Re:BS/さぁ、ゲームスタート!
まだメインストーリーじゃないよ。まだまだ。
#無月 灰斗#
目の前が暗闇に包まれる。一つずつ感覚が削ぎ落とされる。そして視覚だけが暗闇の中に文字列を捉える。そこには…
さっさとキャラ作ってはいれよ。先に入っているから。
と、書かれていた。
初めての感覚に浸らせろよ。ぶっ殺してぇ。
灰斗はキャラ作りに専念し始めた。
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体が燐光に包まれ軽い浮遊感を味わう。次に地面に足が着いた時には、目の前に賑やかな街並みが広がっていた。
「おぉ、すごい。」
辺りを見渡す。広場のようだ。沢山の人が歩いている。地面は石で舗装されている。建物は恐らくレンガだろう。
「お〜い!こっちだよ♪」
見知らぬ女性が、こちらに手を振っていた。背中の中ほどまでの白髪、エメラルドのような輝きのライトグリーンの瞳。その目は間違いなくこちらを捉えている。
ライトグリーン?確か、私たちはファーストキャラをライトグリーンの瞳にするって決めていたな…。
白髪の女性が近づいてくる。容姿は中の上か。周りは美男美女ばかりというのに。半端な見た目にするのは少数派のような気がするが。
「カイネスヴェクス・アンメークリッヒカイトねぇ。よく、そんな長ったらしい名前にしたね。変なの。男の子なんだ?」
そう言って微笑む。その姿は少女のようだ。言っている内容は失礼だが。
「リュート・ダインスレフか。お前こそ、女じゃ無いか。つか、似合い過ぎて気色悪りいぞ?それにオレは男の子って見た目じゃないだろうが。」
若干不機嫌に言い捨てると、リュートは眉間にシワを寄せて上目遣いで睨んできた。
「それなら、私も女の子ですよ〜?カイトは、頭の中で女の子じゃなくて女か女性になってるでしょう。ふふふっ、一人称オレなんだ。かわいい♪」
なんで、わかるんだ。ムカつく奴だ。
「悪いかよ。ってか、かわいいって何だよ!ぶっ殺してぇ。」
リュートがクスクスと笑う。違和感が全くない。産まれた性別間違えてないか?
「ふふっ。知ってる?このゲームは意識しないと考えが顔に出るんだよ?えっとね、〈フィーリングスフィードバックシステム〉っていうんだよ?略してFFSね。」
えっとね、の時に、顎の当たりに人差し指をのせて首を傾げる。無駄に小動物っぽい。
「じゃあ、お前はそれが素か?」
リュートがまたクスクスと笑う。あぁ、無意味にムカつく。
「言ったでしょ?意識しないとって。あと、街中ではPK出来ないからね?」
っち、バレたか。まぁ良い。話が進まないからな。
「紗那は?てかお前本当に龍人だよな?」
リュートがニコニコしながら答える。
「私は龍人だよ。カイトが灰斗であることは、ちゃんと確認してあるから大丈夫。紗那はシャナだからね。酒場にいるから行こうか?」
GM権限だな。シャナか。みんな名前変わらねー。
待たせているようなので頷く。
「よし!こっちだよ♪」
リュートに手を引かれ、酒場に向かって歩き始める。場所がわからないから仕方がない。周りの視線は若干痛いが。無視だ無視。
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#無月 紗那#
酒場の端に座りオレンジジュースを飲みながら、さっきの事を思い返していた。
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紗那、いやシャナは龍人たちと待ち合わせ、《レーヴ・ギャラント》の最初の街、〔白亜の街/アルファード〕に来ていた。ここは、主要産業である白亜石を使った白い街並みが特徴で、規模は街としては小さめだが、初心者向けの施設がしっかりと整備されている。また、近くの山や森は換金アイテムの白亜石や回復アイテムなどの材料が沢山とれ、モンスターもそれ程強くない。っとここまでが解説書に書いてあったこと。
まだ街から出ていないため詳細はわからない。ただ、街のリアルさは想像以上で、入って暫く衝撃のあまり動けなかった程だ。他にも入って来ている人は多いが、皆一様に固まってしまっている。
