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白く輝く帆の下で  ー北の州長の奮闘記ー  作者: きいまき
ロウノームス
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北の大陸祭り。

「今日を迎えられた事、我はとても嬉しく思う。初めての催しゆえ、共に試行錯誤を重ねてくれた皆の協力に感謝する」


 祭の開催宣言は王様のロウケイシャンだ。

 王子達やケラスィンに続いてロウの横に並んで座った僕はロウの言葉に合わせ、お礼を込めて頭を下げる。


「物産展を行き来し、技術の交換を盛んに行おう。そして各種目では身分出身を忘れ、心置きなく競い合ってもらいたい。祭りを通し、皆が多くの交流を得られる事を我は願っている」


 その言葉1つ1つに、うんうんと僕は内心で大きく頷いていた。


 ちなみに結婚披露宴である、恐怖の宮廷式晩餐会も乗り越えて僕は今ここに居る。



 元々ロウノームスの王であるロウは宮廷式晩餐会の形式を好んで無かった。


 それが発端ではあるだろうが、ロウノームスに熱意ある各州の代表者さん達が入ったことと、奴隷達の解放が重なり、王宮内の人々の働き方は前と違った様子が伺え始めていた。


 そんな中、北の大陸祭りを開催するに当たって、ロウノームスの政治体制は祭りの準備期間中に大きく変化をした。


 特に元老院だ。

 元老院はその存在の必要性が元々怪しまれていたこともあり、王宮内の人々の働き方の変化と共に有名無実なものと化した。


 現在のロウノームスは裏・行政府が正式な政治機関へと変化し、裏・行政府を担っていた人達と各州の代表者さん達、そしてロウノームスの王であるロウが話し合いを持ち、ロウノームスを動かしている。


 未来を良くしていきたいという、熱意を持つ者が多く存在する行政府と各州の代表者さん達だから、時にはその熱意が空回りすることもある。


 だが王であるロウがその熱意を上手くコントロールし、皆の方向性を指し示すものだから、それぞれの熱意が上手く噛み合い、ロウノームスの政治は円滑に進んでいる。


 また各州の代表者さん達がロウノームスの政治の中心にいるので、北の大陸全土に情報が潤滑に飛び交うようになり、それぞれが力を合わせ前に進むようになった。


 そのおかげで各州に正確な情報が飛び、ロウノームスの国としての意向が伝わりやすくなったことから、元老院の無理強いや、ごり押しに対して各州で対処可能な案件が増え、ロウノームスの内情はますます安定した。


