騎士団長キースにも春が来た 〜弟みたいだと思っていた見習い騎士に求婚されました〜
※本作は完結済み本編のスピンオフです。
本作単体でもお楽しみいただけます。
無骨で不器用な騎士団長キースの、少し遅れてやってきた恋のお話です。
気に入っていただけましたら、本編もぜひご覧ください。
本編はこちら↓
『追放された第二王女、辺境王領の監査官になる
〜毒舌黒柴フェンリルと暴く王国の陰謀〜』
https://ncode.syosetu.com/n1620lv/
「アレク!」
がっちりと握手をし、拳を合わせ、ハグをして背中をバンバンと叩く。
「久しぶりだな、キース!去年の合同訓練以来だな!」
いかつい二人、騎士団長キースと隣国の騎士団長アレクの再会だった。
キースは隣国でも名を知られた騎士団長だ。
かつて王女レオノーラの護衛として国をまたぐ事件を駆け抜けたことがある。
「今日は飲みにいけるか?」
「いいな。この国のエールは最高だしな!」
と話していると、アレクの後ろに、小柄な騎士がいた。
「兄さん!紹介してください!」
プラチナの髪を後ろで一つに束ねて背伸びをした騎士が叫んでいる。
「ああ、ニコ、お前は初めて会うんだったな」
「はい!兄さん!」
「ここでは団長と呼べ!」
「はい、団長!」
「キース、こいつはニコ、騎士団の見習い騎士だ。今年入団したんだ」
「もうすぐ、騎士試験にだってすぐに受かってみせます!」
こぶしをぎゅっと握って掲げている。
くすり、と笑い、
「おう、ニコ、頑張ってるんだな。」
キースはニコの頭をよしよしと撫でた。こういう弟キャラってかわいいよな。
と心の中で思う。
ニコは、ぱぁぁぁぁっと嬉しそうな顔になり、
「伝説の騎士団長にお会いできて光栄です!」
「ん、なんだ?伝説の騎士団長?」
「はい!
我が国の陛下、当時の第二王子が暗殺者に狙われているのを
暗殺者から護衛しながら、あの魔物が出る呪いの森を通り、バッサバッサと魔獣を倒し、
我が国の騎士団長、兄さんのところまで陛下をお連れしたという、
武勇伝を我が国で知らない者はおりません!
騎士を目指す皆の憧れなのです!」
「えぇ....おい、アレク、ニコはなんか勘違いしてないか?」
「いやいや、
貴殿は英雄として我が国では崇拝されているよ。
なにせ陛下を救ったのだから」
「おいおい、俺はただレオノーラ様のご命令に従っただけだ。」
なぜか声がぽそぽそと小さくなる。
ニコが、たたっと近づいてきて、
「キース殿!稽古をつけてください!
伝説の英雄に手合わせしてもらえたら最高です!」
「お、おう、わかった。あとでな」
「やったぁ!」
そして合同訓練の時、
「ニコ、脇が甘いぞ、それならすぐにやられるぞ!」
ニコは身軽で、見た目よりも剣は重く、なかなかの強さだが、
まだ少し危なっかしい。
「はい!」
と言って食らいついてくる。なかなかの根性だ。
ガキンっと鈍い音がしてニコの剣が手から落ちた。
「っ____参りました....」
しょんぼりと座り込んだニコの腕を取り、立ち上がらせる。
ん.....?少し違和感があった。
「あ、ありがとうございました!
稽古をつけてもらったこと一生忘れません!」
「ん?一生って、来年も来るけどな!
ああ、顔に擦り傷ができている。」
頬についた土を落とそうと顔に触れたら、ニコが真っ赤になった。
「か、顔を洗ってきます!」
「お、おう、ちゃんと医務室に行けよ!」
なんだ?なんか変だな。
「おう、キース、稽古は終わったか?」
「ああ、終わったぞ」
「じゃあ、汗を流したら、エールを飲みに行こうぜ!」
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「キース、お前んとこの国、今はどうだ?」
「知っての通り、あの事件の後、女王陛下が即位して、
第二王女のレオノーラ様も婚約して____」
のところでちょっとキースに凹んだ雰囲気が。
「ああ、お前、妖精姫レオノーラ様推しだったからなぁ」
「なななななな、何を言う。」
「いいじゃないか、ファンになるのは自由だろ。
そして妖精姫の婚約が決まって凹むのだって普通さ。
さぁ、もう一杯飲むぞー!」
「俺だって、今は王妃様になっちまったけど、
同級生だった「精霊姫」マルガレーテ様に憧れてたんだよ....」
「アレク、お前もか....」
いかつい男二人が酒場でしんみりとしている姿はちょっと異様だ。
「そうだ、キース」
「ん?」
看板メニューのソーセージとじゃがいもの煮込みをもぐもぐしながら答える。
「ニコのことはどう思った?」
「あぁ、筋がいいな。華奢の割に剣は重いし、素早いのは大きな利点だ。
あとは体力をもっと鍛えたら....」
「___ニコは、お前に憧れているんだ」
「そうなのか?」
「憧れのお前に稽古をつけてもらって才能ないって言われたら、ダメだったら諦める、そう言っていたんだ」
「え?やめちまうのか?
