Re:BS/本気(マジ)になりなよ。お兄さん?お嬢さん?
灰斗、紗那の単独戦闘。なんというか……酷い。
おっと、読者にご挨拶を。
私は蒼空の旅団の一員、灰斗です。
龍人ではありません。
詳しくは蒼空の旅団のマイページにあると思います。
では、本文へどうぞ
#第三者?視点#
鉄鉱石は森に幾つか有る、隆起岩で採れた。リュートが何でも知ってるせいで、探す楽しみがないなぁ。とシャナとカイトは思ったが、特に口には出さなかった。どうせ、それっぽい理由言われて終わりだ。
「あ〜、また猪だよ。今度はカイトの実力を見せて貰おうか?」
カイトは、「はあ…だる…。」と言いつつ、杖を構えた。
「今度は肉片も残らず消してやる。」
「データに血肉は無いけどね(笑)」
カイトの発言にリュートが苦笑しながら答える。
シャナは、観戦する気満々で丁度良い大きさの岩に腰掛けていた。
「じゃあ、頑張って〜。」
リュートの緩〜い応援と共にカイトは駆け出す。
猪がカイトの接近に気付くが、カイトは持っていた長杖を突き出す。
「はぁっ!」
データでは表せない程の衝撃を受け猪が怯む。
「カイトー?若干リアルの能力を使ってるぞ?なんで教える前から使えんの(笑)」
カイトが使ったのは、最初から全てのPCが使える隠しスキル〔想造/イメージング〕と〔投影/トレース〕である。簡単に言えば、考えたことがゲーム内に影響を及ぼすわけだ。カイトの場合、槍で突く動作をイメージしながら杖を突き出したため刺突の威力が上がっただけである。攻撃をイメージしそれを動作に表す。たったそれだけだが、使いこなせば非常に有用だ。
それをカイトは意識せずに使えている。
「力を此処に!〔フォーススフィア〕!」
カイトの想造が詠唱と共に投影され、複数のフォーススフィアが作られる。
「せいっ!」
詠唱の隙にカイトへ向き直ったカレッジボアを長杖が強打する。キーなどを使わずに砕牙が発動していたが、気付いたのはリュートだけだった。脚を打たれたカレッジボアは地面に膝を付く。
「死ね。」
カイトの一言と共にカイトの周りに固定されていたフォーススフィアが射出される。熟練度の低さから、ほぼ直線にしか飛ばないフォーススフィアはカレッジボアの正面へ殺到する。
次々とフォーススフィアを撃ち出しながら、カイトは追加で詠唱をする。
「力を此処に〔フォーススフィア〕」
たった一度の詠唱で8個のフォーススフィアを作り出し打ち出す。製作可能な範囲であるカイトの周囲3メートルまでを全て使い、カレッジボアの頭部周辺に撃ち出しまくる。
「カイト〜もういいよ。」
カイトが60個程のフォーススフィアを撃ち出した所で、リュートからストップが入った。
「あぁ?どうした?」
カイトがリュートの方へ目線を向けようとする直前、カレッジボアが色褪せ始めた。
「ちゃんと断末魔の叫び上げてたよ?カイト実はトリガーハッピー?」
リュートがニヤニヤしながらカイトへ問いかける。かなり悪魔な笑みをしている事にリュート本人は気づいていない。
「んなわけあるか。」
カイトは素材を拾い仕舞ったあと、MP残量を確認した。MPは残り30程になっていたが、すぐに回復していっている。MPの回復速度補正はかなり良いようだ。
「カイトなら、1分位でMP完全回復するんじゃない?」
リュートがカイトのステータスを確認して言う。
カイトがニヤリとして観戦していたシャナを見る。シャナは戦闘終了直後から、植物などを採集していた。
「シャナ!次に敵が出たらお前の番だからな!」
シャナは特にカイトの方を見もせずに
「うぃー。」
と返事を返すのだった。それを見ながら、リュートがニヤニヤしていたのを二人は知らない。
******
#無月 灰斗#
森を歩きながら、先ほどの戦闘について考えていた。
明らかに初めと感覚が違った。まるで本当に現実で戦っているかのような錯覚。脳があるはずのない、筋肉の動きや関節の動きを伝えてくる。リアルでしか意味の無いはずの戦闘用の呼吸法を無意識に行っていた。
杖で突いたとは思えない確かな手応え。柔らかいと固いの中間のような微妙な固さの地面の感触。腕を振るう時に感じた空気抵抗。見えていないフォーススフィアの位置を認識していた。
いくら多くのモーションキャプチャーをしていようと再現出来ないような極繊細な動き。意識にダイレクトに追従して来るPCボディ。
ログイン当初ぎこちなかった動きがどんどん滑らかになっている。まるでもう一つの現実のような気がして来る。
あの時、明らかに私は戦いの空気を感じていた。命のやり取りをしているような緊張感を。
確かに、これは軍事利用出来ないな。リアル過ぎる。これを使えば、戦闘狂を量産出来る。
逸れたな。
さっきの戦闘では、一度の詠唱で複数フォーススフィアを作れたが…何故だろう?これはリュートに聞くのが早いか?
「なぁ、リュート。」
「んー?なあに?」
リュートがニヤニヤとこちらを見ていた事に気付く。
コイツ、こっちが訊きたい事の予想、ついてやがるな?腹立つな!
