BS/戦闘はえげつなく。
スキルじゃないけど、〔想造/イメージング〕と〔投影/トレース〕ってテクニックがあったりする予定。
あかさた軟骨。意味不明。
「さて、とりあえずチュートリアルクエストでもやって、初級スキルを覚えますか!」
リュートがそう言って立ち上がろうとし、カイトに腕を掴まれる。リュートは怪訝そうな顔をしたが、大人しく席に着いた。
「まずは、装備の確認だろうが。防具は全員布シリーズだろうが、武器はそうでも無いだろ。」
リュートが、カイトの言葉で初めて気付いたかのように頷いた。
「そうだね!こうゆう時だけは気がまわるよね!」
シャナがすかさず、
「ほめるか、けなすか、どっちかにしなさい!」
とツッコむ。
素晴らしいコンビネーションである。良いか悪いかは置いておいて。
「はぁ…。まずオレだが、ロッドだ。戦闘は基本的に魔法。MPの回復速度にボーナスがある。次リュート。」
カイトが自分だけ言ってさっさと次を促す。…是非もなし?
「私はねー、ロングソードにガントレット。戦闘は近接だね。近接攻撃にアシストが入るよ。じゃあ次、シャナ。」
「私は、ショートソード二本。戦闘は同じく近接。装備付加効果にボーナス。」
カイトが少し考えて、
「かなり攻撃寄りのパーティーだな。防御強いのはリュートだけか。まぁカバーしっかりやれば問題ないかな。」
と結論付けた。結局攻撃系統が分かっただけだった。
「じゃあ出発!」
三人は酒場を出た。
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ギルド(基本的なクエストを受ける所。報酬が平凡だが、依頼内容が明確なため安定した収入源。)に行くと、案内窓口がごった返していた。リュートは迷わずクエストカウンターへ行き、何かのクエストを受けて来た。
「チュートリアルクエストの三人用のやつ受けてきたから行こうか。説明は歩きながらね。」
カイトとシャナは顔を見合わせ肩を竦めるのであった。
*******
#無月 紗那#
ギルドから出るとリュートが嬉々として喋り出した。
あぁ、テンション高い。私たち(私と灰斗ね)はリュートに雰囲気をぶち壊されたのに!(でも、灰斗なんて入った時の驚きにすらほとんど浸らせて貰えなかった分、紗那はマシと言える。)
「まず、今回のクエストね。依頼の受注、達成、報告、報酬の受け取りで構成されてるよ。受注は今回は訓練場の教官だね。達成内容は、陽向草15個の採取に、鉄鉱石10個の採掘、群狼5匹の討伐だね。報告は受注者と同じ。報酬の受け取りはギルドでするよ。まずはここまでOK?」
「「んー」」
私たちは気の無い返事を返すが、リュートは気にした様子も無く次を話し出す。
「初期で覚えてるスキルは、ほとんど系統分けの無いスキルだから。ウエポンスキルに瞬迅、裂爪、砕牙、強弾、シールドバッシュで、マジックスキルはフォーススフィアで、ハイドスキルにフォーカス。これだけ。まぁ基本的な攻撃技と相手のステータスを見る技だね。フォーカスは最初は名前とレベルしか分からないけど、熟練上がればHPとか他のステータスも見れるようになるよ。理解したかー?」
一気に言われてもいまいち分からないな。使って覚えますか。
「とりあえず分かった。使う時になったらもう一度教えて。」
「はいはーい。で、あそこが訓練場ね!」
リュートが、指差した先を見ると小さな石造りの砦のような建物があった。喋っている内に着いたらしい。
リュートもたまには役に立つな。まぁ役に立たなかったら、ぶち殺してるけどね。
******
#無月 灰斗#
オレ達は、教官に頼まれアルファード近郊の森に来ていた。リュートが嬉々として解説を始める。
「ここはね、〔芽吹きの森/リーフベル〕だよ。出現モンスターの種類は多いけど、一部を除けばLV1から5位だから私たちなら余裕かな。熊だけ気を付けてね!LV15だから。私たちでも苦戦するかも。最初は逃げるが勝ちかな。採取出来る物は、回復アイテムの材料とか消耗品の材料とか換金アイテムとかだね。採掘は換金アイテムの白亜石とか初級クラフトの材料の鉄鉱石とか武器の手入れに使う砥石とか。木材は色々取れるけど最初は杉位しか使えないかな。OK〜?理解したかー?」