才能あると思うけどな。俺たちの剣とは違うスタイルだが。」
「そう言ってくれるのは俺も嬉しいし、本人も嬉しいだろうが.......」
「何が問題なんだ?」
「婚約者がいい顔をしないんだよ。騎士団を辞めなければ婚約破棄だって言ってるんだ」
「なんだそれ?意味わからん。確かに危険を伴う仕事ではあるが。
ニコは相手のことが好きなのか?」
「うまくいってないんだよ。もともとニコは相手を嫌っている。
向こうから婚約を申し入れてきたんだが、相手の爵位が高くてこちらから断りにくいんだ」
「へぇ、そういうこともあるんだな。俺は貴族と言っても子爵位だからな。
そうかお前は伯爵家だったか」
「ああ、そうだ。そして相手は侯爵家なんだよ。」
「色々大変なんだな。ニコはモテるんだな」
「どうか、お前がこちらにいる間に相談に乗ってやってほしい」
「俺が?何の役にも立たないだろうに」
「いいんだ、お前に憧れて騎士団に入ったんだからお前のアドバイスは聞くだろう」
「最終日のパーティー、出るよな?」
「ああ、ああいう場は苦手だが、いたしかたない」
「相変わらずだな」
と笑い合ってエールをさらに注文し、語り合ったのだった。
□□──────────────────□□
「はぁ、こういう煌びやかな場所は苦手だ....」
人の少ない廊下でキースはため息をついた。
そうだ、ニコの相談に乗るんだった。
あいつ、腕を掴んだら妙に華奢で、声も高いし、女の子みたいだな。
顔の擦り傷を見てやったら真っ赤になって、可愛かったな。
って、おおおお俺は何を考えてるんだ。
と一人でジタバタとしていたら、すぐそばで大声が聞こえた。
「どうして俺のいうことが聞けないんだ!
だったら、婚約破棄だ。もう我慢ならない!」
おいおいこんなところで婚約破棄騒動かよ。
人気のないところとはいえ、こんな風に婚約者に向かって怒鳴り散らす男はどうなんだ。
「婚約破棄、結構ですわ。お受けします。
私は私の道を行きます。
あなたにわかってもらえなくたっていいのですから!」
「なにぃ!生意気なことを言うな!」
男が手を振り上げた。
まずい!さっと近づいて
令嬢に手をあげようとしている男の腕を後ろから咄嗟に掴んでそのまま捻り上げた。
「な、なんだ!無礼者めが。私が侯爵家のものと知ってのことか!」
「知らねえよ、そんなの。
ただ、令嬢に手をあげるっていうなら騎士として許せないからな。」
男は腕を捻りあげられたまま、動けないでいる。
ふと令嬢の方を見ると、
青い目を見開いて固まっていた。
「キース様!......」
ん?どこかで会ったことあったかな......
「ニコ!大丈夫か?」
アレクが走ってくる。
「ニコ__?ニコなのか?」
あわあわと慌てた様子で、ニコはそのまま、くるりと向きを変えて、
猛ダッシュで逃げてしまった。
「え、え、え?アレク__ニコは弟ではなく、
妹だったのか?」
「あぁ?どう見たって妹だろうが!」
「え、え、え?」
「いいから、こいつは俺に任せてニコを追いかけてやってくれ。」
□□──────────────────□□
「はぁ、はぁ。驚いたわ。まさかキース様に見つかってしまうなんて____」
王宮の庭のベンチに座り込んで息を整える。
ガサっと音がして、
「二、ニコ!大丈夫か?」
「キース様.....」
「大丈夫だったか?」
「は、はい」
「何で逃げる?お前は悪くないだろう?」
「いや、キース様を見て、かっこよくてびっくりしてしまって....気づいたら走ってました。」
「え?」
お互い顔が真っ赤だ。
「あー、あー、その、なんだ。
すまない。ニコはアレクの弟だと思っていたんだ」
「あ、あの格好で騎士見習いなら仕方ないかと....」
プラチナブロンドの髪、青い瞳、
そして繊細な刺繍の青いドレス。
そんな姿を前にすると、キースは緊張して何もいえない。
しばらくの沈黙の後、はっと気づいたように、
「こ、こんなところに二人でいては、誤解されてしまう。
さぁ、アレクもいるだろうし、ホールに戻ろう。」
「誤解されてもいいんですけど.....」と声にならない声でニコはつぶやいた。
キースに手を引かれて、ニコはパーティーの会場に戻った。
おお、ニコレッタ嬢、今日も美しい。
あれは....隣国の英雄殿ではないか?
