第77階層〈粘絲八眼の魔窟〉
やりすぎた感がwww
リュートの本気重圧の感覚的には全身を焼け火箸で刺されているうえにドライアイスに埋められ酸素濃度を死なないギリギリにされて山に押し潰される感じ。
若干グロいかも注意だお?
‐第77階層〈粘絲八眼の魔窟〉‐
ヤバイ・・・。抜けるまでMP持つか・・・?
「みんなどうしたの?早く行くよ?」
いや、お前の重圧をどうにかしてくれ・・。
「シャナ。後ろ二人意識飛ぶぞ。」
「了解。起こしてくる。」
淡々と歩く集団の中で、シャナが立ち止まる。一瞬の後、小さな打撃音。
「うぅ・・・。すいません。」
「ごめんなさい。」
「気にしない。でも、あぁなったら止められないわ。ごめん。」
皆の顔色は優れない。これでも結界で9割軽減しているんだが。
少し先を行くリュートが一瞬ぶれる。
「もう、帰りてぇ・・・。」
オレの呟きは誰にも聴き取られず虚空に溶けていった。
****
この階層に入った時、リュートはまだ普通でいたんだが。
〈粘絲八眼の魔窟〉
その階層名にオレとリュートを含めた数人が怪訝な顔をしたがすぐに気にしなくなった。
オレ達は天井までの高さが30mを超すであろう洞窟の中を進んでいた。天井はかなり入り組んだ形をしており何かが隠れられることは容易に予想できたが、オレ達ははっきり言ってこのへんならまだまだ無双出来たため気にせず進んでいた。ペースを上げるため絶対者組が先頭に立ち、低レベル組、超越者組の順に並び加速系補助を重掛けし、時速80キロほどで疾走していた。
もちろん、そんな速度で横には広くない洞窟内を走ると低レベル組が曲がり角で激突するが、それを超越者組が回収しつつどんどん奥へ進んで行った。
そして15分ほど走ると初エンカウントした。現時点でエリアの1割と言った所だろうか。
リュートが唐突に停止し、それに合わせて全員が停止する。
ボトリッ・・・
そんな音を立てて、敵が落ちてくる。
まず目につくのはその半透明の身体。中で内臓が蠢いているのがわかってしまう。瓢箪を平たく潰したような身体に、8本のひょろりと長い足。朱く明滅する無機質な4対の瞳。異臭を放つ毒素を垂れ流す鋭い二本の牙。
「全員オレの近くに集まれ。」
オレは言葉と共に重圧系軽減結界を無詠唱で張るが、リュートの姿がぶれると共に耐え難い重圧が放たれた。敵は跡形も無い。
オレの方へ動き出そうとした皆が数人を除き倒れる。結界の効果範囲にいたのはシャナのみ。
「・・・。行こうか。」
リュートが振り返らず歩き出した。
「はぁ・・・。シャナ、ヘタレ共を回収。進もうか。」
「うん。・・・はぁ、欝だ。」
「同感。」
重圧系軽減に効果を限定した結界を張り、叩き起こした皆を引き連れリュートを追いかけた。
****
最初の敵との遭遇から全く敵の姿を見ないが、リュートが時折ブレるのを見ると索敵範囲に入った敵を瞬殺しているのだろう。
全く、こいつの蜘蛛嫌いには呆れるな。オレも嫌いだけどさ・・・周り巻き込むなよ。
「カイトー・・・。今日はどこまで行く予定?」
「とりあえずここを抜けないと帰ってもあのままだろうな。」
「・・・だよね。貫徹確定。3日くらいかぁ。」
「「欝だな(ね)」」
ハモった。
オートマッピングを確認する。現時点で突き当たり17回、踏破率18%。
「ボスフロアが表示されなくなったのが癌だよなぁ。虱潰しになってから進捗上がらねぇし。」
「75階層までは一日2,3層行ってたからね。」
「ふむ。50階層まで7日しかかかってないしな。大陸の10倍あるのなら残り20%といった所か。面積だけなら多少マシだな。」
「復活したか。まぁ早々上手くは行かなそうだ。ここでアイツの苦手な物が出たなら、3~4層進んだら第二のリュートが出るだろうな。」
至近距離でリュートの重圧を受け超欝モードだったゼトがまだ若干低いテンションのまま話に入ってきた。皆無言の割に会話を聞いているようだ。
「さて、面倒いから補助かけてサクッと逝くかい?」
「オールライト。補助多重?」
「餅。」
「(じゅるりっ)」
フィーネ・・・涎・・・。確かにイントネーション「餅。」にしたけどさ。
「オレは結界の維持で手が離せないからお前ら任す。」
「おk。片っ端からいくよ。この人数なら730%くらいにはなるかな?」
「残念。Max500%だ。少しセーブしな。」
「了解。」
シャナの指示で移動補助スキルを片っ端から掛けていく。滅多に補助を使わないシャナの指示のため、聞いている限りでは529%程か。よく出来たほうだな。%に関係なく上昇するスキルを追加するよう指示しておく。
「こんなもんだろ。意外とみんな知らないが補助効果は上昇率に限度がある。基礎上昇系を効果の低さで甘く見ると痛い目見るぞ。」
「うん。いっつも任せてたから忘れてた。」
「だろうな。」
会話をしながら移動速度を上げていく。リュートは高速で離れていくため追いかけるのが大変だ。
「リュートにもしっかり補助かけたらダメだろう。速すぎるw」
「やらかしたw」
「行くぞ。」
軽装のゼトがリュートを追いかけて走り去る。
「・・・ん、行く。」
重装のフィーネがゼトに軽く追いついて駆けていく。
「あの人達規格外ですね。」
移動速度確保のために、普段着になり補助魔具をジャラジャラつけた低レベル組が走りだした。
「行くか。」
「だねぇ。」
オレもシャナに声を掛けて走りだした。
*****
(あぁ・・・苛々する。)
視界に何か映る。
〈刹那〉を使い〈閃〉の間合いまで詰め、一撃で消去る。元の位置に戻る。
もう何体殺ったか。数えてすらいないが200を超えたか。
いつからだっけ?ダメになったの・・・。もう覚えてないや。
どうして眼が8つも・・・・?複眼なのに・・・。
なんで眼と足が同じ本数なんだ・・?作為性は・・・・まぁ感じないけれど。
どうしてだろう?ほとんど無意味に拒絶してるんだよね・・・。
とにかくイヤなんだよ。何処がとかもうわかんないし。
「しつこい。」
100m以内に入らないでくれないかな!イライラするよ!ホントに!