(龍人、オーバースペック過ぎるよ。)
一通り感動し、今度は制作者に呆れてしまうのであった。
ふと、広場(初めてゲームを開始すると、広場の中央付近に飛ばされる)の方をみると、真っ白な髪の女の子が出てくるのを見つけた。その子は広場に出た所を見ると、初心者だと思われる(広場が混雑するので、広場以外の所にログインマーカーを打つ(設定する)ように初めに指示される)のに、特に衝撃を受けた様子もなく、何かを探す様に辺りを見回していた。普通、FFSによって感動が表に出るはずだが、表情はいたって平常だ。
その子の目が、こちら側を見て止まる。その瞳の色はライトグリーン。私を捉えると途端に笑顔になって、駆け寄ってきた。
「おーい。リュートだょー♪」
リュート…?マジか。
リュートと名乗った女の子は、こちらまで来ると、私をじーっと見て、
「うん。普通に可愛いね。面白くも何ともない。ただ可愛くて綺麗綺麗してるだけ。個性無いね。」
グサッときた。これは龍人だ。相手を意識して見る事で相手のステータスを開き、見る。
LV1リュート・ダインスレフ
ハイランダー(中)
HP128/128
MP64/64
筋力 18
耐久 16
魔力 14
耐性 14
俊敏 17
となっていた。
いきなり中位種かよ!間違いなく龍人だ。
「龍人?ふぅん。女の子で作ったんだ。中身は男でーす。って言いふらそうか?」
リュートはニコッと笑って返す。
「正解!名前はリュート・ダインスレフね!因みに、言いふらして構わないよ。私、気にしないし。紗那は…シャナ・エヴァイエか。名前の方は中々かっこいいね。」
言いふらしていいのかい。そういう所が変人たる由縁かな?
「酒場に行こう。ここは人が多いから。灰斗は私が連れてくるよ。」
と言って、私の手を掴んで引っ張って行く。
「わかったから、急かさないで。引っ張るな。」
「分かった。こっち!」
リュートは手を離し、そう言って歩き出した。
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それから待っててと言われて、渡されたお金で飲み物を飲みながら待っている訳だが。
「遅い。」
ログインしてから1時間ほど経っている。そろそろ飲み物代が怪しくなってきた。飲み過ぎたか。
そんなことを考えながら、オレンジジュースを飲み干した時、酒場の扉が開き、外からリュートと紺色の髪のエルフ(耳が長くて尖ってるから間違いないだろう)の男の人が入って来た。エルフ男は仏頂面で、眉間に皺を寄せている。
リュートがこちらに駆け寄る。
「シャナー?連れて来たよー!…何このグラス?」
私の前の円テーブルの上には、十以上のグラスがある。頼むと持って来てくれるが、回収してくれないのだ。
「ん。来ないから、ずーっと飲んでた。貰ったお金かなり使っちゃったぁ。にゃはははは…♪」
#無月 龍人#
私はグラスの中に、グリーンのボトルが混ざっているのを確認した。
「にゃははは…♪ぁははははははは…♪」
深紅の髪の少女は壊れたオルゴールのように笑い続けている。
「あらら…お酒頼んじゃったのね。シャナは笑い上戸かぁ。」
カイトは呆れ顔でグラスやボトルを片付けてもらっている。
「ニヤニヤしていないで、そいつをどうにかしろ。五月蠅くてかなわん。」
「はいはーい。」
まず、ステータスを確認する。
LV1シャナ・エヴァイエ
ヒューマン(下)
HP120/120
MP60/60
筋力15
耐久15
魔力15
耐性15
俊敏15
状態/泥酔
状態に泥酔が入っている。
ボトル1つで泥酔かぁ。シャナはお酒に弱いなぁ。
因みに、お酒に弱いのは家系で、酒に対する強さは龍人>灰斗>紗那である。何故か龍人だけ異常に酒に強い。謎だ。因みに、BSだにゃに出てきた龍屠は一滴も飲めない。彼の唯一の弱点かもしれない。
それはさておき、
自身のアイテム欄を確認して、酔いに効くアイテムを探す。初期の為、無いに等しいアイテムから一つだけ、酔いに効くアイテムを見つけた。
「シャナー?ごめんね!」
そのアイテム―〔革命鎚/ハリセン〕―を振り上げる。
スパーンっ!