婚約者のレオポルト様は
アレク殿がひきずっていっていたが、何かあったのか?
ざわざわと声がする。
「ニコ、注目を浴びてるが、大丈夫か?」
「大丈夫です。私と婚約者のレオポルト様の不仲はいつものことなので。
先ほど婚約破棄を受け入れましたから。兄様もまた何かあったら、
どんなことをしても破棄にしてみせる、と言ってくれてましたので。」
アレクが駆けつけてきた。
「ニコ!大丈夫だったか?」
「兄様、私は大丈夫です。そして、レオポルト様は?」
「ああ、もう侯爵様も納得してくれた。手をあげようとするなど....
お前たちの婚約の解消を認めてくださったよ。
侯爵様は息子がすまなかった、と。」
ため息をついて、安心したのか、ニコはガクリと膝から崩れ落ちそうになった。
慌ててキースがそれを支え、膝の下に手を入れ抱き上げた。
そして、アレクと一緒にニコを医務室に連れて行ったのだった。
□□──────────────────□□
そして今、絶賛帰国途中の馬車の中でのお昼ご飯タイム。
王妃マルガレーテ様おすすめのサンドイッチだ。
「キース!キースってば」
「は」
「は、じゃないわよ。
サンドイッチ片手に持ったまま、何を固まっているのよ。
朝も全然食べてなかったじゃない。」
「はぁ」
「もー、キース、どうしちゃったの?
エイミー、何か知ってる?」
「ふふふ、それは恋煩いです」
「「「「恋煩い????」」」」
キースに春が来たらしい。
この滞在の間に騎士団長アレクの妹君、ニコレッタ嬢に恋に落ちたと・・・
□□──────────────────□□
「はぁ、何だって言うんだ。俺はどうしてしまったんだ」
と呟きながら、帰国後数日が経った。しっかりせねば。
バシッと自分の頬を叩き気合いを入れる。
昨日新しい騎士が研修にくると言っていた。隣国からしばらく預かるのだそうだ。
レオノーラ様の護衛として育てたいとのことだった。
いや、オレがいままで護衛だったよな。オレもとうとうお役御免なのか?
すでに応接室にはレオノーラ様と護衛候補が来ているらしい。
気が重かったが、着替えてから応接に向かう。
「キースです。ただいま参りました」
「入ってちょうだい」
レオノーラの声がしたので、ドアを開けた。
すると
「キース様!」
といって飛びついてきた見覚えのある姿。
「ニコ!いや、ニコレッタ嬢!なぜここに!」
「ふふふ、驚いた?キース」
ニコレッタが抱きついた状態のまま、フリーズしているキース。
「私が侍女兼護衛でスカウトしてきちゃったわ!
いけなかった?」
「キース様!私を弟子にしてください!」
「ニコレッタ、違うでしょう?」
「は、はい!そうだった___
キース様、私をお嫁にもらってください!」
目を丸くしてさらにフリーズしているキース。
「……それは、断る理由がないな」
そして、
「本当に俺でいいのか?ニコ。」
「はい!!!!」
「じゃあ決まりね!」
「「「「「今日はお祝いだー!」」」」」
とドアから仲間たちが
ドヤドヤと入ってくる。
そこからガタイのいい男が一人。
「あ、アレク、お前もか?」
「ああ?妹の婚約の手続きに来た親族になんという言い草。
だったら二人の婚約を認めなくたっていいんだからな!」
「いやいや、義兄上!」
「「ってなんか変な感じだな!」」
バシバシと肩を叩き合って、アハハと笑い合う。
こうして騎士団長キースにも春がやってきたのでした。
〜Fin〜
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
無骨で不器用な騎士団長キースにも、ようやく春が訪れました。
もし少しでも「いいな」と思っていただけましたら、
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また、本編ではキースのまた違った一面や、
レオノーラたちとの旅の物語も描かれています。
よろしければ、ぜひこちらもご覧ください。
『追放された第二王女、辺境王領の監査官になる
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