 これらはロウの力となり、未来あるロウノームスの実現へと周りも動くようになっていった。


 今回の結婚披露宴で実感したが、ロウノームスの宮廷式晩餐会も少しずつ形式が変わってきた。

 特に変わったと思うのは、食事は自分で取って食べるようになったことだ。


 僕にとってはすっきりして風通しも良いし、嬉しい変化だと思っている。

 居心地も良くなったしね。



「それでは第1回、北の大陸祭りを開催する」


 ロウがそう締めくくると、わぁっと周囲から歓声と拍手が起こった。


 ロウに続き、まず1番に開催式会場から僕達は退場する。

 そうじゃないと、集まった人達が会場から出て行きにくいからだ。


 そんな僕らに向けて、あちこちから声が掛けられた。


「王様~っ!」

「ケラスィン様~っ!」

「結婚おめでとうございます~っ!」


 目の前の顔は皆が笑顔。

 声を掛けてくれた方に手を振りながら僕達は進んだ。




 ひと冬越え、更に季節は移って、昨年よりはだけど食料事情も落ち着いていた。

 独立するかと思われていた各州だが、どの州も独立する事なく、未だロウノームスに留まっていた。


 別に独立しても良いと思うんだけどなぁ。

 ロウは独立した州とも友好関係は続けていくつもりだったし。


 まあでも順調にロウノームスの政治体制に組み込まれていった、各州の代表者さん達を今更手放すのは痛いよなぁ。

 皆さん本当に優秀な人達だから。


 雇用契約問題をバシバシ捌き解決していった代表者さん達は、今では王都の人達にも大人気となっていた。


「あの州の展示は是非見に行きたい」

「州代表のあの人は上手いらしい」


 などなど今回のお祭りでも王都中から一際注目を集めている。




 今回北の大陸祭りの開催が決定した時、各州と王都との人の行き来が増える事はほぼ確定となった。

 そのため少しでも行き来がしやすいよう、街道整備は優先事項の1つとなった。


 特に優先して行っていたグリオース・オリエースト・オシウェストの、3州への街道整備は元々順調だったものの、再度問題が無いかの確認と打ち合わせが行政府で行われた。


 もちろん、3州の代表者であるテンパリトさん・アプエールさん・ボルジウムさんも含めてだ。


「街道整備はどうなってる?」

「ああ。迂回路が少なくなって、だいぶ敷設予定地が変わった場所もあるが順調だと聞いている」


「街道の位置が変わってきてるってこと? じゃあ、早めに通す場所を確定しとかないと、州の方からの街道と繋げるのが難しくならない?」


「そうだな。州からの街道は今どこを通っているか分かるか?」

「今のところ、この当たりで街道整備を行っているはずです」


 行政府の人達がロウノームスと州周辺の地図を指差しながら答えた。


「ふむ。王都からの街道はここを通る予定だから、このまま進めると少しずれるか」


 と、なると~?


「じゃあ、間のこの村に向けて街道を進めていくのはどうかな?」

「うむ。変更は少なそうだし、良さそうだ」


「街道が伸びるスピードはそれじゃなくても早い。安全確認だけは怠るなよ」

「はい。お任せ下さい」


 話し合い後すぐに街道敷設の下見が行われ、まず通す場所の確保が行われた。


 街道沿いとなる予定の住人達の中には、自主的に材料を集め出してくれたり、少しずつ地ならしをしてくれたりと準備を始めてくれる人も出始めている。

 今でも街道が延びるスピードは早いのに、更に延びるスピードが速まりそうだ。




 開催式会場に集まってくれた皆からは見えない位置まで歩いて、早速僕はケラスィンに問いかける。


「ケラスィンは何かお祭りで見たいものはある?」

「そうね。料理の大会に行きたいわね」


「僕も。特にコメを使っている店や物産展に行ってみたいんだよね」

「私は魚を使った所の見学に行ってみたいわ」


 希望を出してくれたケラスィンに僕は同意する。


「お魚いいよね~」

「あと海行きで一緒に行った人達とまた会いたいの」


「分かる範囲で会いに行こうかっ」

「ありがとう。嬉しいわ」


 うんっ! 笑顔がかわいいっ!

 ケラスィンの笑顔が見たいから、海行きに付き合ってくれた人達がお祭りで何をしているかを、何としてでも調べるよっ!


「それから全てのお祭り会場を覗いてみたいわ」

「それは僕もっ」


「楽しみね、エイブ」

「うんっ。楽しみだね、ケラスィンっ」


 開催期間内にお祭りの催し物の全てを1度はのぞきに行っちゃうぞ~っ!


 という事で、開催式会場を出たら早速移動~っ!

 どんどん回るぞ~っ!




 まず最初に顔を出したのは街道整備の展示会場。


「親方、お疲れ様ですっ」

「おう。ご結婚おめでとうございます、ケラスィン様っ」


 北の大陸祭りに合わせて、技術見学と発表に親方達と技術職人さん達が王都に帰って来ている。


「街道を使って帰ってきた感想は?」

「早いわ」

「馬車の揺れも少なかった」


「たまには、ご家族の顔を見に帰ってきて下さいね」

「そうする」


「現場もわしらがおらんでも、作業をある程度進められるようになっているしな」

「それはすごいですね」


 まあ街道整備を担っている人全てが帰ってきたわけではない。


 作業の進行を担う人達は、今回のお祭りに不参加になった。

 どっちにしろ北の大陸に生きている全員が、お祭りに王都へ押し掛けて来るなんて不可能なんだけどね。


「見て回っても良いですか?」

「もちろんだ」


 親方から承諾をもらい、僕とケラスィンは展示品を見ていくことにした。





出待ち


「う~ん。やっぱり神殿だと後ろ姿が多いな」

「まあ、お出かけのお見送りだからねぇ」


「お見送りはできたんだ。今度はお迎えもしたいよな」

「今向かったのは街道整備についての展示会場だろ?」


「予測したやつ多そうだな。道沿いがずっと見物人でいっぱいだ」

「馬車で向かったから、お迎えはもうできないよなぁ」


「それで? お2人が次に向かうのはどこか分かる?」

「う~ん。小腹が空くのはまだだろうしなぁ」


「いやいや。展示会場を見て回ってる間にも、いっぱい差し入れされるだろ?」

「お2人に食べて欲しいって皆言っていたものねぇ」


「う~ん。行きそうな所に先回りしといてお出迎えするか!」

「行きそうな所というと~」


「魚釣り競争の結果発表には必ず行きそうだよね」

「まだ始まっても居ない。結果発表はだいぶ先だぜ」


「競争関係は、王様や王子様達が結果発表するって聞いたぞ?」

「すげぇっ! 行きたいなっ!」


「飛び込みで入って優勝すれば、王様とそばで会えるってことかっ!?」

「飛び込み参加してみるかっ!」




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