Re:Re;〔群狼〕とハーモニクス。
ずいぶん、時間が空いてしまった。もーすわけねぇだ。←誰だよw
5分ほど歩いただろうか。
周りには背の低い草だけが生えた開けた場所がポツポツと増え始めていた。
「リュート?まだ?」
シャナがそう問うと、リュートはニコニコしながら、
「多分この辺かな?」
と答えた。
それを聞いていたカイトは(多分じゃないだろ。)と思っていたが、口には出さなかった。
「カイトー?顔に出てますよぉ?リアルじゃ頑張ってポーカーフェイスしてるのにね(笑)」
「ログに(笑)(わらい)が付いてるぞ!全く。…背中に気を付けろよ?」
リュートはクスクスと笑いながら
「は〜い。」
と返す。
笑い方や仕草が違和感なさ過ぎて、中身を知っているカイトとシャナは溜息を吐いた。
そして暫く行くと、リュートがピタリと止まった。
「来るよ。」
一言、言うとリュートは周囲に気を配り始めた。
森がざわめく。
リュートの目配せと共に、広い所へ素早く移動する。
「数は?」
シャナが問う。
それにリュートは苦笑し、
「判んない(笑)5は余裕で越えてるよ。」
カイトの叱責が飛ぶ。
「さっさと構えろ!かなり多いぞ!」
「うぃー。」
「んー。」
二人はユルユルと武器を構える。
「じゃーねぇ…。私が前でシャナっち後ろだぬ〜。カイトはサイドを足止めで宜しく。」
「妥当!了解!」
「あ〜、はいはい。」
素早く陣形を変える。
一直線。それはそのままなら防衛に向かないが、カイトの火力により前後のみに敵を集められる。後は叩くだけだ。
「合い言葉は?」
リュートが問う。
「楽しく!」
シャナが双剣の切っ先を敵に向け言う。
「虐殺!」
カイトはフォーススフィアを大量に展開しながら叫んだ。
*******
三人はそれぞれ敵をフォーカスする。
LV5〔群狼〕◇ターゲット
三人は視界の片隅に表示されたそれにほくそ笑む。なぜなら、今回の達成条件には、群狼5匹の討伐が含まれているからだ。ステータスのターゲットの文字がそれを示している。
一斉に襲いかかって来る群狼達を、シャナとカイトは手数で、リュートは技で、倒していく。あっという間にクエスト達成条件に到達したが、終わるわけもない。
群狼自体の能力は低いが、数の多さとある程度の連携により、初心者にとってみれば、脅威であった。それがいま、リュートたちは見えるだけで30匹ほどの群狼に襲われている。
「まだ、とりあえずノーダメだね。頑張ろー♪」
リュートの言葉に二人が苦笑いする。口には出さないが、明らかに数が多すぎる。逃げ道もない。
だが、三人の顔には笑顔が浮かんでいた。
#無月龍人#
おっかしいなぁ~?こんなに出現したっけ?
迫り来る群狼を切り払いながら考える。
設定上は一度に1~6匹程度しか出ない筈の群狼が、視界内だけでざっと30匹はいる。
敵levelや出現数などは、秩序と調和を管理しているハーモニクスの管轄だ。
(ハーモニクス?)