「お前の顔すっげぇ腹立つ!」
「言いたいのはそんな事じゃないでしょ?」
苦笑いしながら言ってくるのがなおさら腹立つ!だがこのままだと話が進まない。我慢我慢…。
「何でさっき一度に沢山作れたんだ?」
リュートは何でも無いことのように、
「それは、仕様です(笑)」
と言った。
全然説明になってないだろ。説明する気あるのか?
「PKするぞ?」
「あはは…勘弁して(笑)説明するから。ね?」
そんな可愛く上目遣いでお願いしてきても、正体を知っている俺には効果は無い!が、やはり話が進まないので勘弁してやろう。…今は。
「で?どういう事?」
「あれはねぇ…
*****
#無月 紗那#
リュートがカイトに説明しているのを聞き流しながら、周りを見渡す。どうやら、さっきの戦闘での妙に滑らかな動きについてらしい。
ログイン当初、反応に若干のタイムラグがあったPCボディは、今ではタイムラグが感じられないほど思いどうりに動く。指先の微かな動きすら再現する程に。また、視覚は初めは高密度のCG映像程度だったが、今ではリアルに近い情報量だ。
これに気づいているプレイヤーは何人いるのか。
リュートの話しを要約すれば、AIが常識情報の収集を行い、バージョンアップを行っているらしい。
また、その過程で隠しスキルの想造と投影が役立っているらしい。
「っと、何か来るよ。」
リュートの一言と共に、目の前にデカい鹿(?)が現れた。
体長2Mくらいか?角がデカい。1Mはあるだろう。複数に枝分かれし、攻撃範囲は広そうだ。
「なにあれ?私、貧乏クジ?」
リュートをチラリと見て言うと、ニコニコしながら頷いていた。
「うん。近接キラー。頑張って!体力は高く無いけど、攻撃力あるから!」
「笑顔で言うな!」
とりあえず、調べるか。
巨大な鹿を見ながら、頭の中でフォーカスという。別に口に出す必要がない事に気付いた(笑)
LV3〔ウォールホーン・バンビ〕
「この図体で子鹿かよ!おかしくない!?」
「ふふふっ。成体はおっきいよぉ〜。」
その返答は何か変だ(笑)
そうこうしているうちに、鹿がこちらに気付いた。正確には気付いていたが、相手にするか悩んでいたようだ。
行動が嫌にリアルだな。
「まぁ良い。やるよ。任せて。」
「頑張って。」
「頑張れ。」
短く意思疎通をはかり、背中の二本のショートソードを抜く。
こちらの敵意を感じ取った鹿が臨戦態勢に入る。
「ちゃちゃっと終わらせるか。」
リュートとカイトが離れたのを横目で確認し、無造作に鹿に近寄る。それに反応し、鹿が意外と素早い動きで角を振り上げる。
攻撃を諦め、角の範囲ギリギリに陣取る。鹿はにじり寄ってくるがこちらは動かない。それにじれた鹿は力強く角を突き出す。
それを下へ、まるで地面にべばりつくように(実際べばりついているのだが)避ける。そこから、地面に突き刺した爪先を基に曲げていた足を伸ばして前に滑る様に移動する。
鹿の顔面がこちらの間合いに入ると同時に、立ち上がり両手のショートソードを鹿の眼に突き刺した。悶絶し角をデタラメに振り回す鹿の横を通り抜け、背後から連続して斬りつける。
「裂爪!」
剣が赤い燐光を纏い、鹿を切り裂く。
「せっ!やっ!はぁ!」
振り下ろした剣を跳ね上げて切り、追従するように左の剣が同じ場所を切り裂く。そこから体を回転させ、一文字に刃を走らせる。最後に勢いと体重の乗った両手の剣による振り下ろしを叩き込む。
それを受けて尚、怯まずに振り向いた鹿の角目掛けてスキル付きで切り上げる。
「砕牙ぁ!」
黄色い燐光を纏った両手の剣が、鹿の大きな二本の角の根元に直撃する。
乾いた骨の折れるような音をたてて、二本の角が宙に舞った。
「せやっ!」
振り抜いた剣の中、右手の剣を引き寄せるよう、袈裟に振り下ろし、体を左に捻った状態にする。
「瞬迅っ!」
右の剣を振り上げながら、それを追うように左の剣を突き出す。青い燐光を纏った剣は、右は顎の辺りに当たり、斬撃エフェクトと混ざり淡い紫のエフェクトを散らし、左は喉を斜めに貫き、同じ色の刺突エフェクトと混ざり濃い青のエフェクトを散らした。
鹿は短い呻きを上げると、脱力し地面に横たわった。消えないのを見て、ショートソードを頭の本来なら脳のある部分へと突き刺した。
鹿は少しの間痙攣すると、すっかり動かなくなり、色褪せてボロボロと崩れ去った。
「んー。カイトよりは弱いな。予備動作が長すぎる。」
「いや、私達が強すぎるだけだよ?今時、戦闘経験のある大学生なんていないからね?」
そりゃあそうか。
良く考えると、小学生から木刀で殴り合ってる家庭なんてないな。
私達は天才ならぬ天災だったからな。今では落ち着いたものだ。一人を除いて。
「じゃあ、そろそろクエストをクリアしようか。群狼はもう少し奥だよ。」
私とカイトは頷いて、先に歩き出したリュートを追いかけた。
***キリがいいので一度切ります(笑)***
ちなみに。
本文を書いたのは、龍人です。私ではないです。
私は添削をして、これを投稿することしかしていません。
私の担当は設定と技名、それと呪文ですから。
では、失礼します。