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シェア傘ラプソディ♪  作者: 宮本葵
6月1週目「取り替えの始まり」
4/26

6月4日「似合ってるよ、濡れネズミくん。」

放課後の昇降口へと今日も向かう。

傘立ての前で、俺は思わず立ち止まった。


――今日も俺の傘は、ない。

いや、正確には「ある」はずなんだ。

けれどそこに立てかけられていたのは、やっぱり見覚えのある“黒色の傘”。俺の傘と似ていて、毎回のように入れ替わってしまうやつ。


「……またかよ」


ため息をついた瞬間、背後から元気すぎるあいつの声が響く。


「ごめーん! やっぱり今日も間違えちゃった!」


ぱたぱたと駆け寄ってくる雨音がいる。

結んだ髪の毛の先に、小さな雨粒が光っているのが見えた。


「傘に名前くらい書いとけよ……」


「えー、似てるんだから仕方ないじゃん。それよりも、今日もまた一緒になったし、傘に一緒に入ろ!」


有無を言わせぬ調子で俺の腕を軽く引っ張る。

結局、今日も相合傘だ。しかもなぜか「別々に差すと話しにくいから」なんて理由で、一本の傘に無理やり二人で収まることになった。なんで本当に俺と相合傘したがるんだろ?


狭い歩道を並んで歩けば、当然、肩が触れる。

そのたびに妙に意識してしまう俺と、俺とは違いまったく気にする様子のない雨音。


「ちょっと、もうちょい内側入れよな。俺、濡れるから」


「私、入ってるつもりなんだけどなぁ……」


やっとのことで、狭い歩道を抜け出したと思ったら、半分以上俺が外にいたことにようやくきづいた。どうやら雨音のほうに傘を傾けすぎたらしい。

強まっていく雨脚に合わせるように、左半分の制服はじわじわと水を吸い込んでいた。


「え!ちょ、ちょっと待て! 俺だけめっちゃ濡れてるんだけど!」


「えっ、ほんと? あはは、ごめんごめん!」


雨音はお腹を抱えて笑い出す。悪びれた気配なんて一切ない。

だけど、ポケットから小さなハンカチを取り出し、俺の肩にぺたりと当ててきた。


「ほら、これ使って。私のせいだから」


「……いや、タオルっていうか、もう体の半分びしょ濡れなんだけど」


「いいじゃん。似合ってるよ、濡れネズミくん。」


にやにやと笑う顔。

俺はむっとしてみせながらも、なぜか本気で怒れなかった。


――その笑顔が、ずるい。


雨音は前を向きながら、楽しそうに話し続ける。今日の授業のこと、友達との会話、好きなアイスの味。

くだらないのに、不思議と心地よい。俺は雨音の言う「濡れネズミ」のまま、黙って彼女の声を聞いていた。


雨の音にまぎれて、自分の鼓動が速くなっているのがわかる。

――梅雨なんてやっぱり嫌いだ。


でも、今日みたいに、こいつと帰る梅雨は悪くないのかもな。

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-著者 宮本葵-
茨城県南部出身。中学2年生。最近、何かと運が悪い。やばいと思い、神社へ駆け込み、お祈りをしていたら、たまたま知り合いと会った。小説を書いていて、まあまあ見られていることを話すと、絶対嘘だろと馬鹿にされたので、あとで、スタ連をしておいた。また、どうも最近は小説を書けない。書けなさすぎて、頭が痛くなって、毎日投稿ストップしてました。すみません。

宮本葵の他作品
誰も信用できなくなった俺の前に、明日から転校してくる美少女が現れた。
僕の中学校生活がループしているので抜け出したいと思います。
Silens&Silentia シレンス・シレンティア
最後の7日間 〜吹奏楽コンクール県大会まで〜
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