実射
前の人の見学が終わってから、やっと俺の番が回ってきた。
俺は弾薬分配所で弾丸を受け取って、教官に指示された通りの位置についた。
銃を撃つと言う行為自体に物凄いストレスを感じてはいたけど。
だが、一方では確かに高揚感も存在していた。
俺もゲーム好きな男として、銃を撃つと言う行為についてはある程度の興味はあったのだ。
それに銃器が禁止された社会でのみ生活してきた、する予定の俺としてはこんな機会は二度と無いだろう。
だから、少し楽しみになってきたのである。
俺が位置に着くと助教は俺の銃を鎖で固定した。
そして、前以外には銃を向けられないようにしてから、助教は俺の銃に網状の袋を取り付けた。
これで薬莢の紛失を防止しているみたいだ。
余談だけど、韓国軍では何故かこの薬莢に執着して、紛失したら部隊全体を動員してでも探している。
「よし、伏せろ!」
教官の指示が降りて、俺はその位置から前伏せになった。
俺の隣の助教はそのまま俺に手順を説明してくれた。
前には人形の標的がいるけど、上がって来た標的を撃てば良いらしい。
俺は助教の言葉を頭に刻み込んで、標的が上がってくることを待った。
次の瞬間、標的が上がってきた。
確かにこれは先ほどした訓練の点くらいの大きさだ。
俺は練習した通り照準具を銃口の上の突起物に並ぶようにした。
そして、息を我慢して引き金を引いた。
バーンと大きな音が響いた。
耳栓をしているのに、銃声が大きいゲーム程度の音が聞こえた。
耳栓なしだったら本当に危なかったなと思った。
俺は標的を確認した。
しかし、標的には何の変化もなかった。
当たっていたら、標的は倒れっていたはず。
ということは弾丸が外れたみたいだ。
「外したな。次はもっとこうしてみろ。」
助教はそう言って俺の姿勢を矯正して来た。
二発目、またしも、轟音が響き渡った。
「くっ」
また、外した。
「もっと、ゆっくりでもいい。ちゃんと狙え。」
何時もよりずっと優しい声で助教は俺を激励して来た。
俺はその言葉にしたがって今度はゆっくりと狙いを定めた。
三発目、今度はバンという音とは別に金属と金属がぶつかる音がした。
それと共に標的が倒れる。
「でかした!」
どうやら、当たったみたいだ。
助教も嬉しそうな声を出してくれている。
そして、次は200メートルの標的が上がって来た。
俺は先ほどと同じように狙いを定める。
四発目、銃声の後に軽快な金属音が聞こえた。
「よし!」
これなら射的で賞点を取れるかも知れない。
十発の内、八発で取れるとのことだった。
俺は己を鼓舞させた。
このまま、残りは全部当てるぞ!
次は250メートルの標的が上がって来た。
先ほどと同じように集中力を高める。
この時だけは寒いとは思わなかった。
俺は意欲に満ちて引き金をひく指に力を入れた。
ドダダダダダという音が響いて、銃身が上へと持ち上がった。
「「!?」」
俺は余りの出来事に驚くしかなかった。
急に銃が連発になったのである。
確かにセイフティ装置を単発にしているから、連発で出るはずはない。
なのに、目の前の出来事は?
俺は慌てて、セイフティ装置を確認した。
連発ではない、単発だった。
「お前!!!!」
そこで急に教官の怒鳴り声が聞こえてきた。
ああ、これはこっ酷く怒られるかもな…
と、思ったけど、特に何もなかった。
そのまま退場させられただけで、懲罰とかもなし。
どうやら、俺の責任ではなく、銃の不具合ということにされたらしい。
俺は何とかことなきを得た。
因みに、やり直しはないらしく、俺は賞点を得る機会を逃した。
訓練中の銃器事故その1。
何故か連発になった銃器でした。