「分かったから、さっさと達成しようぜ。初期じゃ魔法がクソもねぇ。」
何せ一つだけだ。使い勝手も良くなさそうだし。
リュートがクスクスと笑いながらこちらを見る。
「ふふっフォーススフィアは使い方次第にだよー。まぁ初期なら弱いけど。実は熟練MAXにしとかないと、メテオ系覚えられないとかは内緒だからね?」
いやいや、内緒なら言うなよ。メテオ系なんてあるのか。系って、バリエーションあるってことだよな?うわ、むちゃくちゃ気になる。
しかし、リュートが悪戯っぽく微笑む。
「でもね、フォーススフィアの最大熟練度は普通のスキルより遥かに高いから。覚悟しなきゃね?」
「うわぁ、鬼畜仕様きた。まぁ、他と合わせて地味〜に上げるさ。目に物見せてやるぜ。」
メテオ系気になるから。すっげぇ気になるから。やるしかねぇ(笑)
「ぁ、リュート?陽向草ってあれ?フォーカス便利だな。でも発動したりしなかったりはどうにかならないの?」
さっきから会話に参加していないシャナが陽向草を見つけたらしい。リュートがアドバイスをする。
「フォーカスは、人のステータス見るのと同じで、意識して見るだけで出来るよ。それで発動しなかったら、意識して見ながら“スキルセレクト〔フォーカス〕”って言えば発動するよ。あ、そうだ。フォーススフィアは“力をここに〔フォーススフィア〕”がキーだからね。」
「「うぃー。了解。」」
フォーススフィアのキーの簡単さに若干呆れるぜ。
シャナがぼそぼそと呟きながら、周りを見渡している。フォーカスを試しているのだろう。オレも周りの草にフォーカスを行う。
「おー、これは便利だな。陽向草はあれか。お前ら!さっさと集めようぜ。集める物多いし。」
周りをキョロキョロ見ているシャナとそれを見ているリュートを急かす。
「はいよ。」
「うん。」
それぞれ異なる返事をして、陽向草を集めに離れすぎないように散った。
*******
陽向草を集めるついでに、消耗品の材料もリュートに言われて集め、手にいっぱいのアイテムが集まった。
「リュート!これどうすればいいんだよ!」
少し遠くの方をふらふらっと歩いていたリュートに向かい叫ぶ。リュートは気づいてこっちに歩きながら、その辺の草や石を拾う。
「えっとね、見ててね。ほい。」
リュートは何かを言った後、目の前の空間(特に何か有るようには見えない。)にアイテムを投げる。すると、目の前の空間にアイテムが飲み込まれていく。
「これでOK。細かいやり方は、キーが“メニューセレクト/アイテムリスト”で、モーションなら人差し指と中指を揃えて少し下に下げてから上に上げると開くよ。アイテムリストはタグの一番上ね。覚えた?」
キーで開くと、青色のメニューが空中に現れた。アイテムリストの収納と書かれて囲んである部分にアイテムを投げ入れるとアイテムが飲み込まれていった。やり方は分かったので持っている物を全てしまう。所持可能なアイテム数は初期からかなり多いようだ。リストには欄が10個程出ているが、メニューの右上に1/10と出ている。一つの欄に陽向草なら最大999個まで入るようだ。最大所持可能数が分かるのは地味に親切だな(笑)
「じゃあ、次は戦闘してみようか。」
リュートの言葉と共に、人の腰位までの大きさのある猪が草むらから出てきた。
ターゲットじゃないのか。
「この子はね〜、草食だけど縄張り意識が強い上に攻撃力と体力が高いから、気を付けてね。行動は単純だけど。」
リュートの説明を聞きながら、フォーカスで敵を調べる。
LV1〔カレッジボア〕
となっている。細かいステータスは分からないが、さして苦戦しないだろう。ヤバかったらリュートが何かするだろうし。
「んじゃあ、やるか。」
「OK!」
「はいよ。」
