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シェア傘ラプソディ♪  作者: 宮本葵
6月3週目「生徒会役員選挙」
19/26

6月19日「一ノ瀬湊を、生徒会役員……いや、生徒会長に!」

やっと追いついた。明日分まで書き溜めてるから、ぼちぼちまた毎日投稿を続けていきます。

これからも応援よろしく!

最終の全体演説の日。


演説が控えているからか、午前中の授業はほとんど頭に入らなかった。

気づけば昼休み。教室のざわめきの中、奈々子が手を振ってきた。


「湊ー!今日こそ一緒に食べよ!」


その後ろから俊介と雨音もついてくる。

まさかの四人セットで、教室の隅の机をくっつけて弁当を広げることになった。


「今日の体育館、お前、絶対緊張するよなー」


俊介が口火を切る。


「……しないわけないだろ」


俺は即答した。


奈々子が唐揚げをつつきながら、にやりと笑う。


「でも、湊って本番に強いタイプっぽいじゃん。いつも冷静だし」


「いやいや、顔見ればわかるだろ。こいつ緊張しすぎて死にそうなんだよ」


俊介が俺の肩を小突く。


「……でも、大丈夫だよ」


雨音がぽつりと呟いた。


一瞬、場が静かになった。

雨音は照れくさそうに笑いながら続ける。


「だって、私が推薦人でしょ?湊が考えたこと、ちゃんと伝えればきっと伝わるよ」


その言葉に、胃の奥の重たさが少し軽くなる気がした。


「……ああ、そうだな」


「おっ、フラグ立ったな?」


俊介が茶化す。

そして、奈々子がすかさず「黙れ俊介!」と突っ込む。

笑い声が広がり、少しだけ心が落ち着いた。


~~~~~~~~~~~~


全校生徒が体育館に集められた。

晴れてはいるが、梅雨の湿気と、人の熱気で空気が重たい。


俺は体育館の隅、控え席に座りながら心臓を押さえていた。


(やべぇ……足が勝手に震えてる)


雨音も少し緊張しているのか、あまり元気がなさそうに見える。


ステージ上では、立候補者たちが次々に演説している。

マイクに声を響かせるたび、体育館の壁に反射して、やけに大きく聞こえる。

あそこに立つのかと思うと、胃が締めつけられるようだった。


「次は、一ノ瀬湊くんです」


司会の声に促され、俺の名が呼ばれる。

全校生徒の視線が一斉にこちらに突き刺さる。

足が地面にくっついて動かない感覚。


その瞬間、背中を軽く叩かれた。


「がんばって」


雨音の小さな声。


振り返らなくてもわかる。

あの笑顔を思い出して、ようやく足が前に進んだ。


ステージの上、照明が熱い。

視界いっぱいに広がる生徒たちの顔。

俺は一度深呼吸して、マイクを握った。


「……えっと。一ノ瀬湊です。正直、俺はこういう場は得意じゃありません。でも、推薦されたこともあり、誰かがやらなきゃならないことってあると思うんです。」


言葉が、自然と口から出ていた。


「派手なことはできないけど、当たり前を守る。忘れ物があったら拾うとか、困ってるやつがいたら声をかけるとか。そういう小さいことをちゃんとやる人が、生徒会にいてもいいんじゃないかと思いました。」


俺の声が、体育館に響く。

誰も笑わない。むしろ静まり返っている。

その沈黙が逆に力をくれるようだった。


「俺は、みんなも知っている通り、ほんの少しの期間、いじめられてました。変な集団に変なことをされて。正直怖かったです。だからこそ、自分の学校生活を安定させたいためにも、生徒会に入りたい。学校生活をより良いものにするために頑張りたいと思います。」


拍手が起こる。さっき演説をしていた人とは段違いの大きさの拍手だ。

よかった、あとは雨音に任せよう。


「最後に、推薦人から一言もらいます」


マイクが隣に移される。

雨音が一歩前に出て、堂々と立った。


「飯塚雨音です。湊くんは、見た目は地味かもしれない。目立たないかもしれない。でも、誰かが困っている時に、一番に動いてくれる人です。」


ざわ、と体育館が揺れる。

推薦人がこんなにストレートに言うのは珍しいのだろう。


「私も、彼に何度も助けられました。彼自身いじめられながらも、私を守ろうと努力した。そういう彼だからこそ、胸を張って推薦します。一ノ瀬湊を、生徒会役員……いや、生徒会長に!」


一瞬の沈黙の後、体育館に拍手が広がっていく。


俺は立ち尽くしながら、雨音の横顔を見ていた。


(……反則だろ、そんなこと言われたら)


顔の熱が、雨の湿気とは違う理由で上がっていくのを感じながら、深々と頭を下げた。


~~~~~~~~~~~~


放課後、演説を終えてすっかり体力を削られた俺は、荷物をまとめて昇降口へ向かった。

すると、雨音がもう靴を履き替えて待っていた。


「おつかれ、湊」


「……ああ」


二人並んで校門を出る。夕焼けが校舎を赤く染めていた。


「今日の演説、よかったよ。湊らしいなって思った」


「ほんとかよ。声震えてただろ」


「それでも、伝わった。私にはね」


雨音が笑う。

その笑顔に、不意に胸が熱くなる。


「……ありがとな。推薦人、引き受けてくれて」


「引き受けたというか、湊がやるって決めなかったら私もやってなかったからね。」


しばらく沈黙が続く。蝉の声が遠くで響く。

やがて駅前の分かれ道に差しかかり、雨音が手を振った。


「明日、投票だね。……また一緒に頑張ろ」


「おう」


彼女の背中を見送りながら、俺は深呼吸した。

明日は、逃げられない日だ。

最近長めの文章になってきた。

短編じゃなくて長編になってきちゃったわ。

まあいいか。

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-著者 宮本葵-
茨城県南部出身。中学2年生。最近、何かと運が悪い。やばいと思い、神社へ駆け込み、お祈りをしていたら、たまたま知り合いと会った。小説を書いていて、まあまあ見られていることを話すと、絶対嘘だろと馬鹿にされたので、あとで、スタ連をしておいた。また、どうも最近は小説を書けない。書けなさすぎて、頭が痛くなって、毎日投稿ストップしてました。すみません。

宮本葵の他作品
誰も信用できなくなった俺の前に、明日から転校してくる美少女が現れた。
僕の中学校生活がループしているので抜け出したいと思います。
Silens&Silentia シレンス・シレンティア
最後の7日間 〜吹奏楽コンクール県大会まで〜
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