*****
「どのくらい進んだと思う?」
「あー47%くらい?」
「妥当だな。後ろの連中大丈夫か?」
ゼトがチラリと後ろを向く。相変わらずこのゲームの仕様はおかしいと思うんだが。
重圧を実際重圧として精神的に作用させるってどういう事だよ?身体が重くなったような錯覚と裏側から焼けつくような感覚。冷や汗出まくって気持悪くなるんだよな。
「リュートの速度が上がってきてるし今日中に着くかもな?」
「w有り得そうで怖いね。たまに異常に引きが良いからなぁ。」
会話をしながら切れかけていた補助効果を掛け直す。セイが全く会話に参加してこないために違和感がある。真っ青な顔で若干俯きながら淡々とついて来られると正直、不気味だ。
「そういえば、今更だけどリュートの重圧喰らったの初めてか?」
「・・・・・初めてでは・・・ない・・・・・・かな?」
それは当たり前だ。キレた時の重圧は初みたいだな。リアルなら殴って黙らせてもいいんだが。こっちじゃステータス的に無理だしなぁ。他の奴らは・・・近づけないか。しっかし相当参ってるな。MP気にしてる場合じゃないかもしれんな。
「ゼト。お前も張れるか?」
「あぁ。お前と比べると大分貧相だがな。」
「構わん。オレだけだと後ろが先伸びる。」
「そうだな。」
ゼトが詠唱を開始するのを聞きながら、前に行ったシャナに声をかける。
「おーい。どうだ?」
「あーボス引いたかも?風が大きめの気配捉えた。後60秒でMP切れる。」
「おk。切っていいぞ。」
シャナの周りで渦巻いていた紅い風が霧散する。
「ラスト逝きますかい。」
「「おー。」」
ゼトとシャナの気の抜けた返事と共に座標転換でリュートを含めてシャナが気配を感じた辺りに飛ぶ。
カイトがやらかした事に気づいた時にはもう魔法は発動した後だった。
*****
座標転換
この魔法は二箇所の座標空間を入れ替える呪文だ。意思を持って抵抗しなければ問答無用で転換できる。そしてこの魔法は周囲の魔力に働きかけて効果範囲を広げて発動される。
つまり、周囲に魔力を放出して造る結界系と恐ろしく相性が悪い。さらにカイトは座標転換に意識を割いていた。つまり対重圧結界は注がれる魔力から勝手に維持されていただけである。もちろん座標転移の発動に魔力は奪われ霧散する。
ダメ押しとばかりに魔法使いとして遥かに格下のゼトの魔法など言わずもがなだw
「ぅぐおぉぉぉ!?!?!?!?!!」
「ぬぐぅぅぅぉぉぉぉ!?!!?!?」
「ちょぉぉぉ・・・!?うぇぅぅぅっ!!!?」
「っ!?」ドサッバタッガクッ
過去、絶対者達を数名を除き失神させた、リュートの本気重圧(想造&投影補正付き)が容赦なくカイト達に襲い掛かった。ドンマイw
「何してるの?だいじょぶ?」
「ぉおぉぉぉまあぁぁぁえぇぇぇだあぁぁぁーーー!?」
「はぁ?いいからさっさと殺るよ?」
「カイト・・・。気絶していい?」
「やめいっ!アイツと二人きりか!?」
ゼトなどもう既に意識がない。
「・・・ゼト。・・起き・・・・て・・・(バタッ)」
シャナもゼトを起こそうと手を伸ばした形で力尽きる。そこで唐突に重圧が切れる。
そこに立つのはリュート一人。カイトすらグッタリと膝を付いている。フロアボスは確認する前に殺ったようだ。早えぇよ・・・。
「さぁ次行ってみよー!・・・あれ?みんなどしたの?」
「お前のせいじゃああああーーーー!!!!!」
カイトの咆哮が響き渡った。
感想・訂正・批判・死刑宣告いつでも受け付けておりますれば。
おりますれば。ってどういう意味なんだろ?