返事と共に、左右にバラける。右にシャナ、左にリュートだ。足元の小石を拾い、カレッジボアに投げつける。ドスッという無駄に生々しい音が聞こえ、小さな打撃エフェクトが表示される。
「こんなんも、攻撃になるんだな。どの位のダメージだ?」
カレッジボアがこちらを向く。狙いは間違いなくオレだ。てか、若干目が合った。敵意半端ねぇ(笑)
「蹴ったり殴ったりでも、ダメージ入るよ。因みに、ダメージ入らなかった時はエフェクトが出ないから、それを目安に攻撃してね!」
リュートが律儀に説明を入れる。楽で良いわー。
「ほら、来るよ。」
シャナに注意を促されると同時に、右に軽くステップする。すると、直前までいた場所にカレッジボアが突っ込んでくる。
そこにリュートが側面へ走り込む。
「瞬迅っ!」
短い言葉と共にロングソードを突き出した。淡く青い光を纏った切っ先がカレッジボアの側頭部に当たり、刺突系のエフェクトが出る。リュートは攻撃動作が終わると同時に、そちらへ向いたカレッジボアの横を通り過ぎる。
「力をここに〔フォーススフィア〕」
オレの足元にフォーススフィアを出現させる。フォーススフィアは薄紫色の球体で、複数の帯状の光から形作られている。リュートがカレッジボアの横を通り過ぎると同時に、それをサッカーの様に蹴った。フォーススフィアは狙い違わずカレッジボアの側頭部(リュートが攻撃した所)に直撃する。
「せいっ!」
フォーススフィアが直撃し、怯んだ所へシャナの追撃が入る。スキルを使わない攻撃だが、速度と体重の乗った連撃が、しっかりとエフェクトを散らす。
「シャナ、やるぅ!スキル無しの初期ステータスでしっかりHP削れてるよ!」
連撃が入っている中に、フォーススフィアを6個程作る。
「裂爪!」
シャナが連撃の終わりにスキルを発動させる。淡い赤色の光を纏った刃がカレッジボアを切り裂くが(途中で怯んだため)怯まず、シャナに向き直る。そこに、リュートが走り込んだ。
「せいやっ!」
リュートが思いっきり、ガントレットで殴りつける。何も言って無かったが、ガントレットの淡い黄色のエフェクトからして、シールドバッシュだろう。
リュートのシールドバッシュで怯んだカレッジボアに、更に追加作成した、12個のフォーススフィアを今度は雨あられと降り注がせる。
「やるね。」
「すごい!すごい!」
ズドドドド…!
と着弾音が響き土煙が上がる中、シャナとリュートが賞賛の声を上げる。
「でも、甘いんだなぁ〜。」
リュートがそう言って、土煙の中へ入って行くと中から、
「裂爪!瞬迅!砕牙!せいっ!はっ!りゃっ!瞬迅!はっ!裂爪!」
と、容赦ない連撃の声が聞こえて来た。
少しして土煙が晴れると、横たわったカレッジボアの上に、リュートが座っていた。
「カイトの攻撃雑だよ?相手見えないとこっちが危ないんだからね!シャナみたいにスマートにやらないと。」
リュートはそういいながら、カレッジボアの首にロングソードを突き立てた。
カレッジボアは断末魔の叫びを上げながら少しの間痙攣すると、ピクリともしなくなり次第に色褪せてボロボロと崩れていった。そしてそこに素材が残されていた。
「死に方が、可哀想過ぎやしないか?オレはいいが他のプレイヤーにはキツそうな消え方だろう?」
リュートは素材を仕舞いながら答える。
「せっかくこんな環境で出来るんだから、死んだ時もそれ相応のリアクションをしてもらいたいじゃない。因みに、死に方はバリエーション多いよ。頑張ったから(笑)」
そんなことで頑張らなくて良いと思ったが、言わないことにした。
「次、どうする?」
シャナが更に喋り出しそうなリュートより先に質問する。
「鉄鉱石とろうか。こっちだよー。」
リュートは答えると同時に歩き出した。半ば呆れながらオレはシャナと苦笑いして、リュートについて行くのだった。
***また文字数的に一度切ります。ごめんね。***
クラフトスキルでカレッジボアを料理すると旨いらしい。
うまうま………かゆ…うま。