを開くとするならば、先例に倣って結婚式を挙げることになる。

 つまり先例に従えば、結婚式のお祝いは高価な物にならざるを得ないし、お返しも高価な物にせざるを得ない。


 だが先例のないお祭りにすれば、各州にお祝いについての申し込みが出来る。

 その方がお祝いを贈る方も希望が聞けて助かるという物だ。


「ふむ」


 先例がないからこそ、新しい事を始められる。

 それなら、はっきり言って状況の厳しいロウノームスでも、何とかなりそうだという感じの好感触がロウからも伝わって来た。


 だが各州へのお返しに干物はちょっとまずい。

 先の海行きで魚も天日干しにしたのだが、思っていたよりも随分早く傷み始めてしまったのだ。


 だから州に持ち帰ってもらうなら、天日干しよりも日持ちするように燻製にしないといけない。

 その点も強調して伝える。


「島でお祭りはいつ開かれた?」

「全島祭りは農閑期だったけど?」


「とすると秋の終わりだな。ロウノームスの冬は厳しい」

「それって今年の、じゃないよね~?」


「……そうなるな」


 やっぱりすぐにケラスィンと結婚は難しいか。

 ただでさえ、今から冬が怖いと王都の皆で食料増産してくれてるんだもんなぁ。


 新しい保存食を教えてもらえたとはいえ、ちゃんと冬を越せるのか見定めないと。

 確実に食料が大量に必要になるお祭りを、今年にほいほい開けないよなぁ。


 でも今年の冬が無事に越せれば、食料増産も計画的に行えるからお祭りを開く余裕も出来るだろう。


 余裕があると確かめられたら、来年の秋の終わりにケラスィンと結婚式が出来るっ!

 更に1年先延ばしになんか、してたまるか~っっ。



 あ、そうだ。

 お祭りからちょっと逸れちゃうけど、他にも聞きたい事があった。


「王族はどこそこの神殿で結婚式を挙げないといけないっていう、しきたりはある? もしなければ、いつもお世話になっている神殿で結婚式を挙げたいんだけど」


「いや、ないはずだ。一応確認しておこう」


 結婚式には表立って招待出来なさそう、というか、そもそも恐れ多いと招待しても拒否されそうな子供達や街の人達にも、こっそりでいいから参列して欲しいんだよな。


 勝手知ったる神殿なら、隠れ参列してくれそうだし。


「それから」

「……まだあるのか、エイブ」


「披露宴の晩餐会の規模を小さくしてほしい」

「……」


 確かにこれも本音だけど、北の大陸祭り開催が1番だよ。

 ロウからじと~っと見られたので、急いで僕は続ける。


「それであっちこっちで開かれてる、お祭り&競技会場を全部ケラスィンと見て回る。

 あと各州の人達からのお祝いは、見本市や屋台の方でお祝いを受ける。その方が話しやすそうだしさ」


「狡いぞ。それならば我も連れて行け」


「ロウならそう答えると思ったよ」

「当たり前だ。我だってお祭りに参加したい」


 一生懸命お祭りについて話して良かった。

 ロウにもしっかりお祭りは楽しそうだと思ってもらえたらしい。


「僕はさ。出来たら晩餐会を無しにして、時間を作りたいぐらいなんだよ。

 そうすればいっぱい色々見て回れるし、あとあちこちの会場にケラスィンと馬車で移動すれば、それがパレード代わりにならない?」


「ふむ。王都の様々なところでパレードが見られるということか。良いかもな」


「でしょう? じゃあ意見が一致したって事で、警備の人に考えるようお願いしといてくれない?」

「前向きに検討させよう」


 よっしゃ~っ!

 パレードと宮廷式晩餐会の完全回避は無理だったけど、結婚式に来た人達に少しでも楽しんでもらうという目標は達成出来るかなっ。





パレード


「参加したいよなぁ」

「何のことだ?」


「島の人の結婚式のパレードさ」

「あ? 何のことだ?」


「いや。どうやらケラスィン様から結婚OKをもらったらしいんだよ島の人」

「「なんだと?!」」


「いや、一気に詰め寄るなってっ!」

「お前が悪いっ!」

「さっさと話せっ!」


「ちょっと離れろってっ! さっき島の人とケラスィン様を港から屋敷までお送りしてきたんだがな」

「ああ、馬車を出すよう頼まれたのはお前だったのか」


「その馬車の中で、結婚式の話が出ていたんだよ」

「ほんとか?!」

「嘘じゃね~だろ~なっ!」


「いくら何でも嘘なんてつかね~よっ!」

「ああ。だからパレードかっ!」


「おうっ! 王族の結婚式にパレードは付きものだろ?」




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