声に出さず、問い掛ける。この世界のデータは全て収集されているので、これで気付く筈だ。
だが、返答がない。
仕方なく、思考の一部を世界とリンクさせる。幾つかのポイントにアクセスする。
ふふふふふふ・・・。
頭の中へ小さく響く声。ハーモニクスだ。なんだか分らないが楽しそうだ。人がたくさん入ったのは、今回が初だ。それまでは私が調整のために何度も出入りしていただけだ。混乱してるかも、とは思っていたが、ただ単にハイになってるだけみたいだ。
「リュート!」
カイトの声でチラッとフォーカスする。カイトのMPが確実に減っていた。あと、10分保つかどうか。
若干薄い二時の方へ切り込む。
「できるか分んないけど、抜けるよ!」
カイトが素早く反応し、敵を誘導する。シャナがカイトに近づく敵を切り倒し、徐々に抜けてくる。それに合わせ薄いほうへ切り込んでいきながら何人かのAIに問い掛けハーモニクスの対処を頼む。包囲の外側へ出ると同時に、まだ内側にいるカイトとシャナの為に外側から切り崩していく。チラッと簡易ステータスを見ると、レベルが大分上がっていた。熟練度を調べる余裕はないが、恐らく幾つかのスキルが使えるようになっているはずだ。
当てずっぽうにスキルの始動モーションを入力する。そういえば説明してないが、武器スキルなどの発動には多少の制限がある。一定の動きをするため仕方ないのだ。その代わり、キーがワードとモーションの二種になる。発動の仕方は使い手次第という訳だ。正確には初期のスキルでは、モーションキーは無いのだが。試して発動したのは、剣系スキルのシャープ、篭手系スキルのブロウだった。シャープは連撃系の4連撃だ。素早い踏み込みから、袈裟、横一文字を行い、少しずれた位置を逆になぞるスキルで、2mほど前進する。前に進む量や、逆になぞり始めるタイミングはある程度調節可能。ブロウは、重撃系単発だ。一歩踏み出し、人で言う鳩尾の辺りに、拳を叩き込むスキルだ。出が早く威力も高いが、射程の短さとスキルディレイ(技後硬直時間)の長さがネック。とあるスキルでディレイを上書き出来るが、しばらく使えないスキルなので今回は割愛かな。
スキルの説明をしている内に、大分敵の数が減ってきた。おそらくハーモニクスを誰かが止めてくれたのだろう。増援が来ないため敵の数があっと言う間に減っていく。カイトのMPはもうすでに無いに等しい。
「カイト!アタック&シュート!」
「はぁ!?あぁ!了解!」
一瞬意味が解らないという反応をしたが、伝わったようだ。要は、武器で殴りながら魔法を使えという事だ。普通、初心者は出来ないぞ?なんか普通に出来てるみたいだけどwまぁ、出来ると思ったから指示したんだけどねw気にしたら負けさ(笑
最後の群狼を切り伏せ、剣を一振りして鞘に収める。血糊は付いていないがやってしまう。しかたないのにゃ~(笑
「ふー。大変だったね。」
「大変どころじゃないだろう!バグじゃないのか?」
カイトが若干切れ気味です。シャナは終了直後から黙々とアイテム回収してるわ。マイペースねぇ(笑
「ちょっとテンション上がり過ぎただけよー。見逃したげて。」
「…あぁ、AI制御だったか。」
「そこから!?」
若干不毛な会話をしながら、アイテム回収に加わる。
「多過ぎ。もう持てないよ。どうにかならない?」
シャナのアイテムリストが一杯になったようだ。自分のアイテムリストから、袋を取り出して言う。
「初期アイテムの中に素材袋(15)ってのがあるから、それ取り出して入らない物詰めてね。袋系アイテムは、容量が体積だからね。あと、仕舞うと中身アイテムリストの中に出ちゃうから気をつけてね。」
シャナは説明を聞きながら袋を2つほど取り出して、どんどんアイテムを放り込んでいく。たまに、素材に混ざってドロップしている、スローピックⅠ(投擲系飛針最低ランク)を放り込もうとしてはじかれているが。弾かれたスローピックⅠを拾いながら、補足を入れる。
「素材袋は素材しか入らないから気を付けてね。何でも入る万能袋も有るけど、高すぎる上に容量少ないんだよねー。あの子達も良く考えて作ってるわー♪」
「ふーん。まぁ、名前見たら入れれる物判るんでしょ。最初は素材袋だけか…。」
「そ。何種類かはお店で買えるから。お金に余裕出来たら、見てごらん。」
「ういー。」
シャナっち、君は酔っ払いかw
「珍しく顔に出てるぞ。」
「こりゃぁ、失敬(笑)」
目ざとくカイトに指摘されるが、苦笑いで返す。カイトは何故か若干拗ねているように見えた。何でだろ?(←変なところで鈍感。)
アイテムを拾い終え、帰り道を歩き出した。
また、設定増える予感(笑