かなり良い音が響く。シャナの頭上にHPバーが表示され、ぐんぐん減る。残り半分ほどで止まり、暫くして表示が消えた。
「助かった。ヤバいかった。超恥ずかしい。もう死にたい。HP減り過ぎ。」
シャナは一言感想をポンポンと排出しながら、頭を抱えてうなだれた。
「ドンマイ!HP回復アイテムは無いから、自然回復で頑張って!」
「はーい。後で一発殴らして。」
シャナは返事をしたがまたうなだれた。
「なぁ?今のアイテム何?ってか街でPKは出来ないんじゃなかったの?」
カイトが興味津々といった様子で尋ねてくる。このどSが。
「これはね、〔革命鎚/ハリセン〕っていうアイテムで、ダメージを受ける代わりに死亡を除く全ての状態異常を回復するんだよ。因みに、敵に使うと1ダメージしか入らないけど、あらゆる状態異常が高い確率で付与されるよ。ただデス(即死)の効果だけは確率1/500しかないけど。因みに、回復アイテムの使用はPKに入らない。HP0にならないし。」
カイトがかなり笑顔だ。それも黒い方に。
「俺も欲しい!どうやったら手に入れられる?」
やっぱり。このどSめ!
「あーはいはい。LV350のダンジョンに行きたいなら一人でどうぞ。全くダメージ入らない上に即死だけど。」
「ふむ、じゃあLV上がったら行くか。」
行くのかよ!
こんなネタ武器は数え切れないほど存在する。性能はピンキリだけど。
何となく、カイトのステータスを見る。
LV1カイネスヴェクス・アンメークリッヒカイト
エルフ(下)
HP80/80
MP110/110
筋力12
耐久8
魔力17
耐性17
俊敏15
MP高いな。
あ、シャナ復活したみたいだね。
「とりあえず、何するの?」
至極もっともな質問です。
「えっとねぇ…管理は結局人手不足で私の子供達がやるから、仕事無いんだよね。強いて言うなら、攻略法やイベント探しとかかな?あ、一つだけ仕事あった!」
二人が何?何 ?という顔で見てくる。
「魔王の選出とか製作!魔王イベントはわかる?説明されてるはずだけど?」
「「いや、わからん」」
綺麗にハモるな(笑)
「四半期の国家間領土戦争とは別に、不定期で大陸のどこかに魔王城が出現するイベントね。魔王の強さはランダム。城の規模もランダム。敵も宝箱もトラップも何もかも。そして、魔王はプレイヤーの中から選ぶか作るか。魔王プレイヤーの戦闘技術がAIにフィードバックされて、城の魔王の戦闘パターンが作られる。つまり、城の攻略に手こずると魔王はどんどん強くなる。因みに、魔王に会うまで誰が魔王か全く分からない仕様になってる。」
説明疲れた。
「ふーん。面白そうなイベントだな。」
「ところで、私の子供達って何?」
二人とも息ピッタリだね。さすがは姉妹。男の私は肩身が狭いよ。
「それはね、私が作ったAIのことだよ。我が子も同然なのですよ!」
ふーん。と二人から適当過ぎる返事が返って来るのだった。
***文字数的に一度切ります***
メールで送って改稿して貰ってるんだけど、字数的に途中で切れてしまいます。
うはぁーどうしよう(>_<)