修了式
訓練所での日程が全て修了してから、残りは修了式だけになった。
訓練所での修了式は訓練兵の家族を集めて、その前で行うとのことだった。
それで俺たちは前日に式場である講堂に集まって、修了式のリハーサルを延々とさせられた。
外部の人にちゃんと訓練された兵士の姿を見せたいとのこと。
軍という組織はこういう見えっ張りなところがある。
何より形式を重んじているところがある。
それでリハーサルをしたのだが、何とそれだけで1日を丸ごと費やした。
最終日は訓練の日程がなかったのだけど、それはこれのためだった。
確かにこういう式典にリハーサルが必要であることは俺も理解している。
でも、まるごと1日は酷すぎないかと思った。
それに少し失敗するだけでも、腕立て伏せやジャンピングジャックをさせられたのだ。
それも最後の号令なしで。
結果的に修了式のリハーサルが他の通常の訓練よりも厳しかったと思う
そして、修了式の当日は本当に何事もなかった。
順調に式は進んでいった。
何で前日にそんなに苦労をさせられたのかと思えるくらいには順調だった。
そもそも、そこまで難しい手順はなかったから、当たり前なのかもしれない。
式が終わってからは、訓練兵に自由時間が与えられた。
何も訓練所の外へ行くことも可能らしい。
それも家族が来たときの話だったけど...
「ということは俺は出ていけないか...」
たしか昨日母親に電話した時はスキー場だったから、来れない可能性もあるよね。
それに俺からも両親には別に修了式に来る必要はないとも言っておいていた。
だって、この次の日に俺は家に帰ることが確定していたからである。
それでも、流石に心細さは隠せなくて、俺は意味もなく回りをチラチラと見渡した。
「あら、どうしたの?そんなにキョロキョロして。」
「お母さん?」
俺はその声に驚いて後ろを振り返った。
そこには母親がいたのである。
「そうよ。ほら、着いてきて。お父さん今車のところにいるから。」
そういって母親は俺の手を引っ張って駐車場へと向かった。
「昨日スキー場って言ったから来ないのかと思ってた。」
「そんな訳がないでしょう?」
母は俺を見てそう言ってきた。
まあ、母の性格的に昨日のことがイレギュラーではあったけど。
今回こそは来ないのかと思っていたからな。
俺から来ないでと何回も言っていたから...
駐車場についてから、俺は父とも再開を果たした。
「お疲れ様。」
父はそういって俺を迎えてくれた。
俺はその姿を見てやっと訓練が終わったことを実感した。
それからは家に一旦帰った。
幸いにも訓練所と家は物凄く近かったのでそれでも問題はなかった。
俺は久しぶりのシャバの空気と母の手料理を堪能した。
1ヶ月ぶりに食べる母の手料理は本当に最高だった。




